軽度肥満を伴う2型糖尿病患者を対象とした外科的治療と薬物治療の効果に関する比較研究を国内で初めて報告

血糖改善効果/医療経済面における外科的治療の有用性を示唆 Journal of Diabetes Investigationに発表/掲載

2021年10月19日

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社

メディカル カンパニー

 

                                        

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー エチコン事業部 軽度肥満を伴う2型糖尿病患者を対象とした 外科的治療と薬物治療の効果に関する比較研究を国内で初めて報告 血糖改善効果・医療経済面における外科的治療の有用性を示唆 Journal of Diabetes Investigationに発表・掲載

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー(本社所在地:東京都千代田区、代表取締役プレジデント:玉井 孝直)のエチコン事業部は、日本の軽度肥満を伴う2型糖尿病患者を対象に、外科的治療(以下手術)と薬物療法を中心とする内科的治療(以下薬物治療)の効果を比較検討する研究を実施し、国内で初めて発表しました。本研究では、治療後1年目の糖尿病寛解(糖尿病治療薬を使用せずにHbA1c<6.5%となった状態)率が、手術群59%に対し、薬物治療群で0.4%、また治療前と治療後1年目における月間薬剤費(中央値)の変化については、手術群では12,650円から0円に減少したのに対し、薬物治療群では5,240円から5,830円に増加となり、血糖改善効果および医療経済面において外科的治療の有用性が示唆されました。2021年7月15日、本研究内容が「Journal of Diabetes Investigation」(アジア糖尿病学会の機関誌、John Wiley&Sons発行)に論文掲載されましたので、併せてお知らせいたします。

なお本研究は、当社から医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブ(所在地:東京都千代田区、理事長:安田 聖栄、院長:黒川 良望)への研究業務委託を通じて行いました。

本研究発表の概要は以下の通りです。

 

対象

軽度肥満(BMI 27.5~34.9kg/㎡)を伴う2型糖尿病患者

方法

(詳細は後述)

医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブの患者データから手術群を、株式会社JMDCの日本の保険者データベースから薬物治療群を抽出し、傾向スコアマッチングを用いてレトロスペクティブに治療効果(治療後1年目)を比較

結果

●治療後1年目の糖尿病寛解(糖尿病治療薬を使用せずにHbA1c<6.5%となった状態)率は、手術群で59%、薬物治療群で0.4%(p<0.0001)でした。

●治療後1年目に至適血糖コントロール(HbA1c<7.0%)が達成されたのは、手術群で75.6%、薬物治療群で29.0%(P<0.0001)でした。

●治療前と治療後1年目の2型糖尿病治療薬、降圧剤、脂質異常治療薬の月間薬剤費(中央値)の変化を見ると、手術群は\12,650から\0に減少し、薬物治療群では\5,240から\5,830に増加しました。

結論

日本において、軽度肥満を伴う2型糖尿病患者に対する外科的治療(減量・代謝改善手術)は、薬物治療と比べて血糖改善効果と医療経済効果の両面で優れていることが示唆されます。

※本研究における外科的治療・薬物治療の定義はそれぞれ、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術もしくは腹腔鏡下スリーブバイパス術、2型糖尿病治療薬の処方です。

 

【日本における糖尿病患者増の現状と課題】

糖尿病患者数は、生活習慣と社会環境の変化に伴い、近年急速に増加しています。厚生労働省のデータによると、2017年時点の日本の糖尿病患者数は約329万人であり、2014年の約317万人から大きく増加しています1)

また、糖尿病患者数の増加に伴い、関連する医療費も増大しています。日本の2018年の国民医療費を見ると、年間総医療費(約43兆4000億円)のうち糖尿病にかかる医療費は年間1兆2000億円2)で約3%を占めており、社会に対し医療経済の面で大きな負担を強いているといえます。

現在、2型糖尿病治療では、生活習慣の改善に加え薬物治療が広く行われています。これら内科的アプローチは有効な治療法ですが、患者によっては生活習慣改善や薬物療法の順守が困難なケースがあること、薬の副作用や薬剤費が長期にわたってかかることなどにより、治療目標の達成が困難な場合も見られます。一方、肥満を伴う2型糖尿病に対する効果的な治療法として、外科治療(腹腔鏡下減量・代謝改善手術)が欧米を中心に広く行われています。国内でも年間800例3)程度行われていますが、現状では保険診療の適応基準が制限されていることもあり、外科治療を受けられる肥満2型糖尿病患者はいまだ限定的です。

 

【肥満症に対する減量・代謝改善手術について】

胃の容量を小さくしたり、小腸の一部に物が通らないようにする(バイパス)ことで、食事摂取量や消化吸収を減らし体重減少を得ようとする外科的治療です。日本では2014年にBMI35以上の高度肥満症患者で保険適用となり、2020年にBMI32.5以上で血糖コントロール不良の糖尿病患者までに保険適用の対象が拡大されています。

 

本研究の研究責任者 医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブ 関洋介先生のコメント

軽度肥満(BMI 27.5~34.9kg/㎡)の2型糖尿病患者を対象とした本研究で、薬物治療と比較して、外科的治療の有用性が、血糖改善効果のみならず医療経済面においても優れていることが示唆されました。近年、腹腔鏡下減量・代謝改善手術は2型糖尿病治療を主目的とする効果的な治療法(メタボリックサージェリー)として注目されていますが、保険上の手術適応要件は未だ厳しく、外科治療の恩恵にあずかれない患者さんが多くいらっしゃいます。今後のさらなる保険適用拡大が期待されます。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー エチコン事業部 

事業部長 クリストファー・リーガー コメント

糖尿病患者は驚くべき速さで増加し続けています。国際糖尿病連合(IDF)の推計によると、2019年の世界の糖尿病患者数(20~79歳)は4億6,300万人で、2030年までに5億7,800万人まで増加するといわれています4)。ジョンソン・エンド・ジョンソンはこれまでも、肥満・糖尿病の分野で研究をサポートしており、2017年11月には、2型糖尿病患者に対する外科的治療の有用性を示した結果を発表しています5)。また、2021年7月には、肥満・糖尿外科手術の増加が新型コロナウイルス感染による死亡や入院を減少させる可能性が示唆され、最終的に肥満の臨床的および経済的負担を減少させることが期待される、と結論づけるイギリスでの研究結果を発表しました6)

 

超高齢化が進む日本では、今後、糖尿病患者数も医療費もさらに増え続けることが予想されます。このような状況下において、このたびの研究は、軽度肥満の2型糖尿病患者に対する外科的治療の有効性を示しただけでなく、薬剤の使用量を減少させることで医療費増加の問題の解決に貢献するという、一つの方向性を提示できたと考えています。

本研究におきましては、協働した医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブの先生方をはじめ、サポートいただいた皆様に多大なる感謝を申し上げます。私たちはこれからも、外科手術製品やソリューションの提供のみならず、さまざまな研究を通じて、治療の発展と社会問題解決に貢献してまいります。

 

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、今後も引き続き、医療従事者に信頼されるパートナーとして、超高齢社会における医療ニーズに対応する革新的な製品・ソリューションの提供を通じ、日本の医療の未来を形作り、質の向上を目指してまいります。

 

【本研究における当社の関わり】

本研究は、当社と四谷メディカルキューブの研究業務委託契約に基づき、以下の役割を実施いたしました。

・四谷メディカルキューブ:

 プロトコルレビュー、プロトコル審査(倫理審査委員会)、手術患者データの提供、

 論文原稿作成とレビュー、論文投稿

・当社:

 プロトコル原案作成、プロトコル審査、薬物治療群のデータ提供(株式会社JMDC協力)、

 手術患者データと薬物治療患者データの統計解析、論文原稿作成とレビュー

 

<参考資料>

1) 厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」 p.32

  https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/kanja.pdf

2) 厚生労働省「平成30年度 国民医療費の概況」 p.12, 19

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/18/dl/toukei.pdf

3) 日本肥満症治療学会「保険委員会 緊急アンケート調査 2021」2021年1月18日

    http://plaza.umin.ne.jp/~jsto/about/pdf/questionnairesurvey2021.pdf

4) 国際糖尿病連合「IDF DIABETES ATLAS 9th edition 2019」 p.2

    https://diabetesatlas.org/en/

5) STAMPEDE, a study that confirms that metabolic surgery provides long-term control of T2 Diabetes 

    in patients with a Body Mass Index of 27-43 kg/㎡ 

    https://www.jnjmedicaldevices.com/en-MX/news-events/stampede-study-confirms-metabolic-surgery-provides-long-term-control-t2-diabetes

6) Cost-effectiveness of bariatric and metabolic surgery, and implications of COVID-19 in the United

    Kingdom

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34452846/

 

【研究詳細】

●Index date

 ▶手術群:腹腔鏡下スリーブ状胃切除術もしくは腹腔鏡下スリーブバイパス術が行われた日

 ▶薬物治療群:2型糖尿病治療薬の初回投与後HbA1c ≧6.5%の状態にあった6カ月以内の日

  (2008年1月~2019年6月)

●対象者の適格基準

 ▶HbA1c≧6.5%(index dateまたはそれ以前)

 ▶27.5kg/㎡≦BMI<35kg/㎡(index dateに最も近い日)

 ▶年齢が18~65歳(index date)

 ▶index date 前6カ月以内、あるいは36カ月以内に所定の疾患イベントなどがある者は除外された

  (詳細は原著参照)

●対象者

 ▶手術群:四谷メディカルキューブの電子カルテから、2008年1月から2019年6月までに腹腔鏡下スリー 

  ブ胃切除術もしくは腹腔鏡下スリーブバイパス術を受け、2型糖尿病治療のために医師の治療を6カ月

  以上受けた119人

 ▶薬物治療群:株式会社JMDCの日本の保険者データベース*から、2008年1月から2019年6月までの年次

  健康診断において、直近の2型糖尿病診断から6カ月以上、2型糖尿病治療薬の処方を受けた10,117人

  *日本の複数の健康保険組合のレセプト(入院、外来、調剤)と検診データを蓄積した疫学的なレセプトデータベース。

   2019年9月時点で約740万人の被験者が含まれており、健康保険組合の人口の約25%をカバー。

●統計解析

 ▶傾向スコアマッチングを用いて、年齢、性別、BMI、HbA1c、2型糖尿病罹患期間、index年で手術群:

  薬物治療群を最近傍法にて1:4でマッチング

 ▶ロジスティック回帰を用いて、年齢、BMI、index dateのHbA1c、2型糖尿病罹患期間、index dateの

  インスリン使用量を調整した上で、治療後1年目における糖尿病寛解率を手術群と薬物治療群で比較

 ▶メタボリックシンドローム(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症)の治療に要した薬剤費は、同じ共変量

  を調整しながら、一般化線形モデルでモデル化

 

【各群の特性】

●手術群、薬物治療群ともに、性別のバランスはよく、平均年齢にも大きな差はなかった。

 ▶手術群:患者数78人、平均年齢47.9±9.6歳。術前の平均BMIは32.1±1.8kg/㎡、HbA1cは

  7.9±1.1%。診断からの2型糖尿病の平均罹患期間は、46人(59.0%)が8年未満、32人(41.0%)

  が8年以上。

 ▶薬物治療群:患者数238人、平均年齢47.8±7.7歳。Index dateの平均BMIは32.0±2.0kg/㎡、HbA1c

  は7.9±1.4%。2型糖尿病の診断からの平均罹患期間は、176人(74.0%)が8年未満、62人(26.0%)

  が8年以上。

 

<本研究の論文詳細>

雑誌名:Journal of Diabetes Investigation

論文タイトル:Bariatric surgery versus medical treatment in mildly obese patients with type 2 diabetes mellitus in Japan: Propensity score-matched analysis on real-world data

著者:Yosuke Seki, Kazunori Kasama, Renzo Yokoyama, Akihiro Maki, Hideharu Shimizu, Hyejin Park, Yoshimochi Kurokawa

DOI番号:10.1111/jdi.13631

論文URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.13631(オープンアクセス)

 

<医療法人社団あんしん会 四谷メディカルキューブ について>

東京都千代田区にある医療機関。一般外来の他、女性専用外来、PET/CTを備えた人間ドック、検査機器も充実させ、内視鏡手術に特化した手術等の医療を提供している。安心で快適な入院生活を過ごしていただけるよう、すべての病室を個室としている。減量手術分野においては、日本の減量手術を牽引する専門チームとして、臨床研究の成果や技術を広く普及している。

https://www.mcube.jp/

 

<株式会社JMDCについて>

東京都港区にある医療統計データサービスを行う企業。事業を通じて医療分野の社会課題に取り組み、医療ビッグデータの活用やサービス開発を行っている。

https://www.jmdc.co.jp/

 

【ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーについて】

ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器部門であるメディカル カンパニーは、人々が健康で幸せな人生を送れるよう支援しています。 1世紀を超えて培ってきた専門知識に基づき喫緊の医療課題解決に取り組みつつ、人々の医療体験をより良いものにするため、またより新しい治療水準の確立につながるよう、革新的な取り組みを行っています。外科、整形外科、および循環器科などにおいて、いのちを救い、世界中の誰に対しても、より健康な未来への道が開かれるよう手助けすることを使命としています。

 

<ジョンソン・エンド・ジョンソンについて>

私たちジョンソン・エンド・ジョンソンは、健康こそが豊かな人生の基盤であり、地域社会の繁栄と、発展を促す原動力であると考えています。 この信念に基づき、130年を超える長きにわたり、私たちはすべての世代の、人生のあらゆる段階の人々の健康を支えてきました。今日、世界最大級で広範な拠点を有するヘルスケア企業としての強みを最大限に活かし、世界中の誰もが、どこにいても、心身の健康と健全な環境を享受することができるよう、私たちは適正な価格でヘルスケアにアクセスできる、より健全な社会の実現に向けて努力しています。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、私たちのこころと科学の力、画期的な発想力を融合させ、ヘルスケアを飛躍的に進化させるべく取り組んでいます。

 

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