餅による窒息問題の解決に貢献 世界初、計測困難な筋活動を4次元嚥下シミュレータSwallow Vision®で解析

嚥下で重要な役割を持つ舌骨を動かす13種の筋活動を推定

meiji

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、株式会社みちわき研究所(代表取締役社長:道脇 幸博(兼 東邦大学客員教授))、畔上研究所(代表:畔上 秀幸(兼 公益財団法人名古屋産業科学研究所 研究部 上席研究員))と共同で、嚥下(物を飲み込む運動)中に活動した13種類の筋の筋種ごとの活動量を、世界で初めて※1コンピュータシミュレーションによって解析する技術を開発しました。本研究成果は2023年3月21日に国際学術誌Computer Methods in Biomechanics and Biomedical Engineering: Imaging & Visualizationに掲載されました。

 

■研究成果の概要

1.4次元嚥下シミュレータSwallow Vision®(スワロービジョン)と嚥下イメージングを組み合わせることで、食べ物などを飲み込む時に関与する器官と30種の筋の動きなどをシミュレーションして映像として確認できるモデルを開発しました。

2.嚥下に関与する30種の筋活動のうち、従来技術により計測できるのは3~4種のみでした。そこで本研究では、嚥下中に活動した筋の筋種ごとの活動量を推定する技術を開発し、嚥下で重要な役割を持つ舌骨※2を動かす13種の筋の活動を推定しました。

 

図1 Swallow Vision®のシミュレーションにより推定された嚥下時の筋活動

筋が活動していない時を青、強く活動している時を赤としてグラデーションで示しています。

 

研究成果の活用~高齢者の餅などによる窒息や、食道ではなく気管へ食べ物を送り込んでしまう誤嚥のメカニズムの解明に貢献~

 筋力低下などが見られる高齢者の、餅などの窒息や、食道ではなく気管へ食べ物を送り込んでしまう誤嚥のメカニズムを解明するためには、嚥下に関与する筋活動を詳細に分析する必要があり、本研究に取り組みました。本研究で開発された嚥下のシミュレーションモデルや、筋活動の解析技術を活用し、社会課題の解決に貢献してまいります。

 

Swallow Vision®を活用した取り組みについて~安全に食べて、すべての人に食べる喜びを~

 当社は食品を摂取するプロセスに関する研究の一つとして、世界で唯一である嚥下のコンピュータシミュレータSwallow Vision®の研究開発に取り組んでいます※3。これまでの実績としてSwallow Vision®の嚥下シミュレーションにより、子どもの窒息事故を検証しています※4

 今後もお客さまの健康のために有益な基礎的研究の知見を発信し、お客さま一人ひとりの健康と人生の充実に貢献してまいります。

 

※1当社の調査では、嚥下シミュレーションの先行研究として、嚥下に関与する器官のうち、特定の部分のみのシミュレーションを行うことで、それに関連する筋活動を推定できる技術はありましたが、舌、口蓋、咽頭、喉頭、食道の全ての器官と30種の筋を再現したシミュレーションモデルを開発し、計測や推定されたことのない種類の筋活動を推定したのは本研究が初めてとなります。

※2「のどぼとけ」のすぐ上に位置する馬蹄形の骨です。嚥下時に舌骨を上昇および前進させることが、誤嚥せずに嚥下するために重要です。

※3 Swallow Vision®の概要について

https://www.meiji.com/stories/9.html

※4 Swallow Vision®によるこどもの窒息事故のシミュレーションの取り組みについてhttps://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2021/0824_01/

 

論文内容

【タイトル】

Identification of muscle activities involved in hyoid bone movement during swallowing using computer simulation

(コンピュータシミュレーションによる嚥下時の舌骨の運動に関する筋活動の同定)

 

【背景と目的】

 嚥下は、多くの器官(舌、口蓋、咽頭、喉頭、食道)が連動して運動することで完遂されます。これらの器官の運動のメカニズム(筋の作用との因果関係)を解明するためには、嚥下に関わるどの筋が、いつ、どのくらいの力を発揮したかを調べる必要があります。しかし、従来の計測技術である筋電計測※5では、嚥下に関与する30種以上の筋のうちの3~4種の筋のみしか計測することができませんでした。

 そのため、本研究では、4D-CT※6をもとにして嚥下に必要な器官と30種の筋※7のシミュレーションモデルを開発し、その筋種ごとの活動をシミュレーションにより同定(推定)する技術を開発しました。

 

 【方法】

・4D-CT画像と解剖学の知見をもとに、器官と筋のシミュレーションモデルを開発しました。

・Swallow Vision®による嚥下シミュレーションに、最適値を探索する解析手法※8を適用して、筋活動を同定する技術を開発しました。

・本技術を用いて、嚥下中の舌骨を動かす13種の筋活動を同定しました。

・本シミュレーションの妥当性を確認するため、4D-CT画像と本シミュレーションの舌骨の運動の比較や、先行研究(筋電による計測や、他の手法によるシミュレーション)で示された筋活動と本研究の同定結果の比較を行いました。

 

【結果と考察】

・本シミュレーションで同定された筋活動により舌骨が適切に運動することを確認し、筋活動のタイミングや量は先行研究の知見と矛盾がありませんでした。

・本研究では、舌、口蓋、咽頭、喉頭、食道の全ての器官を再現したシミュレーションモデルを構築したことによって、先行研究では取得できなかった筋活動を初めて同定し、その筋の役割について新たな知見を得ました。

・本研究では、嚥下で重要な器官の一つである舌骨に関わる筋活動を同定しました。今後は舌や咽頭など他の筋の活動も明らかにすることを目指しています。

・本研究で開発された嚥下シミュレーション技術は、筋活動や嚥下のメカニズムを明らかにすることに役立つと考えられます。

 

※5 筋を動かす際に発生する微弱な電気信号をセンサーで計測することで、筋活動を調べる手法ですが、嚥下に関係する筋は腕や脚の筋と比べて細く重なり合っているため、計測には大きな制約があります。

※6 立体を撮影するCT(コンピュータ断層撮影)を高速に繰り返して動画像を得ることのできるCT装置やその撮影方法です。嚥下イメージングの手法として最新の技術です。

※7 30種の筋のうち、いくつかの筋は部分ごとに異なる制御が行われていると考えられるため、シミュレーションでもいくつかの筋を分割して個別に活動量を付与しています。その結果、40チャンネルの独立した筋活動を付与して、シミュレーションモデルを作成しています。

※8 関数の勾配を用いて最適な値(解)を得る勾配法のアルゴリズムを採用しました。本研究で提案した筋活動の同定方法では、舌骨の速度と座標を考慮する評価関数が定義され、これを最適化するための各筋の活動量を勾配法により求めます。

 

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