EYストラテジー・アンド・コンサルティング、 インバウンド4,000万人時代の持続可能な市場分析を発表
~地方分散とリピート化、円安下の消費実態をデータから整理~
【キーハイライト】
■ インバウンド市場では、韓国は初回訪問者16%程度、台湾12%程度、香港は10%未満の成熟市場。一方、中国は初回訪問が4割程度で市場構造が大きく異なり、ポートフォリオを意識する必要あり
■ 消費額増加は円安の影響も大きく、訪問回数別・国別の消費実態とあわせた評価が重要。為替が適正水準(中央値135円)に近づくと仮定した場合、2025年平均(約150円)との隔たりから、9,454億円規模の影響が生じる可能性がある
■ 地方部(三大都市圏以外)の消費は2.0兆円(全体の24.8%)にとどまり、三大都市圏との一人当たり消費単価差は2.2万円と宿泊日数と消費単価の相関を踏まえると、地方での波及効果には、「いかに宿泊してもらうか」が重要となる
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡、以下EYSC)は、観光庁「インバウンド消費動向調査」の個票データを活用し、訪問回数別の行動や消費実態、地方分散の状況を分析・整理したツーリズムレポート「持続可能なインバウンド市場の構築に向けて~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~」を発表しました。
【レポート概要】
観光庁の公表資料によると、2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人(2024年比15.8%増)と過去最高を更新し、インバウンド消費額も9兆4,549億円(同16.4%増)と過去最高となりました。*1
一方で、消費額の増加については円安の影響が大きいとの見方もある中、量的回復の先を見据え、持続性を担保するための構造的な論点整理が求められています。
また、日本政府は2026年3月27日に「観光立国推進基本計画」を新たに策定し、2030年に向けた目標の継続に加えて、リピーター4,000万人の獲得や、地方部での延べ宿泊日数(1.3億人泊)の目標を再設定しました。レポートでは、こうした政策目標も念頭に、足元のデータから市場の実態と論点を整理しています。
*1: 観光庁「【インバウンド消費動向調査】 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」(2026年3月31日)https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001992584.pdf
1. インバウンド市場では、韓国は初回訪問者16%程度、台湾12%程度、香港は10%未満の成熟市場。一方、中国は初回訪問が4割程度で市場構造が大きく異なり、ポートフォリオを意識する必要あり
訪問回数の分布に着目すると、全体では初回訪問者の割合が約35%前後で推移しており、現在の比率が継続すればリピート率は65%となり、リピーター4,000万人の目標が視野に入ると整理できます。
一方、国・地域別に見ると市場構造は大きく異なります。東アジアでは韓国(初回訪問者16%程度)、台湾(同12%程度)、香港(10%未満)とリピーター中心の成熟市場であるのに対し、中国は初回訪問割合が4割程度と依然として、新たに訪日する層が多く、市場の成熟度や新陳代謝の状況が異なる点が示されています。
2. 消費額増加は円安の影響も大きく、訪問回数別・国別の消費実態とあわせた評価が重要。為替が適正水準(中央値135円)に近づくと仮定した場合、2025年平均(約150円)との隔たりから、9,454億円規模の影響が生じる可能性がある
訪問回数別の消費実態を、国横断で確認すると、初回訪問者ほど宿泊日数・消費単価が高い傾向が見られます。また、2018年と2025年を対象に、円安・物価上昇の影響を差し引き現地通貨建てで、市場別に比較・分析すると、中国を除く国では市場拡大の中で一人当たり消費単価が増加しています。一方で、直近3年程度では多くの市場で現地通貨建ての予算感が横ばいまたは減少傾向にあり、円建てで見える消費額増を解釈する上では、為替評価を踏まえた評価が重要になります。インバウンド消費額や一人当たり消費単価の増加は円安による上振れ(円安プレミアム)の影響が大きいと位置付けられます。
さらに、国内企業が適正と考える為替相場*2(中央値135円)と、2025年の平均為替レート*3(約150円)の隔たりに触れ、仮に適正水準に近づく場合、単純計算で9,454億円の影響がある可能性にも言及しています。
*2: 株式会社東京商工リサーチ「「円安」、企業の41.3%が「経営にマイナス」 希望レートは「1ドル=133.5円」、現状と20円以上の乖離」(2025年12月12日)
www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202185_1527.html (2026年4月12日アクセス)
*3: 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「外国為替相場情報」
www.murc-kawasesouba.jp/fx/year_average.php (2026年4月12日アクセス)
3. 地方部(三大都市圏以外)の消費は2.0兆円(全体の24.8%)にとどまり、三大都市圏との一人当たり消費単価差は2.2万円と宿泊日数と消費単価の相関を踏まえると、地方での波及効果には「いかに宿泊してもらうか」が重要となる
地方部(三大都市圏以外)への消費は総額で2.0兆円(インバウンド消費全体の24.8%)にとどまり、三大都市圏とそれ以外で一人当たり平均消費単価に2.2万円の差があると整理しています。加えて、インバウンドの入込が多い地域であっても消費単価が高いとは限らず、平均宿泊日数と平均消費単価には強い相関があることから、地方への消費波及を高める上では「いかに宿泊をしてもらうか」が重要な論点になります。また、各地域でインバウンド増加に伴い住民の不満が生じる、いわゆるオーバーツーリズムの課題がある中でも、地域経済への恩恵を引き出し、住民生活の豊かさ向上につなげていく観点から、消費につなげる仕掛けづくりの重要性を指摘しています。
4. 今後のインバウンド市場に向けて
公開統計から見ると、インバウンドの地方分散やリピート化は一様に進むものではなく、国・地域ごとに来訪者の行動特性が異なります。施策の効果を高めるためには、地域ごとにターゲットを明確にし、戦略的に市場を捉えることが重要です。消費面では宿泊との相関が大きい一方、リピーターの購買消費の増加が確認できる市場もあることから、地域でしか得られない商品や体験への接点づくりがカギとなります。
加えて、“モノ”消費から体験を通じた“コト”消費へのシフトを踏まえた価値訴求と価格設計が、今後の持続的な市場形成に不可欠と考えられます。
本レポートを担当したEYSC ストラテジック インパクト パートナー 平林 知高のコメント:
「インバウンド4,000万人時代を迎えましたが、データを見ていくと、メイン市場である東アジアのポートフォリオ(訪問回数、年齢構成)からは、必ずしも楽観視できる状況ではないとわかります。リピート化推進も、単純に地方へ滞在がシフトするというより、都市部の滞在も組み合わせての訪日となり、必ずしも「分散」とはなっていないケースもあります。オーバーツーリズムの議論も起こる中、観光地マネジメントや誘客促進に向けて、国や地域はターゲットを見据えて、いかにして誘客していくべきか、市場が多様化する今、非常に重要な転換点を迎えていると言えます」
より詳細なレポート全文(フルレポート)は、下記からダウンロードください。
持続可能なインバウンド市場の構築に向けて~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~
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