日本盲導犬協会創立55周年  目の見えない、見えにくい人を誰一人取り残さない社会を目指します

日本盲導犬協会

2022年8月10日

公益財団法人 日本盲導犬協会

 

公益財団法人 日本盲導犬協会(井上幸彦理事長)は、2022年8月10日に創立55周年を迎えました。

「目の見えない人、見えにくい人が、行きたい時に、行きたい場所へ行くことができるように、私たちは、安全で快適な盲導犬との歩行を提供します」その使命に沿って半世紀以上にわたり、盲導犬育成事業を通じた視覚障害者の自立支援に貢献してきました。

 

このたび盲導犬や協会の歴史を振り返るとともに、今後の活動方針や「盲導犬の未来」についてまとめたリリースを配信いたします。盲導犬や協会に興味があって歴史や事業詳細を知りたいという方はもちろん、初めてという方にも楽しんでいただけるよう写真や動画を交え紹介しています。

 

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日本盲導犬協会創立55周年
目の見えない、見えにくい人を誰一人取り残さない社会を目指します

 

1967年8月10日、盲導犬育成団体としては日本で初めて厚生省(当時)より正式許可を受け、財団法人日本盲導犬協会が設立しました。2010年には公益財団法人となり今年で55周年を迎えました。

横浜市、仙台市、静岡県富士宮市、島根県浜田市の4つの訓練センターと広島市にサテライトを構え、国内最大の盲導犬育成団体です。2022年度末の国内実働数848頭のうち242頭(29%)が日本盲導犬協会育成の盲導犬で、実働数、年間育成頭数共に国内最多です。協会は、2021年新たに打ち出した中長期計画に沿って、盲導犬育成事業促進と視覚障害者が暮らしやすい社会環境の整備をさらに進めていきます。

 

 

年間育成頭数8頭からのスタート

設立の翌年1968年3月には、訓練を終えて8人の盲導犬ユーザーが誕生しました。盲導犬と共に渋谷駅付近で記念の街頭パレードを行う様子がメディアで大きく報道されました。当時はまだ盲導犬が珍しく、一緒に交通機関を利用することも許されませんでした。ユーザーらが署名活動をして、電車やタクシーの利用を訴える、そんな時代でした。

盲導犬普及のプラカードを掲げ渋谷の街を颯爽と歩くユーザー。

当時はシェパードが主流でした

 

1997年協会は横浜市に近代的な施設を構え、安定的な盲導犬育成へと漕ぎだしました。

▶国内盲導犬実働頭数(2021年度)は【こちら

 

 

「日本初」の挑戦を歴史に刻んで

 

盲導犬訓練士を育てる日本初の学校開設

協会が真っ先に取り組んだのは、訓練士の育成です。それまでは、訓練士になるために見習いとして働きながら時間をかけて技術を習得していました。良質な盲導犬の育成には、安定的な訓練士の育成が欠かせないと、2004年4月神奈川訓練センター内に盲導犬訓練士学校を開設します。集中的に学び、訓練技術だけでなく広く知識や教養を身につけるため、3年間のカリキュラムが実施されました。応募倍率20倍の狭き門を突破し入学した第1期生は、その後協会職員となり、現在訓練育成現場をけん引するまでに成長しています。

 盲導犬訓練士学校第1期生入学式の様子。

希望を胸に真新しいハーネスを受け取りました

 

一時学生募集を休止していましたが今年4月、訓練士学校は新たな制度で再スタートを切りました。実践現場でより多様な経験を積めるよう、訓練士候補生は職員という立場で学びながら視覚障害福祉のプロフェッショナルを目指します。現在、訓練士学校在籍は4人、その成長が期待されます。

▶盲導犬訓練士学校の詳しい情報は【こちら

 盲導犬の基本的な仕事は、道路上の角・段差・障害物を教えること。

犬が楽しんで作業できるように「できたら褒める」を繰り返します

 

 

犬が人とのコミュニケーションを楽しめるように、遊びも交えながら教えていきます

 

 

「盲導犬」のことを、もっと知ってもらいたい
日本初 常時見学可能な訓練センター「富士ハーネス」から情報発信強化

良質な盲導犬の誕生には、繁殖犬の確保や繁殖技術の向上が求められます。犬の誕生から引退後のケア、看取りまで、盲導犬の一生をトータルケアできる施設として、2006年10月静岡県富士宮市に日本盲導犬総合センター「盲導犬の里・富士ハーネス」が誕生しました。

 雄大な富士山のふもとに位置する「富士ハーネス」。

自然豊かな環境で、生れたばかりの子犬や出産を控えた母犬、引退犬など様々な犬がのんびりと過ごしています

 

 富士ハーネスでは年間100頭近いパピーが誕生します。

その 一頭一頭が幸せであるよう、最善を尽くし育成にあたっています

 

盲導犬を通じて目の見えない、見えにくい人への理解を深めてもらいたいと、一般の方が自由に見学できる設備も整えました。盲導犬の仕事を紹介するデモンストレーション他様々な展示を通じて盲導犬や視覚障害について学ぶことができるとあって、夏休みやゴールデンウィークには大勢の子供たちで賑わいます。時期によっては子犬たちが元気に遊ぶ姿も見られます。

絶好のロケーションを生かして、【協会公式YouTubeチャンネル】用の動画撮影やイベントの生配信も実施。より多くの方に情報を届けられるよう、SNSも活用して情報発信を活発に行っています。

▶富士ハーネスから発信しているYouTube動画は 【こちら

 

 

刑務所で盲導犬候補の子犬を育成する日本初の試み

2009年4月法務省に協力して、受刑者が盲導犬候補のパピーを育成するという日本初の試み「島根あさひ盲導犬パピープロジェクト」がスタートしました。運用準備へむけ前年の2008年10月には島根あさひ訓練センターが開設。育成施設がなかった中国四国地域で盲導犬の育成、視覚障害リハビリテーションの拠点として期待が集まりました。ご支援に支えられている協会にとって、このプロジェクトは恩返しとして社会貢献の可能性を広げられます。プロジェクトでは、これまでに70頭のパピーを育成し、15頭の盲導犬が誕生しています。

▶「島根あさひ盲導犬パピープロジェクト」 の詳しい情報は【こちら

 島根あさひ社会復帰促進センターにて盲導犬候補のパピーを手渡された訓練生(受刑者)たち。

週末には一般家庭のボランティアがパピーを預かり、1歳になるまで共に育てます

 

 

国際盲導犬連盟セミナーを日本初開催

世界的にみると、近代盲導犬の歴史はドイツが発祥とされています。戦争で失明した兵士たちのために、軍用犬を訓練して提供したのがはじめと言われています。日本へ最初に盲導犬がやってきたのも、1939年ドイツからでした。

▶世界の盲導犬育成における詳しい歴史情報は 【こちら

 

その後イギリス、アメリカ等で訓練技術が確立され、国際盲導犬連盟(IGDF)が誕生します。1998年国際的な育成基準を満たしているとして、協会はIGDF加盟を許可されます。2014年IGDF第13回セミナーが日本で開催されることとなり、協会はホスト団体として世界23か国68の育成団体から訓練士や関係者を迎え、交流や研究発表大会の運営を行いました。アニマルウェルフェアに配慮した盲導犬育成の徹底など、協会は世界基準に沿って事業を進めています。

2021年開催の東京パラリンピックでは、海外から盲導犬連れで来日するパラアスリート4人に対して、日本国内でも盲導犬と活動ができるよう証明書を発行しサポートもしました。協会では、今年新たに国際部を立ち上げ、海外関係団体との連携を強化していきます。

▶協会ホームページ 英語版は 【こちら】 

2022年7月には英国盲導犬協会のスタッフが来日。

日本で訓練された犬と歩いてみて、違いを確認しました。

パピーのやりとり他今後の連携協会が期待されます

 

 

2017年創立50周年で盲導犬180頭が一堂に集う

2017年10月6日、協会創立50周年記念式典が京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催されました。全国から盲導犬ユーザーも参加して、180頭の盲導犬が結集しました。これだけ多くの盲導犬が一堂に会した前例はなく、ホテルでは、犬の排泄場所の設置や案内など、万全の準備がされました。式典の間、盲導犬たちはパートナーの足元でいつもどおりリラックス。ホテルのスタッフが「おとなしく静かで、犬の存在を忘れる」と驚くほどでした。

ホテルでの盲導犬受け入れに、何の問題もないことが証明されることとなりました。

 50周年記念式典会場の様子。

ユーザーも盲導犬も正装姿で勢ぞろいしました

 

 

コロナ禍を乗り越え、目の見えない、見えにくい人を
「誰も取り残さない」ために ~新たな中長期計画始動

2020年は新型コロナウイルスが猛威をふるい、協会事業も少ながらず影響を受けることとなりました。その中でも様々な工夫をしながら、歩みを止めず事業を続けてきました。

2021年世界的にも対応が求められるSDGsの目標達成へ向け、協会でもその目的に沿った中長期計画を打ち出しました。目の見えない、見えにくい方々へ盲導犬を安定的に提供し、盲導犬と活動しやすい社会環境を整えるなど、2023年までに達成すべきゴールへ向け新たなスタートを切りました。

▶中長期計画の詳しい情報は 【こちら】 

 盲導犬と一緒にどこへでも。

その歩みを止めないよう社会の理解を広げていきます

 

この計画では、待機期間をつくることなく盲導犬を貸与できる持続可能な体制づくりと同時に、視覚障害者、盲導犬ユーザーが過ごしやすい社会環境をめざします。

そのためには、盲導犬訓練の充実の他に、目の見えない、見えにくい人に必要な情報とリハビリテーションを届けることも重要です。見えにくくなった人の相談に応じたり、白杖歩行や在宅でのパソコン・スマートフォン利用訓練など、生活する上での新たな技術を身につけるサポートを積極的に行っています。

▶視覚障害リハビリテーション事業の概要情報は 【こちら】 

仙台訓練センターで2004年から続く視覚障害児向けプログラム「ワン!ぱくっ子サマースクール」で野菜の収穫に挑戦する子供たち

 

また、盲導犬や視覚障害に対する社会の理解も欠かせません。協会では、コロナ禍でも視覚障害者を取り残さないよう、市民のみなさんへ声かけのサポートを呼びかたり、事業者向けには、盲導犬の受け入れセミナーを多数実施。さらには未来をつくる子供たちへむけた講演を積極的に行っています。

▶イベント・セミナーの情報は 【こちら】 

 

 

盲導犬の未来って?

昨今テクノロジーの発展はめざましく、視覚障害者のサポート機器も開発が進みます。スマートフォンアプリと連動した点字ブロック、スマート電子白杖など、テクノロジーによって、誰も取り残さない社会が促進されることは喜ばしいことです。

協会では、日本科学未来館館長であり工学博士の浅川智恵子氏が手掛ける視覚障害者向け誘導ロボット「AIスーツケース」の開発に協力しています。実証実験にアドバイザーとして参加したり、研究者が盲導犬の動きを観察するために訓練現場を訪れるなど、AIスーツケースの開発に盲導犬育成の技術や知見が活かされています。実用化されれば、目の見えない、見えにくい方の歩行の選択肢が広がることが期待されます。

 

それでは「盲導犬は必要なくなるのか?」そんな声も聞こえてきます。

AIスーツケースのテスト歩行やアドバイスをした協会理事でもある多和田悟訓練士と浅川氏との対談の中で、このテーマが語られています。「盲導犬とAIスーツケース、それぞれにバリューがある」として、必要とする人がどちらも自由に選択できる未来像を描いています。

 

盲導犬は、その働きに注目が集まりますが、それだけではありません。共に生きるパートナーとして、心から「ありがとう」と伝えられること、存在そのものがバリューであるとも言えます。生き物であるからこそ、手を伸ばせばいつもそばにいて「ありがとう」と言える。そんな幸せがあります。

50年前もそして50年後も変わらず、人と盲導犬は、テクノロジーでは実現できない唯一無二の関係性で結ばれています。

 

 

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

盲導犬

盲導犬普及のプラカードを掲げて歩くユーザー

訓練風景2

富士ハーネス

親子

島根あさひ盲導犬パピープロジェクト

盲導犬ユーザー1

50周年記念式典会場の様子

ワン!ぱくっ子の様子

盲導犬ユーザー2

訓練風景1

盲導犬訓練士学校 第一期生入学式の風景

英国盲導犬協会のスタッフ来日

プレスリリース添付動画

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