屈折率1.8超、分解可能な透明プラスチックを開発
硫黄と水素結合を組み合わせ、発光デバイスの効率向上につながる新材料を実現
2024年4月22日
早稲田大学
発表のポイント
「分極性水素結合」という新たな構造に着目し、1.8以上の超高屈折率と可視光透明性を同時に満たすプラスチックを開発した。
今回開発したプラスチックは、優れた光学特性と柔軟性、リサイクル性を併せ持ち、従来よりも低負荷で発光電気化学セル (LEC) を作動させることにも成功した。
有機ELディスプレイの輝度や光学素子の画素向上が期待できるほか、光学プラスチックに環境適合性を付与する第1歩に繋がる。
図:本研究の概要。「分極性」を有する水素結合に由来して、光学デバイスの発光効率向上、超高屈折率、分解性などの機能を付与できることを見出した (”Ar” はaromatic ring (芳香環) を示す略称)。
早稲田大学 理工学術院の小柳津研一(おやいづけんいち)教授、および渡辺清瑚(わたなべせいご)次席研究員、ミュンヘン工科大学 StraubingキャンパスのRubén D. Costa 教授、およびLuca M. Cavinato 博士課程学生らの研究グループは、硫黄を含む水素結合を組み込んだ独自の高分子を設計し、従来達成が難しいとされていた1.8以上の超高屈折率と透明性を両立し、使用後には分解できる新しいプラスチックを開発しました。
従来の超高屈折率高分子は多くが着色を呈するため、有機発光ダイオード (OLED) などの可視光用途への応用が難しい課題がありました。今回開発した材料はポリマー鎖同士が「分極性水素結合」により密に絡み合うことで、着色なく屈折率を向上できるほか、柔軟性と分解性も併せ持つため、従来よりも低負荷で作動する、リサイクル可能な発光素子の実現に繋がります。本研究の概念は、有機ELディスプレイの輝度向上や、より高画素なマイクロレンズを実現できる透明材料の開発に繋がるほか、環境適合性の高い光学プラスチックの設計指針を提示する重要な知見を与えるものと考えられます。
本研究成果は、2024年4月12日 (金曜日) 8時(現地時間)にWiley-VCH刊行の『Advanced Functional Materials』誌にオンライン掲載されました(論文名:Polarizable H-bond Concept in Aromatic Poly(thiourea)s: Unprecedented High Refractive Index, Transmittance and Degradability at Force to Enhance Lighting Efficiency)。
雑誌名:Advanced Functional Materials
執筆者名(所属機関名):Seigo Watanabe, Luca M. Cavinato, Vladimir Calvi, Richard van Rijn, Rubén D. Costa, Kenichi Oyaizu
掲載日時(現地時間):2024年4月12日(金)8時
掲載日時(日本時間):2024年4月12日(金)15時
掲載URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202404433
【キーワード】
透明プラスチック、発光デバイス、屈折率、硫黄、水素結合、分解性
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