日常的なカマンベールチーズの摂取習慣が認知機能の高さと関連することを疫学研究により確認

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日常的なカマンベールチーズの摂取習慣が認知機能の高さと関連することを

地域在住高齢女性を対象とした疫学研究により確認

~8月22日 国際科学雑誌Nutrientsに論文掲載~

 

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)、桜美林大学(学長:畑山 浩昭)および地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(理事長:鳥羽 研二)などの研究機関からなる共同研究グループは、地域に在住する日本の高齢女性※1を対象とした疫学研究により、チーズ、とりわけカマンベールチーズの摂取習慣が認知機能の高さと関連することを明らかにしました。本研究成果は、2024年8月22日に、栄養学分野で評価の高い国際学術誌Nutrientsに掲載されました。(Suzuki et al. Nutrients, 2024, 16(16), 2800; https://doi.org/10.3390/nu16162800

 

※1高齢者施設等ではなく、自宅で生活を送っている65歳以上の日本の高齢女性

 

研究成果

①地域に在住する日本の高齢女性において、チーズの中でもカマンベールチーズを日常的に摂取することが認知機能の高さと関連性があることがわかりました。

 

②年齢が若いこと、通常歩行速度が速いこと、嚥下機能が維持できていることも認知機能の高さと関連する重要な因子であることが再確認されました。研究成果の活用

超高齢社会として先進国である日本において、カマンベールチーズ摂取による認知機能の維持の可能性を研究することで、健康寿命の延伸に寄与していきたいと考えています。

 

研究の目的

 乳製品と認知機能の関連性を示す論文は国内外で数多く報告されていますが、その対象者、地域、測定方法には違いがあり一貫した結果は得られていませんでした。本研究では地域に在住する日本の高齢女性を対象に調査を行うことで、チーズの摂取や摂取するチーズの種類と認知機能の関わりを明らかにすることを目的としました。

 

研究概要

 東京都板橋区在住の65歳以上の高齢女性1,035名を対象に、対面でのアンケートや機能的能力測定を行い、食品摂取や日頃の生活習慣、身体状態と認知機能の関係を評価する横断研究を実施しました。

 

論文内容

 

タイトル

日本の地域在住高齢女性におけるチーズの摂取/種類と認知機能の関連性:横断研究(Association between the intake/type of cheese and cognitive function in community-dwelling older women in Japan: A cross-sectional cohort study.)

 

方法

①東京都板橋区在住の65歳以上の高齢女性1,035名を対象に、対面でのアンケートや機能的能力測定を通じて食品摂取や日頃の生活習慣、身体状態と認知機能の関係を評価する横断研究を実施しました。

 

②調査の結果、週に1回以上チーズを摂取する参加者を「チーズ摂取者」、それ以外を「チーズ非摂取者」に分類しました。また、チーズ摂取者をさらに、カマンベールチーズを摂取する「カマンベールチーズ摂取者」と「他のチーズ摂取者」に分類しました。これらの分類を元に、その特徴を分析しました。

 

③チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得でき、かつMMSE(Mini-Mental State Examination)※2スコアが20点以上だった1,017名のうち、MMSEスコアが20点以上26点以下の方を軽度認知機能低下(Mild Cognitive Decline: MCD)として分類しました。この時、MMSEスコアが20点未満の方は除外して解析を進めました。

 

④チーズ全般やカマンベールチーズの摂取と認知機能が関連するかを調べるため、ロジスティック回帰分析※3の手法を用いて、MCDと関連する因子を分析しました。分析にあたり、カマンベールチーズの摂取状況・チーズ全般の摂取状況との検証とともに、年齢、身体機能、体格、既往歴、血液変数、嚥下機能、尿失禁の頻度、うつ症状、牛乳の摂取頻度の影響を統計的に調整しました。

 

結果

①チーズを習慣的に摂取すると回答された方は本試験参加者全体(1,035名)の85.3%(883名)を占めました。そのうち、カマンベールチーズを習慣的に摂取すると回答した方は119名を占めました(複数回答可、全回答のうち12.2%)。チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得でき、かつMMSEスコアが20点以上であった1,017名のうち、MCDに該当する方は調査対象者全体の14.8%(151名)を占めました。

 

②先行研究と同様に、チーズ摂取者はチーズ非摂取者より牛乳を摂取している人の割合が高く、認知機能を評価する指標であるMMSEのスコアが高い値を示しました。さらにカマンベールチーズ摂取者は他のチーズの摂取者よりもMMSEのスコアが高い値を示しました(カマンベールチーズ摂取者:28.7±1.4;他のチーズの摂取者:28.3±2.0、p=0.006)。そのほか、チーズ非摂取者と比較して、ふくらはぎの周囲径が大きく、握力が強く、通常歩行速度が速く、食品摂取多様性スコアが高く、GDS(Geriatric Depression Scale)※4のスコアが低いことが示されました。

 

③MCDに該当する集団はMMSEスコアが26点よりも高い高齢者の集団と比較して年齢が高く、ふくらはぎの周囲径が小さく、握力が弱く、通常歩行速度が遅く、嚥下機能が低く、血中アルブミン濃度が低く、GDSスコアが高いことがわかりました。④ロジスティック回帰分析の結果、MCDと関連する因子として、年齢、通常歩行速度、嚥下機能に加えて、カマンベールチーズの摂取状況が重要であることが示されました(図)。本研究の結果から、地域在住の日本の高齢女性において、チーズの摂取の中でも特にカマンベールチーズの摂取は認知機能の高さと関連性があることが明らかになりました。

 

※2 認知機能障害を簡易にスクリーニングするための検査。国際的に最も使用頻度が高く、MMSEスコアの低下の度合いにより認知機能低下または認知症が疑われる。

※3 いくつかの要因をもとに、ある事象が起こる確率を説明・予測する解析。また、ある事象に対する要因の影響度を測定することもできる。本研究の場合、一例としてはカマンベールチーズを摂取しているか否かが認知機能の高さにどう影響するかを解析している。

※4 老年期うつ病評価尺度。高齢者のうつ症状の有無や重症度を15の質問により評価する尺度で、5点以上では、うつ状態が疑われ、11点以上では重度なうつ状態と判断される。

 

図.認知機能低下と各種因子が示す関連性(当該論文に記載の表より作成)

カマンベールチーズの摂取状況・チーズ全般の摂取状況との検証とともに、年齢、身体機能、体格要因、既往歴、血液変数、嚥下機能、尿失禁の頻度、うつ様症状、牛乳の摂取頻度の影響を分析に含めた。

 


※5 統計学では、ある事象が起こる確率と起こらない確率の比をオッズと呼ぶ。オッズ比は、ある事象の起こりやすさを比較して示す際に用いられる。オッズ比が1より大きい場合は、その事象が起こりやすいことを示す。

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