3月8日は国際女性デー【世界29カ国の中堅企業の経営幹部における女性比率】グローバル平均、初の30%到達
日本は引き続き緩やかに上昇を維持するも他国から大きく引き離され依然として低水準
2021年3月5日
太陽グラントソントンhttps://www.grantthornton.jp/
太陽グラントソントンは、2020年10月~12月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した。この調査は、グラントソントン加盟主要29カ国が実施する世界同時調査の一環である。
・アジア太平洋地域を除く地域で経営幹部における女性比率が30%を超える
・日本は引き続き緩やかな上昇傾向を維持するも、他国から大きく引き離され依然として低水準
・調査対象国平均で約7割がコロナ禍で生じた新しい働き方が女性のキャリアパスにプラスの影響
世界29カ国の中堅企業経営者に、「自社の経営幹部(※1)の女性比率」について尋ねたところ、全調査対象国29カ国の平均は31%と、2020年3月発表の前回調査結果から2ポイント上昇した。調査対象国29カ国中25カ国にて上昇を記録し、2004年の調査開始以降、今回の調査で初めて30%台の大台に到達する結果となった。
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※1:本質問の経営幹部には、以下が含まれます。最高経営責任者(CEO)/代表取締役社長・会長・その他会社代表者、最高業務責任者(COO)、最高財務責任者(CFO)/財務担当取締役、最高情報責任者(CIO)、取締役人事部長、最高マーケティング責任者(CMO)、取締役経営企画部長、財務部長、経理部長、取締役営業部長、パートナー、共同出資者、共同経営者等。
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日本の中堅企業における経営幹部の女性比率は15%で、前回調査より3ポイント改善し上昇傾向を維持するも、引き続き調査対象国中最下位となった。
国別に見ると経営幹部の女性比率が最も高かったのは前回に引き続きフィリピンで48%(前回比5ポイント増)、次に南アフリカの43%(前回比3ポイント増)となり、いずれも前回調査時に引き続き40%台の高水準を維持した。そのほかの国では、インド(39%、前回比9ポイント増)、ブラジル(39%、前回比5ポイント増)、ベトナム(39%、前回比6ポイント増)と30%台後半の記録が続いた。
■「経営幹部に一人も女性がいない」中堅企業の比率、8割の国で改善
■日本は引き続きワースト1位
経営幹部に一人も女性がいない中堅企業の割合は、前回に引き続き日本が43%と調査対象国中で最も多かったが、その割合は前回比で9ポイント低下し、世界的にみると未だ低水準でありながらも、実質的には着実な改善をみせた。
調査対象国平均では前回より3ポイント低下の10%を記録した。調査対象国のうち、8割近くにあたる23カ国において低下、過半数である16ヵ国が一桁台に到達し、世界全体で経営幹部に女性が全くいない中堅企業の数は減少傾向にあることが明らかになった。減少幅が大きかった国では、アルゼンチン(前回比20ポイント減)、アラブ首長国連邦、(前回比11ポイント減)、ギリシャ(前回比11ポイント減)が並び、二桁レベルの飛躍をみせた。(表3)
■経営幹部の女性比率改善のための施策
■日本では対策を講じていない企業の数が増加
経営幹部中、女性比率の維持もしくは増加のために取っている施策について尋ねたところ、調査対象国平均では、「責任ある業務に就く機会を平等に与える」が最も多い39%、次いで「多様性を尊重する企業文化を創る」が36%となり、企業の中長期的なアプローチへの姿勢がうかがえた。
一方で、日本においては、「特に対策は取っていない」と回答した割合が44%と半数近くにのぼり、世界の傾向に逆行する結果となった。(表4)
■新型コロナウイルスが女性躍進へ与えた影響
新型コロナウイルスが女性躍進へ与えた影響を尋ねたところ、感染拡大によって生じた新しい働き方は、女性がビジネス現場においてより指導的な役割を果たすことを可能にしたと思うと回答した割合は、調査対象国平均では59%と約6割にのぼった一方で、日本では33%に留まった。(表5-A)
また、新しい働き方が女性のキャリアパスにプラスの影響を与えるかどうかを尋ねたところ、調査対象国平均では69%、日本では41%がプラスの影響を与えるとの見方を示した。
一般的にみて、新型コロナウイルスが女性のキャリアパスにマイナスの影響を与えるかを尋ねたところ、調査対象国平均では45%が、日本では20%がそう思うと回答した。
外部のステークホルダー*からのジェンダーバランスに対する働きかけについては、調査対象国平均では過半数の56%が、日本では22%が強まっていくと予測した。
新型コロナウイルスの影響を受けて実際に講じた施策では、調査対象国平均、日本ともに「従業員のワークライフバランスや柔軟性の促進」が最も多く挙げられた。
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経営幹部層への女性登用と新型コロナウイルスがジェンダー平等に与える影響
矢島洋子
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 主席研究員
「日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は、残念ながら昨年に引き続き、調査対象国中最下位であった。」これは、昨年のコメントの書き出しである。
今年もこの一文で始めねばならないのは、非常に悲しいことである。ただ、この間、日本でもポジティブな変化が起きている。従来「課長相当」の管理職割合の増加を目指した取組みに注力していた企業の中に、役員を含む「部長相当」以上、つまりこの調査で言うところの「経営幹部層」の増加を目的とした取組みが出てきたことである。大企業から起きている取組みではあるが、中堅企業にも着実に広がっていると考えられる。こうした取組は研修やメンタリング等を通じて行われているが、日本企業では、従来、男性はオールドボーイズネットワークの中で、先輩の後を追う形でキャリア形成をはかっており、積極的なキャリア形成支援の取組みは少なかった。そのため、経営幹部育成のノウハウが不足している。女性に限らず、計画的に経営幹部を育成する方法を模索している企業が多く、その過程で、あらためて、男性に対するキャリア形成支援のあり方を見直す企業も出てきている。人事分野のDX化の流れとも相まって、人事データを積極活用したタレントマネジメントにより、幹部を育成する動きが、大企業を中心に始まっている。また、このような経営主導で計画的に幹部育成する取組みと同時に、キャリアの初期段階から、自律的なキャリアプランニングを促す取組みも重視されている。キャリアに対する積極性を引き出し、幹部候補層のすそ野を拡大しつつ、幹部候補以外の形でも、多様な人材を組織内で生かす目的がある。
日本の人材育成・人材活用においては、女性の問題だけでなく、グローバル化や大きな変化に対応した産業構造の転換に資する制度やマネジメント変革のニーズが高まっており、ダイバーシティに関しても高齢者活用や障がい者雇用拡大、性的マイノリティ支援など、様々な課題が噴出している。そのため、「もう女性のみに着目しなくても良いのではないか」という企業経営者や人事担当者の声も聞こえてくる。女性活躍推進法の施策後、企業の自主行動計画がワンクール(2~3年単位)終わったあたりから、こうした声が高まっており、今回の調査結果のように、世界的にみてもかなりの遅れがあり、「2020年までにあらゆる分野で指導的な地位にある女性の割合を30%に」という目標にも全く届かなかった状況にも関わらず、女性活躍推進の取組みが停滞しつつあった。そうした中、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森 前会長による女性蔑視発言と、その責任を認めた形での辞任、という問題が起こった。この一連の事件は、多くの企業経営者の目も開かせたと考えられる。日本社会や企業の幹部層が考えるジェンダー問題に対する認識が、正解的な常識からも、また日本社会の女性たちの認識からも、大きくずれていることが明らかになったためである。「この程度」で終わらせてはならない、というムードが再び広がりつつある。今回の調査では、他国に比べて実施率が低かった「アンコンシャスバイアス」を是正する取組みも、今後取り組む企業が増えることが見込まれる。
次に、今回の調査のもう一つのテーマである「新型コロナウイルスの感染拡大」が女性躍進に与えた影響について述べる。当社は、日本で緊急事態宣言が出された2020年5月と2021年2月に独自調査を行っている。当社の調査結果から、日本においては、コロナ禍による社会の変化がジェンダー平等に与えた影響について、プラスとマイナスの両面が確認されている。プラス面としては、まず、テレワーク等柔軟な働き方の活用が進んだことである。これまでは、テレワークを導入している企業でも、子育て社員など一部の社員にのみ利用が限られており、利用率が極めて低い状況にあった。そのため、テレワークの質やテレワークを活かすための人事制度の見直しなどが議論されることは少なかった。そのため、少数派である、テレワークや短時間勤務などを利用する子育て女性が、就業を継続することはできても、効率的に働き、適正な評価を受け、キャリアを積極的に計画することが困難であった。
今回の調査の表5-Eでは、「新型コロナウイルスの影響を受けて実際に講じた施策」を聞いており、調査対象国平均、日本ともに「従業員のワークライフバランスや柔軟性の促進」が最も多く挙げられているが、ワークライフバランスや柔軟性の確保は、就業継続や「働きやすさ」にはつながるが、それだけでは、男女間格差の是正にはつながらないということは、すでに多くの国の経験から指摘されているところである。従来ワークライフバランスで、女性の働き方の柔軟性のみを進めてきた日本企業においては、コロナ禍で男性も含めた社員の働き方の柔軟性を高める必要性に直面し、その結果、大きな変化が起きつつある。柔軟な働き方を活かしたダイバーシティが一段と進むことが期待される。
もう一つのプラス面は、こうした柔軟な働き方の活用が進んだ結果、家庭内の家事・育児の分担において、男性の割合が高まったことである(図表1参照)。
日本では、元々、世代間の差が大きかったが、どの世代でも男性の割合は高まっており、特に、20代では、「5割~6割」が4割弱にまで増加してきている。特に、夫がテレワークを利用できた夫婦間の変化が大きい。
一方、マイナス面としては、男性の家事・育児の割合が高まったとはいえ、未だ女性の負担割合が大きい中で、コロナ禍により、行う必要のある家事・育児の総量が増えていることである。子どもの休校や保育サービスが利用しにくくなったこと、親の介護においてサービス利用が困難となったこと、家族の健康管理にこれまでよりも留意が必要となったこと、自身や夫のテレワークにより家事量が増えたこと、など。こうした負荷は、男性よりも女性に多くかかっているとみられ、男性よりも女性の離職が増えている。
もう一つのマイナス面では、雇用における影響が、特に非正社員に多く出ていることである。就業時間短縮や休業の影響により、今年度の年収においての減収見込みも正社員よりも、非正社員やフリーランスで高い(次頁図表2参照)。結果として、元々、非正社員の割合の高い女性に大きな打撃となっており、女性の自殺の増加率も男性よりも高く、シングルマザー家庭の困窮も強まっている。
新型コロナウイルス収束の見込みは、まだ立っていない。今後も、これらのプラス面とマイナス面の影響は拡大することが予測される。先に述べた、企業における人材育成・活用の取組みと同時に、社会においては、これらのプラス面をさらに伸ばし、マイナス面を引き起こす問題に真摯に向き合うことが、当面の日本におけるジェンダ―平等における重要課題であると考える。
以上
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矢島 洋子(やじま ようこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
執行役員 主席研究員
政策研究事業本部 東京本部副本部長
近年は、特に、「ダイバーシティを推進する働き方改革のあり方」、「職場における短時間勤務の運用方策」や「多様な働き方に前提としたキャリア形成のあり方」、「仕事と介護の両立支援」に着目した調査研究・コンサルティングに従事。
■専門分野: 少子高齢化社会対策、ワーク・ライフ・バランス、女性活躍推進
■経歴
学歴:慶應大学法学部卒
職歴:内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官(2004年4月~2007年3月)
大学講師など:中央大学大学院戦略経営研究科客員教授(2010年4月~)
■パブリシティなど
女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室
https://www.murc.jp/corporate/bizdev/diversity/
「企業におけるダイバーシティ推進」(季刊 政策・経営研究 2017Vol.4)※英語版
https://www.murc.jp/english/report/quarterly_journal/qj1704/
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日本の中小企業「経営幹部の女性比率」に関する世界29か国同時調査ー概要
実施期間:2020年10月~12月
参加国数: 29カ国
(アジア太平洋地域) 日本、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、 フィリピン、韓国、ベトナム
(EU加盟国) フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、スペイン、スウェーデン
(北米・南米) 米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ
(アフリカ) 南アフリカ、ナイジェリア
(その他)英国、トルコ、ロシア、アラブ首長国連邦
調査対象:世界29カ国4972社の中堅企業ビジネスリーダーまたは経営トップ
日本からは従業員数100名以上1,000名未満の全国の中堅・中小企業(上場および非上場)から227社の意志決定権を持つ経営層が回答した。
調査について:質問表を各言語に翻訳し、オンラインおよび電話で行い、調査会社Dynata(旧社名:Research Now)がデータの取りまとめを行った。
利用上の注意:統計の数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。
太陽グラントソントン
所在地:東京都港区元赤坂1-2-7 赤坂Kタワー18F
代 表:梶川 融(公認会計士)
グループ会社:太陽有限責任監査法人、太陽グラントソントン税理士法人、太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社、太陽グラントソントン株式会社、太陽グラントソントン社会保険労務士法人、太陽グラントソントン・アカウンティングサービス株式会社
URL:https://www.grantthornton.jp/
<太陽グラントソントンが提供する事業領域>
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