2025年版世界35カ国における中堅企業のサステナビリティ経営に関する意識調査
サステナビリティ経営の拡大:中堅企業が描く持続的成長への道
報道関係者各位
プレスリリース
2025年11月5日
太陽グラントソントン
2025年版世界35カ国における中堅企業のサステナビリティ経営に関する意識調査
(サステナビリティ経営の拡大:中堅企業が描く持続的成長への道)
・中堅企業の約9割(86.0%)が本年、サステナビリティへの投資を「維持または拡大」へ
・投資の主要な動機は、昨年に引き続き、「市場競争力」と「ブランドレピュテーション」
・規制対応よりも「商業的なメリット」が意思決定を大きく後押し
太陽グラントソントンは、グラントソントン加盟国において同時に実施した世界調査の一環として、世界35カ国の中堅企業の経営者に対してサステナビリティ経営に関して尋ねる意識調査を実施し、その結果を公表した。調査の概要は、以下の通り。
サステナビリティ投資は「継続・拡大」が多数派
2025年初頭は、地政学的緊張、厳しい金融環境、エネルギーの不安定化などを背景に、自国優先の経済政策の広がりや化石燃料の優遇、環境政策・規制の後退に対する懸念が高まった。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の進捗でも、順調と評価された目標は、わずか17%にとどまっている。1しかしながら、グラントソントンの調査によれば、中堅企業の86.0%が今年、サステナビリティへの投資を「維持」または「拡大」すると回答している。
図1:ESG/サステナビリティ施策への投資計画の方向性
サステナビリティ投資は「成長の源泉」
多くの中堅企業は、サステナビリティへの取り組みが業務効率の改善、顧客獲得、長期的な収益性の向上に結び付くと捉えている。投資の主な動機として、「市場競争力」と「ブランドレピュテーション」が回答の上位を占め、2025年はさらにその比率が上昇した(市場競争力については、2024年の31.3%から2025年には41.6%へ、ブランドレピュテーションについては、2024年の31.9%から2025年には38.0%へ)。とりわけ「市場競争力」の伸びが顕著で、今年は「ブランドレピュテーション」を上回り最大要因となった。サステナビリティは、競合に勝ち、顧客に選ばれるための実践的手段として位置づけられている。
日本では、「市場競争力」を主要動機として挙げる割合が、2024年の52.0%から2025年は50.1%へとわずかに低下したものの、依然として過半を占め高水準である。一方、「ブランドレピュテーション」は、32.7%から26.1%へと低下した。(要因の第一位から第三位までを合算。)
図2:ESG/サステナビリティ施策へ投資および注力する要因のうち「市場競争力」および「ブランドレピュテーション」の占める割合(第一位から第三位までを合算)(%)
図3:ESG/サステナビリティ施策へ投資および注力する最大の要因(第一位から第三位までを合算)
(%)
規制圧力よりも「商業的メリット」が強いドライバー
サステナビリティ施策への投資は、長期的な収益性・売上の向上と明確に関連付けられている。「長期的に収益性を高める」と回答した企業は、調査対象国平均・日本ともに54.0%であった。また、「長期的に売上を増やす」と回答した企業は、調査対象国平均では51.3%、日本では52.4%であり、ともに高い割合を示し、否定的な回答はわずかにとどまった(調査対象国平均:2.0%、日本:3.2%)。規制への受動的対応ではなく商業的な牽引力が投資判断をより強く押し上げていることが浮き彫りになった。
図4:ESG/サステナビリティの向上によって達成しやすくなる事業目標(%)

投資対象分野
投資対象は多岐にわたるが、調査対象国全体としては、依然として「再生可能エネルギー」(43.5%)が最多である。「再生可能エネルギー」は二酸化炭素排出量削減やコスト削減に直結しやすく、各種優遇措置の活用もしやすい点が背景にある。社会的側面では、一部地域でDEI(多様性・公平性・包摂性)への反発が報じられたものの、多様性と包摂施策への投資割合はむしろ増加している。特に米国では、31.0%から44.8%へと拡大した。環境・社会の両面にわたり、中堅企業の投資は継続・拡大している。
日本では、「効率性を高めるためのデジタル化」(40.3%)がもっとも高い割合を占めており、「再生可能エネルギー」(34.7%)、「持続可能な調達/サプライチェーン改革」(34.7%)が続く。
5 : ESG/ サステナビリティ施策への投資予定分野 (%)
日本におけるESG/サステナビリティへの注目の高まり
経済産業省などの政府機関や自治体の支援策を背景に、中堅・中小企業でもESG経営への関心が広がりつつある。フォーバルGDXリサーチ研究所「中小企業の”ESG経営”の実態調査(2024年11月)」2では、約6割の企業が「商品・サービスの改善」に取り組む一方、ESG経営の認知・理解にはばらつきがみられる。さらに、「中小企業白書2025」3(中小企業庁)では、研究開発・イノベーションや海外展開を成長戦略に据える企業が増加しており、さらなる成長を目指す動きが強まっている。このことは、グローバルの動きとも呼応している。
逆風下でもレポーティングは継続
2025年初頭、EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の適用範囲見直しや米国SECの気候関連情報開示ルール見直しなどにより、企業がサステナビリティ報告の縮小が懸念されているにもかかわらず、中堅企業の72.9%が「サステナビリティ報告を継続する」と回答している。その理由として、44.8%は「ビジネス上合理的」、35.9%は「自社の事業目的と合致する」としており、報告が経営の中核に根付いている実態が示された。
日本においても、回答企業の63.3%が「サステナビリティ報告を継続する」と回答している。
図 6 : CSRD 導入・ SEC 規制変更を受けた ESG/ サステナビリティ報告への対応方針(%)

日本の中小企業の状況は、フォーバルGDXリサーチ研究所が行った2025年5月発表の「BLUE REPORT 2025」4によると、DXの認知度は約6割あるが、GXの認知度は約3割、つまり、「デジタル・トランスフォーメーション」という考え方・取り組みより、「グリーン」が絡むと認知・実践が遅れる。また、「GXに取り組んでいる経営者」は、取り組みを今後も継続するとする回答が9割を超える。制度の利用やノウハウの外部調達により、意思と実践のギャップを埋めていく必要がある。
今回のグラントソントンによる調査で、サステナビリティ施策のための「投資継続年数」についての調査項目があるが、日本は、「5年以上」取り組んでいる企業が最多の31.0%を占める一方、「開始前」と回答した企業の割合も調査対象国平均と比較してかなり高い割合を占める17.6%であり、比較的長く取り組んでいる企業と、取り組みが開始されていない企業とが二極化していることがうかがえる。
図7:ESG/サステナビリティ施策のための投資継続年数(%)
レポーティング制度の再設計と商機
グラントソントンの調査によると、企業は政治的な変化を見過ごしているのではなく、むしろそこに商業的な機会を見出している。調査対象国全体では、中堅企業の34.5%が「CSRDの対象範囲縮小など、一部の地域でのより緩やかな方向性は、自社のニーズに合致している」と回答し、33.1%が「変更に安心した」と述べている。これは、従来の政策が「性急すぎて、実際には企業の取り組みを支援していなかった」ためだと考えられる。日本においては、「判断を保留しており今後の動向を注視している」と「引き続き重視しており方針変更はない」がもっとも高い割合を占めている。(ともに31.0%)
サステナビリティ報告は、多くの中堅企業にとってまだ新しく発展途上の分野であり、非財務データの幅広い取集・開示には複雑さを伴う。このため、多様な法規制、政策枠組み、会計基準、保証プロトコルが急速に整備されたが、このことが逆に不確実性を生むことにもなっているといえる。こうした中で、規制のスコープやスピードを調整する動きが歓迎されており、これは「サステナビリティからの後退」を意味するのではなく、企業がサステナビリティに本質的に取り組むための余地を広げている。
図8:規制変更・政治的動向を踏まえたESG/サステナビリティに対する見解(%)

規制変更は、国際市場進出にも追い風となっている。調査対象国平均では、回答企業の43.1%が「サステナビリティが輸出を促進する」と回答し、49.8%が「国外での事業拡大を可能にする」と回答している。報告要件が緩和されたことで、特にヨーロッパ市場への参入が容易になり、コンプライアンスに割くリソースを削減して、マーケティングやオペレーションに割り当てられるようになった。信頼性の高い開示は、新市場でのブランドレピュテーション向上にも資する。また、中堅企業が短期的に成果を出しやすい領域として「サプライチェーンの改善」(53.8%)が挙がった。グローバルに広がるバリューチェーンでは、サステナビリティが投資家・顧客からの信頼獲得に直結する。規制緩和は、成長と国際展開を後押しする追い風になっている。
一方、日本においては、「優秀な人材を惹きつける」(46.0%)がもっとも高い割合を示しており、「サプライチェーンの改善」(32.3%)や「国外での事業拡大を可能にする」(29.8%)などは、調査対象国平均と比較して、控えめな割合にとどまっており、また、「投資家を惹きつける」ための要因としては非常に弱い(15.3%)といえる。
図9:ESG/サステナビリティ向上によって達成しやすくなる業務目標(%)
主な障壁と克服方法
グラントソントンの調査によると、最大の障壁は「コスト」(40.9%)、次いで、「規制や基準の複雑さ」(35.0%)、「遵守に必要な人的・時間的リソース」(32.3%)が続く。その他、経営陣や取締役会の賛同不足、グリーンウォッシュへの非難に対する恐れ、不正確な報告に対する報復の恐れ、組織内における知識やスキル不足、バリューチェーン全体像の可視性の欠如などが挙げられた。
日本では、コスト(資本投資)と人的・時間的リソースの不足が、調査対象国平均を上回る水準で突出している。物価上昇、人手不足、エネルギーコスト上昇など経営環境の厳しさが背景にあり、GXやESGに取り組みたいが準備体制が整わないという声が目立つ。これは前掲の「BLUE REPORT 2025」および「中小企業白書2025」の傾向とも整合する。
図10 : ESG/ サステナビリティ施策を実施するうえでの障壁(第一位から第三位までを合算)(%)

グラントソントンからの提言
グラントソントンでは中堅企業が持続可能な経済の推進において果たすべき役割を明らかにし、今後の行動指針として5つの提言を示しています。
Be heard(声を上げる)
中堅企業は、持続可能な社会を実現するうえで欠かせない存在です。行政や規制当局との対話、政策提言への参画などを通じて、自社の視点や課題を積極的に発信し、社会的な議論に参画することが求められます。
Be evidence-led(データに基づく行動)
サステナビリティへの取り組みは、定性的な理念だけでなく、定量的な根拠が重要です。報告や開示を通じて自社の取り組みを可視化し、進捗や成果を測定・共有することで、ステークホルダーからの信頼と商業的な価値を高めることができます。必要に応じて専門家の助言を得ながら、戦略的に進めることが望まれます。
Be focused(焦点を絞る)
近年の規制緩和は、企業にとって自社の実情に即した取り組みを進める好機です。自社の事業戦略や市場環境に最も関連する分野に注力し、より質の高いサステナビリティ報告と成果の最大化を目指すことが重要です。
Be collaborative(協業をすすめる)
コストや制度の複雑さなどの課題に対しては、関係者との協働が効果的です。投資家、業界団体、取引先、顧客などと連携し、共通基準の整備や効率的な仕組みづくりを進めることで、持続可能なバリューチェーンを構築することが期待されます。
Be clear(明確に伝える)
サステナビリティは、企業の成長とレジリエンスを高めるための戦略的要素です。
「気候変動対策」や「ESG」といった概念にとどまらず、「長期的成長」や「持続的な競争力強化」といった具体的な価値として、自社の取り組みを明確に伝えることが重要です。
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2 https://gdx-research.com/wp-content/uploads/2024/10/bluereport_202411.pdf
3 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho.html
4 https://gdx-research.com/wp-content/uploads/2025/05/forval-bluereport2025.pdf
以上
2025年版世界35カ国における中堅企業のサステナビリティ経営に関する意識調査
(サステナビリティ経営の拡大:中堅企業が描く持続的成長への道)- 概要
| 実施期間: |
2025年4月~5月 |
| 参加国数: |
35カ国 アジア太平洋地域(APAC):オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ、ベトナム 北米・南米:カナダ、米国、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア 欧州・中東・アフリカ地域(EMEA):フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、スペイン、オランダ、スウェーデン、エジプト、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、ボツワナ、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦、英国 |
| 調査対象: |
世界35カ国4083の中堅企業ビジネスリーダーまたは経営トップ 日本からは従業員数100名以上1,000名未満の全国の中堅・中小企業から142社の意志決定権を持つ経営層が回答した。 |
| 調査手法: |
質問票を各言語に翻訳し、オンラインおよび電話で行い、調査会社Dynataがデータの取りまとめを行った。 |
| 利用上の注意: |
調査結果の数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。 |
| Grant Thorntonは、1992年にヨーロッパの中堅・中小企業に関する年次調査「European Business Survey」を開始。2002年から、日本を含む世界の中堅・中小企業を調査対象に加えた「International Business Report」(IBR)として年次調査を実施。2010年11月~12月実施の調査以降は、半期または四半期ごとに調査を実施し、結果公表を行っている。
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太陽グラントソントン
所在地: 東京都港区元赤坂 1 2 7 赤坂Kタワー 18 F
代表: 梶川融 (公認会計士)
グループ会社: 太陽有限責任監査法人、太陽 グラントソントン税理士法人 、太陽 グラントソントン ・ アドバイザーズ株式会社 、太陽 グラントソントン株式会社 、太陽 グラントソントン社会保険労務士法人 、株式会社サンライズ・アカウンティング・インターナショナル
URL: https://www.grantthornton.jp/
<太陽グラントソントンが提供する事業領域>
太陽グラントソントン は、 Grant Thornton の加盟事務所として世界水準の会計コンサルティング業務を提供します。監査・保証業務、IPO サービス、内部統制、M Aトランザクションサービス、 IFRSアドバイザリーサービス、国際/国内税務、移転価格税制コンサルティング、事業承継、財団法人支援、外資系企業に対するコーポレートサービス、労働法務コンサルティング、海外進出支援、財務・業務管理システム導入・運用コンサルティング
Grant Thornton
監査・保証業務、税務関連業務、アドバイザリーサービスを提供している相互に独立した会計事務所およびコンサルティング会社から構成される世界有数の国際組織。世界150 拠点、75,000 人以上の従業員を有します。日本では太陽グラントソントンに所属する6組織が、海外ジャパンデスクやグラントソントンメンバーファームと連携し、経済のグローバル化によって国際化するクライアントのニーズにも柔軟、且つ迅速に、高品質なサービスを提供しています。
本部:英国ロンドン Global CEO:Peter Bodin
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 一般社団法人太陽グラントソントン
- 所在地 東京都
- 業種 その他サービス業
- URL https://www.grantthornton.jp/
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