電通、「LGBTQ+調査2020」を実施

ストレート層を初めてグループ化、最も多いのは「知識ある他人事層」

電通

2021 年 4 月 8 日

株式会社 電通

 株式会社電通(本社:東京都港区、社長:五十嵐 博、以下「当社」)でダイバーシティ&インクルージョン領域の調査・分析、ソリューション開発を専門とする組織「電通ダイバーシティ・ラボ」は、PRソリューション局と共同で2020年12月に全国20~59歳の計60,000人を対象に、LGBTを含む性的少数者「セクシュアル・マイノリティ」(以下、「LGBTQ+層※1」)に関してインターネット調査を実施しました。

 

 当社はこれまで2012年、2015年、2018年と3回にわたり「LGBT調査」を実施しています。今回4回目となる本調査では、「LGBTQ+調査」と名称を改め、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)だけでなく、多様なセクシュアリティの内訳についても詳細な分析を行いました。

 

 LGBTQ+層に該当すると回答した人は、前回の2018年調査と変わらず8.9%であったものの、クエスチョニング(性自認もしくは性的指向が決められない、分からない)、アセクシュアル・アロマンティック(他人に恋愛感情を抱かない)、エックスジェンダー(性自認が男性・女性どちらとも感じる、どちらとも感じない)などといった「L・G・B・T」の他にも多様なセクシュアリティの存在が明らかになりました。

 また、LGBTという言葉の浸透率は2018年調査の68.5%から11.6pt上昇の80.1%となり、もはや一般化したと言えるレベルまで浸透しましたが、「L・G・B・T」以外の多様なセクシュアリティ(Q+)についての認知度はいまだ低く、更なる理解促進が待たれるところです。

 

 なお、今回の調査で初めて、ストレート層のLGBTQ+に対する知識と意識を調査し、6つのクラスターに分類しました(図1参照)。最も多かった層は、LGBTQ+に関する知識はあるものの課題意識があまり高くない「知識ある他人事層」(34.1%)でした。周りに当事者がほぼいないなど、自分事として考えるきっかけがなかったためか、LGBTQ+のトピックを他人事と捉えてしまっているという特徴がみられる層であり、当事者が抱える課題感をこの層に啓発していくことが、平等な社会実現に向けたきっかけになりうると考えられます。

 

※1 本調査では、セクシュアリティを「出生時に割り当てられた性」(出生性)、「本人が認識する性」(性自認)、「好きになる相手の性」(性的指向)の3つの組み合せで分類し、ストレート層(異性愛者であり、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する人)と答えた方以外をLGBTQ+層と定義しています。

 

 

 <今回調査の主なファインディングス>

①調査対象で最も多いのはLGBTQ+を知ってはいるものの自分事化できていない「知識ある他人事層」。

②LGBTQ+層の割合は8.9%。L・G・B・T以外の多様なセクシュアリティも半数近く占める。

③「LGBT」という言葉の浸透率は約8割。その一方で「Q+」の多様性は認知不足。

④約9割の人が「性の多様性」を学校教育で教えるべきと回答。

⑤パートナーシップ条例は、当事者の人権保護、地域の環境改善にある程度寄与。

⑥LGBTQ+層の消費パワーをはかる22カテゴリーの市場規模は5.42兆円(推計)

 

<各ファインディングスの詳細結果>

①調査対象で最も多いのはLGBTQ+を知ってはいるものの自分事化できていない「知識ある他人事層」

ストレート層5,685人にLGBTQ+に対してどのような考えを持っているのかを問う複数の質問を行い、因子を課題意識、配慮意識、生理的嫌悪、社会影響懸念、知識の5つに分けて分析。

 

(図1) LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析  ※クラスターに関する詳細な分析は、参考資料をご参照ください

 

 

②LGBTQ+層の割合は8.9%。LGBT以外の多様なセクシュアリティも半数近く占める。

セクシュアリティを「出生時に割り当てられた性」(出生性)、「本人が認識する性」(性自認)、「好きになる相手の性」(性的指向)の3つの組み合せで分類し、ストレート層(異性愛者であり、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する人)と答えた方以外をLGBTQ+層と定義しており、LGBTQ+層に該当する人は2018年の調査と変わらず、8.9%となった。

また「出生性×性自認」「性自認×性的指向」それぞれの組み合わせによる主な内訳は下記の通りとなった。性自認のクエスチョニング(性自認が決められない、分からない)が0.62%、性的指向のクエスチョニング(性的指向が決められない、分からない)が1.63%、アセクシュアル・アロマンティック(他人に恋愛感情を抱かない)が0.81%、エックスジェンダー(性自認が男性・女性どちらとも感じる、どちらとも感じない)が1.20%など、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけでなく、それぞれの多様なセクシュアリティを理解し配慮する必要があると言える。

 

※ 選択肢の便宜上、上記に分類していますが、上記以外にも多様なセクシュアリティがあります。

 

 

③「LGBT」という言葉の浸透率は約8割。その一方で「Q+」の多様性は認知不足

LGBTという言葉の認知度について、2015年調査の37.6%から、2018年調査では68.5%と大幅上昇したが、2020年調査では80.1%とさらに11.6pt上昇。(図2)

その一方、LGBT以外の性の多様性については、約8割の人が言葉自体も聞いたことがないと回答。LGBTの他にも多様なセクシュアリティの存在についての認知はまだ進んでいないことがわかった。(図3)

 

(図2)

 

 

(図3)

 

 

④約9割の人が「性の多様性」を学校教育で教えるべきと回答

学校教育でLGBTQ+をはじめとする「性の多様性」について教えるべきかを聞いたところ、「教えるべき」「できれば教えるべき」と回答した人は88.7%と大多数である結果となった(図4)。

一方で「教えてもらったことがある」と回答した人は10.4%にとどまり(図5)、昨今の教育プログラムに盛り込まれている影響もあってか、若年層の方が教わったと回答した割合は高くなり、LGBTQ+への認知・理解が進んでいる傾向が見受けられた。

 

(図4)

 

 

(図5)

 

⑤パートナーシップ条例は、当事者の人権保護、地域の世論改善に寄与

社会全般において自分の人権が守られているかを聞いたところ、ストレート層では73.4%が「自分の人権が守られていると感じている」と回答した一方、LGBTQ+層全体では54.8%と大幅に少ないことが分かった。一方、パートナーシップ条例を制定している都市に住んでいるLGBTQ+層の59.8%は「守られていると感じている」と回答した。

また、LGBTQ+への課題意識を問う5つの質問の回答をスコア化し平均点を算出したところ、最もLGBTQ+への課題意識が強いのは沖縄県、次いで京都府、山形県という結果となった。これは、沖縄県では沖縄県性の多様性尊重宣言「美ら島 にじいろ宣言」が行われ、沖縄県・京都府ともにパートナーシップ条例を制定しているなど、自治体の動きが後押しをしていると考えられる。2020年12月末時点で66自治体まで広がりをみせているパートナーシップ条例は、人権保護や地域の意識改善のためにも一定の効果があると考えられる。

 

(図6)

 

(図7)

 

 

⑥LGBTQ+層の消費パワーをはかる22カテゴリーの市場規模は5.42兆円(推計)

一般家庭において消費金額が大きく、また消費者の嗜好によって商品選択の変更が比較的容易な22の商品・サービスカテゴリーを選択し、全体と比べたLGBTQ+層の当該カテゴリーにおける消費状況を加味して算定※2したところ、LGBTQ+層の市場規模は5.42兆円と推測される。2015年の調査時の5.94兆円からは減少したものの、日本全体の人口減少、ならびにコロナウイルスの感染拡大による家計消費全体が減少している中では、堅調な数字と言え、教育・資格関連費や、書籍・雑誌・新聞費が伸びている。ストレート層に比べ、医療・保険費(診療・市販薬・介護サービス・健康食品・サプリメント)がLGBTQ+層の方がより消費金額が大きいことが分かった。

 

※2 算定においては、総務省の家計調査(2020年)のデータを参照

(表1)

 

 

<参考:クラスター分析詳細>

調査方法:ストレート層5,685人にLGBTQ+に対してどのような考えを持っているのかを問う複数の質問を行い、因子を課題意識、配慮意識、生理的嫌悪、社会影響懸念、知識の5つに分けて分析。

 

●各クラスターの割合と特徴

・アクティブサポーター層(29.4%):課題意識が高く、積極的にサポートする姿勢がある。身近な当事者や、海外コンテンツを通して理解を深めた。

・天然フレンドリー層(9.2%) :知識のスコアは低いが、課題意識や配慮意識が比較的高く、ナチュラルにオープンマインド。

・知識ある他人事層(34.1%):知識はあるが、当事者が身近にいないなど、課題感を覚えるきっかけがない。現状維持派。

・誤解流され層(16.2%):少子化といった社会への悪影響を懸念するなど、誤解が多いため一見批判的だが、もともと人権意識はある。

・敬遠回避層(5.4%):積極的に批判はしないが、配慮意識が乏しく関わりを避ける。知識はある程度あっても、課題と感じていない。

・批判アンチ層(5.7%) :生理的嫌悪、社会への影響懸念が著しく高い。人種差別や環境問題などの社会課題に対しても興味を持たない。

 

(図8)

5つの因子のうち、受容×知識の2軸でマッピングした場合

 

各クラスターのデモグラフィックの特徴

アクティブサポーター層や天然フレンドリー層は女性の割合が約7割ずつと高く、若年層に多い傾向にあることが分かった。その一方、批判アンチ層は約8割が男性で、50代に多く見られた。

 

(図9)                                                                 (図10)

 

知識ある他人事層の特徴

知識ある他人事層の特徴として、配慮の姿勢はあるものの、「関心がない」という意見が多く、課題意識は高くない傾向となった。当事者が家族、友人、知人にいると回答した人が批判アンチ層に次いで少ないため、自分事として捉えられないという課題があると考えられる。

 

(図11)                    (図12)

 

<事前スクリーニング調査概要>

調査対象:20~59歳の個人60,000人

調査対象エリア:全国

調査時期:2020年12月17日(木)~18日(金)

調査方法:インターネット調査

 

<電通LGBTQ+調査2020概要>

調査対象:20~59歳の個人6,240人(LGBTQ+層該当者555人/ストレート層該当者5,685人)

調査対象エリア:全国

調査時期:2020年12月17日(木)~18日(金)

調査方法:インターネット調査

 

※ LGBTQ+層割合、人口構成比に併せて、都道府県、性別、年代(20-30代/40代-50代区切り)でウェイトバックをかけています。

 

以上

 

【事業に関する問い合わせ先】

電通ダイバーシティ・ラボ

伊藤、吉本、阿佐見

Email:diversity@dentsu.co.jp

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