「除雪機の死亡事故」7割が誤使用・不注意
“安全機能ONとエンジンOFF”が生死の分かれ目
2022/12/22
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE(ナイト))は、降雪量がピークとなる1月を前に「除雪機の事故」を防ぐための注意喚起を行います。
誤った使用で除雪機の下敷きになった事故(人形を用いた再現実験)
除雪機の事故は毎年発生しており、2012年度から2021年度(※1)の10年間にNITEに通知された製品事故情報(※2)では、除雪機によりけがを負った事故は36件あり、死亡事故は25件(大人が使用し、こどもが巻き込まれた事故を含む)でした。また、死亡事故のうち18件(約7割)で、安全機能を無効化する誤った使用方法や、足を滑らせて転倒するなど、使用者による誤使用や不注意による事故が発生しています。今年の冬は日本海側を中心に降雪量が平均並みか多いと予想されており、除雪機を使用する機会が増えるため、より一層の注意が必要です。
除雪機は、安全機能を無効化しない、状況に応じてエンジンを切るといった、取扱上の注意を守って使用しましょう。
(※1)2012年4月1日~2022年3月31日の事故を対象とします。
(※2)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
>>NITE 公式YouTube せいあんちゃんねる「除雪機でそれ絶対ダメ!!」
除雪機の下敷きになったり、巻き込まれたりする事故が発生しています。
事故を防ぐポイントをまとめてご紹介します。
>>今回のプレスリリースはこちら
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs221222.html
除雪機の構造と各部名称
デッドマンクラッチ機構(安全機能)
デッドマンクラッチ: 使用者が操作ハンドル(クラッチレバー)から手を離すと、自動的に回転部及び走行が停止する安全機能。使用者の手を離れて作動することを防ぐもの。
※除雪機安全協議会では、2004 年4月から協議会加盟メーカーの除雪機(歩行型)においてデッドマンクラッチ機構を標準装備としています。
さらに、車両重量350kg以上の歩行型ロータリ除雪機において、デッドマンクラッチ機構以外の安全装置の多角化のため、①挟圧防止(「挟まれ」対策)、②後進時非常停止(「ひかれ」対策)、③後進時急発進防止(「ひかれ」及び「挟まれ」対策)、④後進速度制限(「ひかれ」及び「挟まれ」対策)に関する装置を備えることを要件化したSSS規格を2021年6月に改定しました。2023年度生産分から適用されます。
その他安全機能(製品によっては以下のような安全機能が備わっています)
・緊急停止クリップ
使用者が装着しておくことで、使用者の体が除雪機から離れるとコードが除雪機から外れてエンジンが停止し、回転部及び走行が停止する安全機能。使用者が転倒した際や除雪機から離れた状態で作動することを防ぐもの。
・緊急停止バー
壁等で人が挟まれそうになった際にバーが押されるとクラッチが切れ、機械が停止する安全機能。ハンドル付近に設置される上部緊急停止バーと、足下付近に設置される下部緊急停止バーがある。
・ 緊急停止ボタン
ボタンを押すと機械が停止する安全機能。
※イラストは、除雪機安全協議会のチラシから引用。
http://www.jfmma.or.jp/data/jyoankyo-leaflet-2022.pdf
1. 事故発生状況
NITEに通知された製品事故情報のうち、2012年度から2021年度に発生した、除雪機によりけがを負った事故36件について、発生状況を示します。
1-1. 年度ごとの事故発生件数
図1:年度ごとの事故発生件数
1-2. 事故事象別の事故発生件数
表1にけがを負った事故36件について、「事故事象別の事故発生件数」を示します。
死亡 | 重傷 | 軽傷 | 総計 | |
除雪機の下敷きになった事故 |
16 | 16 | ||
オーガに巻き込まれた事故 |
6 | 1 | 7 | |
後ろの壁と除雪機の間に挟まれた事故 |
3 | 1 | 4 | |
詰まった雪を取り除こうとした際の事故 | 8 | 8 | ||
整備時に回転部で手を挟み込んだ事故 | 1 | 1 | ||
総計 | 25 | 10 | 1 | 36 |
1-3. 安全機能の使用状況
けがを負った事故36件のうち、安全機能を無効化したり、使用していなかったりした事故は15件ありました。
1-4. 原因区分別の事故発生件数
けがを負った事故36件の原因区分別の事故発生件数を示します。調査中を除くと、約9割が使用者の誤使用や不注意による事故となっています。
表2: 原因区分別の事故発生件数(()内はうち死亡事故件数)
原因区分 | 事故発生件数 |
誤使用や不注意による事故 | 29(18) |
原因が特定できない事故 | 3(3) |
調査中 | 4(4) |
総計 | 36(25) |
2.事故事例
除雪機の下敷きになった事故
事故発生年月 2021年1月(広島県、80歳代・男性、死亡)
【事故の内容】
使用中の除雪機の下敷きになり、病院に搬送後、死亡が確認された。
【事故の原因】
使用者がデッドマンクラッチ機構を無効化しており、その状態で除雪機を後進中に転倒したため、除雪機が使用者に乗り上げて下敷きとなったものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
除雪機、下敷き、デッドマンクラッチ
エンジンを掛けたまま置かれていた除雪機に巻き込まれた事故
事故発生年月 2021年1月(新潟県、9歳・男児、死亡)
【事故の内容】
除雪機を使用中、こどもが回転部(オーガ)に巻き込まれ、病院に搬送後、死亡が確認された。
【事故の原因】
除雪作業の途中、使用者が除雪機のエンジンを切らずにオーガが回転したままその場を離れたため、周囲で遊んでいたこどもがオーガに接触したものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
除雪機、エンジン、オーガ
オーガに巻き込まれた事故
事故発生年月 2021年2月(山形県、70歳代・男性、死亡)
【事故の内容】
除雪機のオーガに巻き込まれた状態で発見され、病院に搬送後、死亡した。
【事故の原因】
使用者が緊急停止クリップを装着しない状態で、除雪機のエンジンを掛けたまま回転しているオーガに近づいたため、誤ってオーガに下半身を巻き込まれたものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
除雪機、オーガ、非常停止
オーガに巻き込まれた事故(再現実験)
詰まった雪を取り除こうとしてけがを負った事故
事故発生年月 2021年1月(北海道、20歳代・男性、重傷)
【事故の内容】
除雪機の排雪口(ブロワ)に詰まった雪を取り除こうとしたところ、右手指を負傷した。
【事故の原因】
使用者が除雪機のブロワに詰まった雪をブロワ内部の回転部が停止しないうちに、付属の雪かき棒を使用せずに直接手で除去したため、回転部に触れ、事故に至ったものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
除雪機、雪かき棒
除雪機の気を付けるポイント
○デッドマンクラッチ機構などの安全機能を無効化しない。
安全機能を無効化することで、使用者が転倒などした際に除雪機が停止せず、除雪機にひかれたり、巻き込まれたりするおそれがあります。デッドマンクラッチ機構のクラッチレバーを固定して無効化したり、緊急停止クリップを装着しない状態で使用したりすることは非常に危険なため、絶対にしないでください。
また、2004年4月以前に発売された古い除雪機には、デッドマンクラッチ機構などの安全機能が装備されていない機種があります。これらの機種についてはより一層の注意を払って使用する必要があります。緊急停止バー、緊急停止ボタンなどの安全機能がついているものを使用するとより安全です。
○後進する際には、転倒したり、挟まれたりしないよう、周囲の状況に十分注意する。
雪上での作業は、足元が非常に滑りやすいため、より一層の注意が必要です。転倒しないように十分に注意してください。特に、後方へ移動する際は障害物がないかどうか確認してください。障害物があると、転倒して除雪機にひかれたり、障害物に挟まれたりするおそれがあります。
○周囲に人がいない状況で作業する。
除雪作業をする場所の安全を確保し、周囲に人がいないことを確認してください。特にこどもを近づけないよう、気を付けてください。雪を飛ばす先にも人がいないことを必ず確認してください。
○その場を離れるときは、エンジンを切る。
除雪機のエンジンを掛けたままその場を離れると、こどものいたずらなど、思わぬ事故につながるおそれがあります。一時的にその場を離れるときでも、必ずエンジンを切ってください。
○雪詰まりを取り除く際は、エンジン及び回転部の停止を確認し、雪かき棒を使用する。
エンジンを掛けたまま、シュータ部やオーガに手を近づけないようにしましょう。エンジンを掛けたまま雪を取り除く作業を行うと、手を負傷するおそれがあります。雪が詰まった場合は、直接手で行わず、必ず備え付けの雪かき棒を使用して取り除いてください。
■事故品・事例を確認
【一般消費者用検索ツール「SAFE-Lite」のご紹介】
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っております。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
■独立行政法人 製品評価技術基盤機構 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。
製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。
本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。
プレスリリース添付動画
このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 独立行政法人製品評価技術基盤機構
- 所在地 東京都
- 業種 政府・官公庁
- URL https://www.nite.go.jp/
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