障害を理由とする差別は解消されているのか? 盲導犬ユーザー受け入れ拒否の実態報告

~社会参加を阻む「障壁」が明らかに

日本盲導犬協会

2023年3月22日

公益財団法人 日本盲導犬協会

大型ショッピングモールで買い物を楽しむ盲導犬ユーザー(2021年7月宮城県仙台市)

 

障害者差別解消法施行から7年、身体障害者補助犬法施行からは20年以上が経過していますが、法律に対する社会の理解は進んでいるのか? その実態を把握するために、公益財団法人日本盲導犬協会(井上幸彦理事長)は、盲導犬同伴での受け入れ拒否について使用者(以降ユーザー)に聞き取り調査を実施し、毎年集計、公開をしています。2022年の集計では、1年間で「受け入れ拒否にあった」と回答したユーザーが100人いて全体の45に上りました。更に「障害を理由とする差別があった」と回答した人が71(32%いて、盲導犬同伴での受け入れ拒否の他にも、社会参加を阻む障壁が多数あることが明らかになりました。

こうした実態を多くの方へ伝えることにより、誰もが暮らしやすい社会へ向け、盲導犬や視覚障害に対するより一層の理解と法の周知を訴えたいと考えます。

 

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盲導犬同伴での受け入れ拒否が無くならない実態について、日本盲導犬協会が盲導犬ユーザーを対象に行った聞き取り調査の結果を、以下の通りまとめました。

 

【調査概要】(2016年から毎年集計、7回目)

調査対象:日本盲導犬協会所属のユーザー(盲導犬使用者)

対象者:221人 ※回答数:218人

調査対象期間:2022年1月1日~12月31日

調査方法:職員による電話とメールを使った聞き取り

質問内容:Q、盲導犬の受け入れ拒否に何回あいましたか

     Q、盲導犬受け入れ拒否を含む障害を理由とする差別にあいましたか

     Q、障害に対する人々の理解に変化があったと思いますか

     Q、あなたにとって、社会参加の障壁だと感じることは何ですか(複数回答可)

【結果】

受け入れ拒否は増加

盲導犬同伴を理由にした「受け入れ拒否」については、100人(45%)が「ある」と回答。コロナ禍になって前々回41%→前回35%と減少傾向にあった数値が、今回45%と3年ぶりに増加しています。(グラフ1、2参照)

「ある」と答えた人の中には、10回以上受け入れ拒否にあった人がいる一方で、「ない」という人からは、「コロナ禍で外出を控えている」「受け入れてもらえる店にしか行かない」など外出を制限している様子が伺えました。

 

【グラフ1】受け入れ拒否にあったか      

   

 

【グラフ2】受け入れ拒否にあった割合の推移 

 

 

「ある」と答えた人へ拒否の回数を尋ねたところ、延べ196件発生していることが分かりました。前々回234件→前回184件から今回196件と増加しています。

 

 

②拒否の多かった業種は飲食店が最多

昨年発生した196件の受け入れ拒否が起こった場所を見てみると、飲食店が92件(47%)で最多、宿泊施設が25件(13%)、交通機関の24件(12%)が続き、飲食店が最多となりました。コロナ禍が落ち着いたことで社会活動が再開し、飲食店へ行く機会が多くなったと推測されます。(グラフ3参照)

 

【グラフ3】拒否のあった場所の内訳

 

 

経年の推移を見るために、ユーザーから要請があり、問題解決に向け協会が対応した「相談案件」の内訳で比較してみます。今回の調査で受け入れ拒否が起きた場所の割合で1位は飲食店で15件(29%)、コロナ禍の影響で割合は減少しているものの、昨年を除き常に最多で推移しています。2位は医療機関で、12件24%)の相談が寄せられ年々増加傾向にあります。3位は交通機関の5件(10%)と続きます。(グラフ4、5参照)

受け入れ拒否をした事業者に拒否の理由を尋ねると、「受け入れの義務を知らなかった」「受け入れの義務が従業員へ周知されていない」「受け入れ方を誤解していた」など例年と変わらない回答があり、障害者差別解消法や身体障害者補助犬法の周知が進んでいないことが分かりました。

 

【グラフ4】拒否のあった場所の内訳(相談案件)

  

 

【グラフ5】拒否のあった場所の推移(相談案件)

 

<受け入れ拒否対応の事例>

盲導犬同伴で受け入れ拒否にあい、ユーザー自身の説明では理解が得られなかった場合、ユーザーの要請に応じて協会が問題解決へ向けて対応する「アドボカシー活動」を2005年2月から展開しています。医療機関・飲食店・宿泊施設での事例を挙げます。

 

事例1:「盲導犬は入れないので他の病院へ行ってほしい」と言われた(埼玉県内)

インフルエンザワクチンを接種しようと内科クリニックを訪問。受付で「待合室の端で待って」と言われ待機していたところ、医師がやってきて「盲導犬は入れないので他の病院へ行ってほしい」と言われた。幸い別の医療機関でワクチンの接種はできたが、今後は当該クリニックを利用したいとユーザーから協会へ相談があった。地域の行政職員からクリニックに指導をしてもらえるよう、ユーザー自身が行政窓口へ連絡を入れる。行政からの指導の後、協会からも連絡を入れたところ、「今後受け入れ拒否をしないように気を付ける」「同伴可ステッカーも貼る」との回答が得られた。

 

事例2:店舗責任者に確認するも「犬はダメ」と言われた(広島県内)

ユーザーが駅ビル内の飲食店へ家族と訪問したところ「犬はダメです」と店員に断られた。

盲導犬である旨を伝えたところ、店長へ確認を取ったが、同じく「犬はダメ」と断られたため店を後にした。後日、協会から連絡を入れ確認したところ、当日は店長が不在で、スタッフが、「駅ビル全体が盲導犬同伴不可」と誤解し拒否をしてしまった、とのことであった。謝罪と共に今後の受け入れを約束した。

駅ビルの管理会社にも確認したところ、受け入れについては各店舗の判断に委ねている状況であった。今後は全店舗で受け入れが徹底されるよう、理解促進に努めたいと回答を得た。

 

事例3:電話予約で「衛生上入ることはできない」と告げられる(山形県内)

家族旅行のため、旅館に予約の電話を入れると「衛生上入ることはできない」との回答。盲導犬の役割、衛生管理について説明したが理解を得られなかった。協会が断った理由を聞くと「今まで受け入れたことが無い」「アレルギーのお客様がいるかもしれない」「他の利用者のことも考えてほしい」との回答で、受け入れの義務や盲導犬の衛生管理についての説明にも聞く耳をもたなかったため、行政窓口へ協力を仰いだ。後日行政職員が旅館を訪問し受け入れへの理解を促したところ、「今後は受け入れに協力する」との回答であった。

 

 今年2月、盲導犬ユーザーのスムーズな受け入れとサービス向上を目的に、株式会社マルエツで実施された視覚障害者への接客体験イベントの様子(マルエツ板橋南町店にて)

 

 

障害を理由とする差別は30%台で推移

ここ1年間で「障害を理由とする差別があった」と回答したのは71人(32%で、調査開始時から36%(2016年)→33%(2017年)→36%(2018年)と横ばいで推移しています。(グラフ6参照)

「あった」と答えた人からは「見えないなら行き先を説明できないだろうと、タクシーで乗車拒否された」「総合病院で事前に院内の案内を依頼したが断られた」など、心無い言葉や態度に苦悩する様子が浮かび上がってきます。

 

【グラフ6】障害を理由とする差別があったか

 

 

障害に対する人々の理解は進んでいない

ここ1年間の「障害に対する人々の理解や考え方の変化」を尋ねたところ、79(36)が「良い変化があったと感じる」と回答しました。推移をみると、26%(2016年)→49%(2017年)→44%(2018年)→36%(今回)と減少傾向にあり、理解が進んでいない現状が見えます。(グラフ7参照)

「変化した」と答えた人からは、「適度な距離感で声を掛けてもらうことが増えた」「盲導犬には触らないなどの理解が高まった」「助けを頼まなくても手を貸してくれる」などがありました。

一方「変化はなかった」と答えた131人(59%)からは、「法律や正しい知識が周知されていないことに変わりはない」「外出を控えているため変化は感じない」などの意見がありました。

 

【グラフ7】障害に対する人々の理解に変化があったか

 

あらゆる場面で「社会の障壁」を感じている

具体的に「社会参加の障壁だと感じること」を尋ねたところ、様々な意見があがり、社会のあらゆる場面で壁が存在していることが分かりました。

 

「狭い道に路上駐車されていると通りづらい。迷っていたら邪魔だと言われた」

「盲導犬同伴の受け入れ拒否が多い」

「常に盲導犬同伴を断られた時のことを想定して行動しなければならず時々辛くなる」

「契約書を目で見て読めないことを理由に、契約を拒否された」

「飲食店の注文、レジ会計、病院での受付、家電などタッチパネルの物が増え、困ることが多い」

「音声でのスマートフォン操作には時間がかかり、決済画面などでタイムアウトしてしまう」

「音声読み上げ機能での操作に対応していないwebページが多い」

「ロービジョン(見えづらい視覚の状態)が理解されず、物をじっと見ていると不審者扱いされた」

「本人ではなくヘルパーなどの同行者に話しかけられる」

「目が見えなくてかわいそうと言われる」

こうしたコメントから、ICT技術の進化でタッチパネルが増え、視覚障害者への配慮が追い付いていないといった情報・文化的障壁が新たに生まれていることが分かってきました。契約書を読めないなどの制度的障壁、路上駐車があって歩きにくいなど物理的障壁他、見えなくて「かわいそう」と言われたり、自分ではなく同行者に話かけられる、といった心理的障壁も含まれていました。こうした障壁の多くは、社会の一人ひとりの気づきによって解消されると考えられます。

 

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【社会理解へ向けた活動】

日本盲導犬協会は、誰もが自由に社会参加できる共生社会の実現には、事業者への法律の周知が急務であると考えています。そのため各種セミナーを実施する他、法律の解説や盲導犬ユーザーが施設を利用する際の接客ポイントを紹介する動画をYouTube上で公開しています。この調査結果を受けて、こうした情報発信をさらに強化していきます。

 

<日本盲導犬協会公式YouTubeチャンネル>

動画『【入門】盲導犬ユーザーが施設に来たらどうする?~セミナー事前学習動画~』を公開

盲導犬や視覚障害の基礎知識、法律や障害のとらえ方、サポート方法などをわかりやすくまとめてあります。店舗など事業者向けに作成した動画ですが、一般の方にもおすすめです。ぜひご覧ください。

 

※日本盲導犬協会ホームページでも「盲導犬受け入れ拒否対応事例集」を公開しています。https://www.moudouken.net/special/case-study/

 

 

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

【グラフ1】受け入れ拒否にあったか

【グラフ2】受け入れ拒否にあった割合の推移

【グラフ3】拒否のあった場所の内訳

【グラフ4】拒否のあった場所の内訳(相談案件)

【グラフ5】拒否のあった場所の推移(相談案件)

【グラフ6】障害を理由とする差別があったか

【グラフ7】障害に対する人々の理解に変化があったか

盲導犬ユーザー②

盲導犬ユーザー①

盲導犬

プレスリリース添付動画

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