腎臓への新薬物送達 (DDS) 技術の開発に成功

京都薬科大学

2018年9月25日

学校法人京都薬科大学

腎臓への新薬物送達 (DDS) 技術の開発に成功

-「慢性腎不全」「腎細胞がん」などの治療薬・診断薬を

ピンポイントで届ける-

京都薬科大学薬剤学分野の勝見英正准教授、山本昌教授らの研究グループは、腎臓に治療薬や診断薬をピンポイントで送達できるナノ薬物担体の開発に成功しましたので、お知らせいたします。

今回開発したナノ薬物担体の利用により、これまで治療が困難とされてきた「慢性腎不全」や「腎細胞がん」

などの薬物治療・診断の大幅な改善と副作用の軽減が期待できます。

本研究の成果は、2018年9月24日(米国東部時間)の週に「Proceedings of the National Academy of

Sciences of the United States of America(PNAS,米国科学アカデミー紀要)」のオンライン速報版で発表されます。

なお、本論文の報道機関用プレプリントはPNAS誌の“a secure reporters-only web site”から入手できます。

<研究概要>

腎臓へ送達するための薬物担体の開発は、これまでも本学に限らず研究がなされてきました。しかしその多くは腎臓だけでなく、肝臓や脾臓(ひぞう)などの標的臓器以外の部位へも移行し、腎臓にピンポイントで送達される薬物担体の開発は難しい状況にありました。

研究グループは、アミノ酸の一種であるセリンをナノ薬物担体の表面に結合させることで、薬物担体が腎臓のみに集積することを、マウスを用いた実験で明らかにしました(下図)。また、腎臓のどこに移行するかをみると、慢性腎不全や腎細胞がんの発症部位である近位尿細管に主に集積することが確認できました。

セリンは生体適合性に優れており、抗がん剤などの治療薬や診断薬をナノ薬物担体に搭載すれば、慢性腎不全や腎細胞がん治療・画像診断やセラノスティクス(治療と診断を同時に実施するシステム) に利用できるとみています。

今後は腎臓に疾患を持つ患者さんの一日でも早い治療への実用化に向け、新薬物送達 (DDS) 技術として製薬メーカーとの共同開発に広げる意向です。

マウス

<マウス静脈内投与後のセリン結合ナノ薬物担体の体内動態>

(左)放射標識セリン結合ナノ薬物担体のSPECT/CT画像

(右)近赤外蛍光標識セリン結合ナノ薬物担体のIVIS画像

<発表雑誌>

●雑誌名:

Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)

発表タイトル:

L- Serine-modified polyamidoamine dendrimer as a highly potent renal targeting drug carrier

●著者:

Satoru Matsuura(a,1), Hidemasa Katsumi(a,1,2), Hiroe Suzuki(a), Natsuko Hirai(a),

Hidetaka Hayashi(a), Kazuhiro Koshino(b), Takahiro Higuchi(b,c), Yusuke Yagi(d),

Hiroyuki Kimura(d), Toshiyasu Sakane(a) and Akira Yamamoto(a)

●著者所属:

(a)Department of Biopharmaceutics, Kyoto Pharmaceutical University,

   Yamashina-ku, Kyoto 607-8414, Japan

(b)Department of Bio-Medical Imaging,

   National Cerebral and Cardiovascular Center Research Institute,

   565-8565 Osaka, Japan

(c)Department of Nuclear Medicine, Wuerzburg University, 97080 Wuerzburg, Germany

(d)Department of Analytical and Bioinorganic Chemistry, Kyoto Pharmaceutical University,

   Yamashina-ku, Kyoto 607-8414, Japan.

(1)These authors contributed equally as first author

(2)Corresponding author

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