メディアセミナー「腸から健康を支える『酪酸菌・酪酸』のチカラ」~実施レポート~

2019年6月吉日

武田コンシューマーヘルスケア株式会社

メディアセミナー

「腸から健康を支える『酪酸菌・酪酸』のチカラ」

~実施レポート~

 武田コンシューマーヘルスケア株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:野上麻理)は、日本有数の長寿地域である京都府京丹後市における疫学調査「京丹後長寿コホート研究」で腸内フローラ分析を担当された京都府立医科大学消化器内科学教室 准教授 内藤裕二先生をお招きし、「酪酸産生菌(以下、酪酸菌)」と「酪酸」に関するメディアセミナーを開催いたしました。

 本リリースでは、内藤先生による講演内容を抜粋し、最新の研究から見えてきた日本人の腸内フローラの特徴、さらにその中で酪酸菌・酪酸が果たす重要な役割についてご紹介いたします。

内藤准教授

●ご講演頂いた内藤准教授

会場の様子

●当日の会場の様子

【酪酸菌・酪酸への注目の背景】

 腸には、ヒトの細胞数約37兆個よりはるかに多い100兆個もの細菌が棲んでいると言われます。現在、国内外の医学界では「腸内フローラ(腸内細菌叢)」についての研究が進展し、その構成や種類、役割などが明らかになりつつあります。さらに、遺伝子解析技術などの急速な進歩により「腸内細菌が作り出す物質」にも焦点が当てられ、その機能や可能性についても注目されるようになってきました。その中で重要な役割を果たす存在として長寿の日本人の腸内フローラに多い「酪酸菌・酪酸」に注目が集まっています。

【酪酸菌・酪酸の秘められた可能性】

 酪酸菌はヒトの腸内で酪酸を産生する菌の総称です。また酪酸は大腸上皮細胞の主要なエネルギー源であり、腸を理想的な状態に保つためには不可欠な存在です。内藤准教授らが進めている「京丹後長寿コホート研究」では、長寿者の腸には酪酸菌が多いことが明らかになり、酪酸菌が健康長寿に寄与する新たな可能性が示されました。

 現在、「酪酸菌・酪酸」に関する研究は世界中でさまざまな角度から実施され、その秘められた可能性が少しずつ明らかになってきました。それと同時に「酪酸菌・酪酸」が日本人の健康に資する存在と考えられるようになり、将来的には病気の予防や治療への活用の道も拓かれそうです。

内藤准教授

「酪酸菌の存在は、日本人の腸内フローラの重要な特徴です。酪酸菌が産生する酪酸には様々な機能があり

その働きが健康長寿に貢献できる可能性が示されつつあります」とお話しされる内藤准教授

【講演「日本人の腸内フローラ解析からみえてきた『酪酸産生菌−酪酸』の秘密】

□「有用な物質を多く作れる」のが日本人の腸内フローラの特徴 □

 日本人の伝統的な腸内細菌は、食物繊維を餌にして酪酸を作る菌とも言えます。実際に日本の研究者が2016年に発表したデータから、日本人の腸内フローラは酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を多く生成するという決定的な特徴があることが明らかになりました。日本人の腸内フローラにやや似ているのはオーストリア人と一部のフランス人の腸内フローラです。これは、長年にわたり発酵食品を摂取してきた国の人に見られる特徴だと思われます。一方、私たち日本人とよく似た遺伝子をもつ中国人の腸内フローラの構成は、日本人と異なっていました。腸内フローラは遺伝よりも環境の影響をより強く受けるのです。

□ 長寿エリアの高齢者には「酪酸菌が多い」□

 京丹後市は人口10万人あたりの百寿者が130人と全国平均の2.8倍で、日本有数の長寿地域です。京都府立医科大学は2017年に長寿・地域疫学講座を開設し、この地域の高齢者の健康長寿の秘密を探る研究を開始しました。

 まず、京丹後市と京都市のデータを比較したところ、胃がんの罹患率には差がない一方、京丹後市では大腸がんの罹患率が低いことがわかりました。このことから、京丹後市民の腸内フローラには何らかの長所があると考え、京丹後市と京都市の高齢者(65歳以上)各51名の腸内フローラを比較したところ、京丹後市の高齢者の腸に多い菌の上位4種が酪酸菌であることがわかりました。これは非常に興味深い結果です。何故ならこの研究に先立って行われた慶應義塾大学の研究でも、酪酸菌が免疫を介して健康に寄与する可能性が見つかっているからです。一方、海外の研究から、糖尿病や肥満の患者の腸では酪酸菌が減っていることもわかっています。

□腸内細菌による“発酵“で生まれる酪酸は健康維持の要?□

 これまでの栄養学では、食べ物からエネルギーが作られる過程を「①消化、②吸収、③排泄(代謝)」と説明してきました。しかし今後は「①消化、②吸収、③腸内細菌による発酵、④排泄(代謝)」という4つのプロセスで捉える必要があります。

 腸内細菌は、ヒトの消化器では消化できない食物繊維を餌として、生命維持に不可欠なビタミン類、酪酸などの短鎖脂肪酸などを作り出します。これが「発酵」という生命維持に不可欠なプロセスなのです。いまや腸内細菌の存在を抜きにしてヒトの健康や生命維持を考えることはできません。今後、健康の増進や病気の予防・治療を考えるうえでも、腸内細菌による発酵がますます重要なポイントとなり、そこから生まれる酪酸などの存在に注目が集まっています。

□良好な腸内フローラを支える酪酸菌□

 酪酸のもっとも重要な働きは、大腸上皮細胞のエネルギー源となることです。人間の皮膚は幾層にも重なった構造をしていますが、腸の表面は1層の「上皮細胞」が存在し菌などの侵入をブロックするバリアの役割を担っています。このバリアが破壊されることがさまざまな病気の原因と考える研究者は多く存在します。

 さて、腸内にはさまざまなタイプの菌がいます。 酪酸菌をはじめ、ビフィズス菌などヒトに有用な菌は無酸素状態を好む傾向があります。一方、人体にとって悪い菌の代表とされるサルモネラ菌、ビブリオ菌、カンピロバクター菌などのプロテオバクテリア門の菌は酸素のある環境を好みます。 無酸素状態の腸内では、酪酸菌は増殖して酪酸を作ります。大腸の上皮細胞はこの酪酸と酸素を利用してエネルギーを作ります。すると大腸内は無酸素状態となり、有用な菌が棲みやすい環境になります。つまり酪酸菌と大腸上皮細胞が持ちつ持たれつの良好な関係を保つことで、腸の“バリア”を守り、腸内環境の乱れ(ディスバイオーシス)を防ぐことができるのです。

□超高齢化社会・ニッポンの未来を担う腸内フローラ□

 WHOが2015年に発表した「高齢化と健康に関するワールド・レポート」には「高齢者は依存者ではない。高齢者層への支出はコストではなく投資と考えるべき」と明記されています。年金や医療などの「コスト」と、高齢者が税金や経済活動によって生み出す「社会貢献」のバランスを考えると、貢献額が400億ポンド(約7兆4600億円)になるとの試算もあります。心身の健康と活動の場所が確保できれば、高齢者にもコストを超える社会貢献が十分に期待できるのです。

 2050年には日本の人口の40%を65歳以上が占めます。この現状を前向きに見据え、食や健康、腸内環境について考えながら、健康長寿のための投資をすることが、未来の日本にとって必要ではないかと考えています。

内藤准教授

酪酸には他にも「遺伝子の発現を介して免疫の働きを助ける」、「全身にある酪酸受容体に結合することで、エネルギー消費を促進したり、炎症を抑えたりする」などの有用な働きがあり、病気の予防や治療など今後の高齢化社会の中で活用されていく期待を語る内藤准教授。

【講師プロフィール】

京都府立医科大学 消化器内科学教室 内藤裕二准教授

1983年京都府立医科大学卒業、93年同大学にて医学博士号を取得。

98年より同大学第一内科学教室に勤務

2001年より米国ルイジアナ州立大学医学部 分子細胞生理学教室客員教授。

08年京都府立医科大学大学院 医学研究科消化器内科学准教授、

15年同大学附属病院内視鏡・超音波診療部部長。

現在、日本消化器病学会の専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会の専門医・指導医など

多数の資格をもち、活躍。著書に「消化管(おなか)は泣いています」(ダイヤモンド社)、「脳腸相関」(医歯薬出版)ほか。

【メディアセミナー概要】

「腸から健康を支える『酪酸菌・酪酸』のチカラ」メディアセミナー

日時:2019年4月24日(水)17時~18時30分

場所:東京・野村コンファレンスプラザ日本橋 中ホール

主催:武田コンシューマーヘルスケア株式会社

酪酸・酪酸菌に関する情報は WEBサイト「酪酸菌大百科]でも 情報を発信しています!

https://rakusan-labo.jp/

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

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内藤准教授

内藤准教授

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