全国40~60代男女3,000人および医師50人に聞く、体調変化や生活習慣に関する最新調査
コロナ禍で起きた体調変化TOP3 「目の疲れ」「体重増加」「体のだるさ」
2021-11-10
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
全国40~60代男女3,000人および医師50人に聞く、 新型コロナウイルス感染拡大の陰で起きている体調変化や生活習慣に関する最新調査 約6割の人が生活習慣の変化を実感 コロナ禍で起きた体調変化TOP3 「目の疲れ」「体重増加」「体のだるさ」 運動習慣は「減」↓、体重や間食は「増」↑ 医師の2人に1人が「脂肪肝」リスクに警鐘
一般社団法人日本生活習慣病予防協会は、新型コロナウイルスの感染が拡大して約1年半が経過した現在、新型コロナウイルス感染拡大前後の体調変化や生活習慣などについて、①全国の40~60代の男女3,000人を対象にした一般生活者、②各種健診を担当する全国の医師50人を対象とする調査を行いました。
当協会では、コロナ禍の生活習慣に関しては、昨年来何度か調査を行ってきました。今回の医師の調査では、脂肪肝にも焦点を当てました。脂肪肝は、飲酒習慣、運動不足、過食などと密接な関係がある一方、アルコールを飲まなくても発症する非アルコール性脂肪性肝疾患は、最近注目されている生活習慣病です。
今回の調査では、コロナ禍が人々の体調や生活習慣に大きな影響をもたらしているという実態、コロナ禍が脂肪肝のリスクも高めているということが分かりました。主な調査結果は以下となります。
―主な調査結果―
■新型コロナウイルス感染拡大後、体調不調を感じる人が増え、4人に1人は「体重増加」を実感
●新型コロナウイルス感染拡大前と比較し、現在の体調「よくない(2.1%)・あまりよくない(12.8%)」合計14.9%と3.6pt増
●新型コロナウイルス感染拡大後に起きた体調変化、TOP3は「目が疲れやすい」「体重が増えた」「体がだるい」
●新型コロナウイルス感染拡大後、新たに「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満症」などの生活習慣病を診断された人が増えた
■6割が生活習慣の変化を実感。運動不足や甘いもの・食べ過ぎが節制できず3人に1人は体重増加
●新型コロナウイルス感染拡大後、6割が生活習慣の「変化」。できなくなったことは「適度な運動」「ストレスをためない」「十分な睡眠」
●約3割が運動機会の「減少」。理由は「外出自粛」「おうち時間が増えた」に加え、「面倒になったから」
●「甘いものを控える」「食べ過ぎない」など食生活を節制できない悩みも発生、「中食」「インスタント食品」「間食」が増加
●運動不足と甘いものや間食が増えたせいか、3人に1人は「体重が増加」を実感。BMI25以上の「肥満」は全体の27.1%
■アルコールの摂取は二極化。お酒を飲む量が増えた理由は「ストレスが増えたから」
●新型コロナウイルス感染拡大前と比較し、お酒を飲む量が「増えた」(11.6%)、「減った」(25.3%)と二極化
●お酒を飲む量が増えた人の1日あたりの飲酒量は平均で2.8合。1日「3合以上」飲む人が42.0%も
●お酒の量が増えた理由は、「ストレスが増えた」「在宅時間が増えた」「時間をもてあます」「心配なことが増えた」が上位に
■医師も生活習慣病のリスクが上がっていると警鐘
●新型コロナウイルス感染拡大前と比べ、体重、糖代謝、脂質代謝の検査値が悪化している傾向があると指摘
●生活習慣病のリスクも増加していると感じる医師は全体の84%に
●医師の56%が「脂肪肝の疑い」が増加していると回答
①生活者調査… ●調査時期:2021年10月5日(火)~10月6日(水) ●調査手法:インターネット調査●調査対象:全国の40~60代 男女3,000人(男女年代均等割り付け)
②医師調査… ●調査時期:2021年10月15日(金) ●調査手法:インターネット調査●調査対象:全国の医師50人
※本調査では、小数第2位を四捨五入しています。そのめ、数字の合計が100%とならない場合があります。
一般生活者への調査結果
1.新型コロナウイルス感染拡大後、体調の変化を感じる人が増え、4人に1人は「体重増加」を実感
40代~60代の男女3,000人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大前と現在の体調や生活習慣に関する調査を行いました。まず、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年当時、体調が「ふつう」と答えた人は40.5%でしたが現在は38.1%に減少し、逆に体調が「よくない・あまりよくない」と答えた人は11.3%から14.9%へと増えています[図1-1]。
また、新型コロナウイルス感染拡大後(2020年4月以降)の体調変化では、「目が疲れやすくなった」(28.8%)、次いで「体重が増えた」(27.5%)と答えた人が、およそ4人に1人と多くなっています[図1-2]。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大後に新たに診断された病気としては、「高血圧症」(6.4%)や「脂質異常症(高コレステロール血症など)」(5.5%)、「腰痛症」(4.1%)のほか、「糖尿病」(3.0%)や「肥満症」(2.3%)など[図1-3]で、新型コロナ感染拡大以降、新型コロナ感染ではなく体調が悪化し、生活習慣病と診断された人が少なくないようです。
2.6割が生活習慣が「変わった」と回答、できなくなったことのTOP3は「適度な運動」「ストレスをためない」「十分な睡眠」
次に、新型コロナウイルス感染拡大前(2019年頃)と感染拡大後(2020年4月以降)の生活習慣の変化を聞きました。すると、63.0%が「変化した」(すごく変わった7.1%+変わった21.2%+少し変わった34.8%)と回答しています[図2-1]。
生活習慣が変化したと答えた1,891人に感染拡大後にできなくなった生活習慣を聞くと、「適度な運動」(35.1%)、「ストレスをためない」(29.3%)、「十分な睡眠」(21.2%)が上位に挙げられました。
また、「甘いものを控える」(15.7%)、「食べ過ぎないようする」(12.1%)など食事の節制ができなくなり、食事のコントロールに悩む人もいます[図2-2]。
3.新型コロナで、3割の人が「運動する機会が減った」。うち2割が「面倒になったから」運動をしなくなった
コロナ禍で変化した生活習慣のトップは適度な運動ができない運動不足でした。運動をする機会や回数を新型コロナ感染拡大前(2019年頃)と比べてもらうと、29.0%が「運動をする機会が減った」と答えました[図3-1]。運動する機会が減ったと答えた871人に、減った理由を聞くと「外出自粛などで外に出られない」(65.3%)が最も多く、次に「家にいる時間が増えた」(45.4%)が続き、「面倒になった」(19.7%)ことで運動をしなくなったと答えました[図3-2]。
4.新型コロナで、食習慣も変化。「中食」「インスタント食品」「間食」が増加、生活習慣が変わった人ではより顕著に
次に、新型コロナ感染拡大前(2019年頃)と現在の食生活の変化について聞きました。機会や頻度が減った食生活は断然「外食」で、65.4%が減ったと答えています。逆に利用が増えたのは、弁当、デリバリー、持ち帰りなどの「中食」(20.5%)、「インスタント食品」(16.5%)、「間食」(16.1%)でした[図4-1]。この結果を前述図2-1で生活習慣が変わったと答えた1,891人と生活習慣が変わらなかった1,109人を比較すると、「中食」が+15.8pt、「インスタント食品」は、+13.6pt、「間食」は+14.1ptと、生活習慣が変わっていない群に比べると大幅に増えていました[図4-2、3]。
5.新型コロナ感染拡大後、3人に1人は体重が増え、そのうち半数は3kg以上増加している
運動の機会が減り、インスタント食品や間食の利用が増えている現在、気になるのが体重の管理です。
新型コロナ感染拡大前(2019年頃)と現在との体重の変化を聞くと、半数弱は「変わらない」(47.7%)と答えていますが、3人に1人は「体重が増加」(36.4%)しています[図5-1]。
体重が増加した1,092人の内訳を見ると、最も多いのは「3kg未満の増加」(55.3%)。3割は「3~5kg未満の増加」(29.6%)で、「5kg以上増加」した人も15.1%います(調査対象者数3000人と比較すると5.5%が5kg以上の増加)[図5-2]。BMI※を聞くと、「肥満」にあたるBMI25以上の人は全体の27.1%でした[図5-3]。
BMI25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になり、30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するとされています(e-ヘルスネット、厚生労働省)。
※BMI(Body Mass Index)は、(体重kg)÷(身長m)÷(身長m)で計算します。この答が18.5以上25未満は普通体重、18.5未満なら低体重(やせ過ぎ)で、25以上の場合が肥満です。例えば、身長160cmで体重65kgの人を例にとると、65÷1.6÷1.6=25.39。この人はBMIが25.4なので、肥満に該当します。
6.飲酒量の変化は二極化。量が増えたいちばんの理由は「ストレス」
お酒を飲むと答えた2,146人に新型コロナ感染拡大前(2019年頃)と現在のお酒を飲む量の変化を聞きました。約6割は「変わらない」(59.3%)と答えていますが、4人に1人は飲む量が「減った」(25.3%)と答え、コロナ禍を機に「お酒を飲むのはやめた」(3.8%)人もいます。しかし一方で、1割は飲む量が「増えた」(11.6%)と答えており、コロナ禍でのアルコール摂取の二極化の傾向が表れています[図6-1]。
お酒を飲む量が減った理由は、「外食が減った」(35.1%)、「体のことが気になるようになった」(23.6%)が多く、「体重が増えたから」(12.9%)という人もいます[図6-2]。逆に飲酒量が増えた理由は「ストレスが増えたから」(48.8%)が最も多く、「心配なことが増えた」(24.4%)を挙げた人も4人に1人います[図6-3]。
前述図3-1で生活習慣が変わった1,891人のうち、お酒を飲む量が増えたと答えた238人に1日あたりの飲酒量を聞くと、平均で2.8合ですが、1日「3合以上」飲む人が42.0%もいます[図6-4]。
医師への調査結果
7. 新型コロナウイルス感染拡大前と比較し健診のスコアは、「体重」「糖代謝」「脂質代謝」の検査値が悪くなっている傾向があると指摘
内科や消化器内科の医師50人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大後の患者の健康状態について聞きました。健康診断や人間ドックなどを行う中で、患者さんの検査値が悪化していると感じる症状を挙げてもらいました。すると、「体重増加」(76%)、「糖代謝」(46%)、「脂質代謝」(44%)などが上位に挙げられました。また、医師の3人に1人は「肝機能」(34%)が悪くなっていると指摘しています[図7]。
8. 「生活習慣病のリスクも増加」と感じる医師は全体の84%に
また、新型コロナウイルス感染拡大後の生活変化によって、生活習慣病のリスクが高まっていると思うかと聞くと、84%の医師が「生活習慣病のリスクが高まっている」(そう思う28%+ややそう思う56%)と答えました[図8-1]。
今回の生活者調査では、コロナ禍で体重増加や肥満、食生活の乱れや甘いものや飲酒の増加などが見られましたが、これらの生活習慣から推察すると、生活習慣病の中でも「脂肪肝」のリスクが高まっていると考えられます。そこで、新型コロナウイルス感染拡大以降、脂肪肝の疑いを指摘することが増えているかと聞くと、56%の医師が「増えた」と答えました[図8-2]。
脂肪肝の疑いを指摘することが増えたと感じる理由を聞くと、「いわゆるコロナ太りを一定数見かけている」(内科)、「体重増加とともに肝機能が悪化していっている人が多い」(糖尿病・代謝・内分泌内科)など[図8-3]のような意見が寄せられました。
運動不足や食生活の乱れからくる体重増加、そこから派生する生活習慣病、脂肪肝のリスクも高くなっているといえます。
調査結果を踏まえて
■コロナ禍の体調変化として「目が疲れ」「体重増加」「ストレス」が浮き彫りに。
脂肪肝を含む生活習慣病のリスクも上昇!
今回の調査では、新型コロナ感染症の感染拡大(コロナ禍)前と比べて4人に一人は体調変化を感じており、実際に「高血圧症」「脂質異常症」「腰痛症」などの生活習慣病を新たに診断された方も少なくなく、コロナ禍が人々の健康を悪化させ、生活習慣病のリスクを高めている実態がわかりました。
コロナ禍の体調変化の上位は「目が疲れやすい」「体重が増えた」「体がだるい」でした。この中でも、回答者の3人に1人は「体重の増加」を実感しており、体重増加の理由は、コロナ禍での出来なくなったことの第1位であった「適度な運動」で、実際に約3割の回答者が「運動の機会が減った」というものでした。「甘いものを控える」「食べ過ぎない」など食生活を節制できない悩みも伺われ、「中食」「インスタント食品」「間食」が増加した実態も明らかになりました。
さらに、コロナ禍によりできなくなったことでは、「ストレスをためない」「十分な睡眠がとれない」が上位にあり、アルコールが増えた方の理由の第1位も「ストレスが増えた」ことであることから、コロナ禍がいかに人々にストレスを強いているかがわかる結果となりました。
今回、医師調査でフォーカスした脂肪肝に関しては、医師の56%が脂肪肝の疑いを指摘することが「増えた」と実感していました。脂肪肝は、肥満やメタボリックシンドロームの影響が大きいことから、今回の調査における「体重増加」が影響していることが推測されます。
脂肪肝は、日本人の4人に1人が罹患していると推定されており、最近はお酒をそれほど飲まず、肝炎ウイルスにも感染していない人にも脂肪肝は増えています。健康診断を受ける成人の2~3割が「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」、そのうち約1~2割が肝臓の障害がより進行している「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と言われています。
脂肪肝に限らず、生活習慣病の予防は、適正な体重を保つこと、そのためには適度な「運動」と「食事」が重要です。医師に脂肪肝あるいは、脂肪肝疑いを指摘されたら、ごはんやパン、麺などの主食は今より10%減を目安に糖質の摂取を減らし、逆に糖質の吸収を抑える食物繊維が豊富な野菜やキノコ、海藻類は積極的に摂取しましょう。ビタミンEやレシチンが含まれる納豆、コーヒーなどは脂肪肝の発生を抑え、また食物繊維が豊富な抗酸化力のあるポリフェノールも肝機能改善に役立つといわれています。
今回、体調変化として「ストレス」解消に「間食」の増加が、また実感として「目の疲れ」「体重増加」が浮き彫りになりました。間食で「目の疲れ」「体重増加」が予防できるに越したことはありません。近年注目されているのが、カカオポリフェノールが70%以上含まれた高カカオチョコレートで、海外ではダークチョコレートとして別格な存在になっています。高カカオチョコレートは、血流を改善させ、体重増加させにくい、ストレス軽減作用があることが医学論文でも多く発表されてきました1~3。ただし、間食としてのおすすめは1日25グラム以内です。
参考文献
1.Effects of milk vs dark chocolate consumption on visual acuity and contrast sensitivity within 2 hours: A randomized clinical trial. JAMA Ophthalmol. 2018; 136: 678-681.
2.Does cocoa/dark chocolate supplementation have favorable effect on body weight, body mass index and waist circumference? A systematic review, meta-analysis and dose-response of randomized clinical trials. Crit Rev Food Sci Nutr 2019;59(15): 2349-2362.
3.The effect of a single dose of dark chocolate on cardiovascular parameters and their reactivity to mental stress. J Am Coll Nutr. 2020; 39:414-421.
(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会)
■一般社団法人日本生活習慣病予防協会とは
日本生活習慣病予防協会は、生活習慣病の一次予防を中心に、その成因、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病に関する調査研究を行うことを目的に、2000年に設立。2012年より公益性を高めるため一般社団法人化致しました。設立当初より、健康標語『一無、二少、三多(いちむにしょうさんた)』(無煙、少食、少酒、多動、多休、多接)の健康習慣を提言し、2017年に1月23日を『一無、二少、三多の日』として記念日登録、2011年より毎年2月を「全国生活習慣病予防月間」として、『一無、二少、三多』の健康習慣の普及を図っています。役員は、医師を中心に構成されています。
http://www.seikatsusyukanbyo.com/
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