「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」が JST共創の場形成支援プログラム本格型に採択されました

東北大学

2024年3月6日

国立大学法人東北大学

東北大学大学院生命科学研究科の近藤倫生教授がプロジェクトリーダーを務める「ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点」が、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」昇格審査の結果、本格型として採択されました。

 

本拠点では、2030年までに自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等を巻き込んだ包括的なアプローチで、自然を回復させつつ発展する社会構築に向けた国際的な社会変革をリードします。自然の高度な科学的理解に基づく自然の価値の可視化、ネイチャーポジティブに資する基礎・応用研究の促進、自然資本への資金の流れの加速、産業の創出、社会のシステムや制度設計への貢献、専門知識を備え地域で活躍する人材の育成や起業促進等を、一体的かつ効率的に展開していきます。

 

これまでの「育成型」での成果を元に、来年度からは「本格型」として拠点ビジョンの実現に努めて参ります。

 

詳細な説明

研究の背景

自然は私たちの健康や豊かさ、幅広い社会経済活動の基盤であり、 世界の全GDPの半分は中程度〜高度に自然に依存しています(世界経済フォーラム 2020)。しかしながら、生物多様性は劣化し続けており、その喪失速度は回復困難なレベルと言われています。生物多様性の課題は、グローバル・地域・ビジネス全てに関わる複合課題であり、その解決には、多方面のステークホルダーを巻き込んだ大きな社会変革が必要となります。本プロジェクトでは「すべての人と社会が生物多様性の価値を認め、誇りを持ち、より豊かな恩恵を持続的に享受できるとともに、そのための行動をしている自然調和社会」を目指し、科学と社会変革で課題解決に取り組みます。

 

今回の取り組み

本拠点では下記の3つをターゲットとして設定し実現を目指します。

ターゲット1:自然の価値を見える化し持続的に高める

ターゲット2:ネイチャーポジティブに向けてお金が流れる仕組みを作る

ターゲット3:ネイチャーポジティブ発展社会を支える人を育てる

 

ターゲット1

ネイチャーポジティブ社会を支える最重要の科学的要素技術は、自然の価値を持続的に高め、その価値を可視化する技術です。東北大学は2019年に世界最先端の環境DNA(注1)観測網であるANEMONE (All Nippon eDNA Monitoring Network)(注2) を設立し、誰もが無料でアクセスできる専用のデータベース「ANEMONE DB」は比類ない生物多様性情報インフラへと成長しつつあります。

本拠点では、調査・観測技術の開発と観測システムの構築、求められる価値を生態系調査・観測データから評価するためのデータ解析・モデリング手法の開発、ANEMONE DBを含む情報インフラの開発・整備、データをもとに生態系の状態や価値を予測・制御する技術の開発などを行うことで、自然の価値の可視化を目指します。

 

ターゲット2

ネイチャーポジティブに向けてお金やリソースを流すには、自然の価値を経済に組み込み、消費者や企業、投資家にネイチャーポジティブを選択する価値と機会を提供することが重要です。TNFD枠組み(注3)や自然共生サイト(注4)、環境認証等の仕組みに活用可能な、生物多様性情報に基づく生態系の「よさ」の評価手法を開発、標準化、あるいは認証化し、地域のブランド価値向上やESG投融資の呼び込みにつなげる事例創出を目指します。

 

ターゲット3

ネイチャーポジティブを支える人材には、生態学の他、農学、水産学、工学、経済学や金融、社会学、人間関係学、国際関係学、経営や起業の実践など、幅広い分野の知識と応用、実践力が必要となります。社会変革を迅速に進めるため、企業・地域・大学・途上国など異なる対象者に対して、適材適所の人材が活躍できるよう、それぞれに有効な教育プログラムを提供する教育システムの開発を目標とします。

 

今後の展開

生物多様性はグローバル課題であるとともに、その解決には地域の自然に最も影響を与え依存する、地域社会が決定的役割を果たします(グローカル課題「Think Globally, Act Locally」)。また自然の恵みは多様なため、ステークホルダーも多様かつ多数となります。

本拠点は、大学という公共性、公益性を活かしながら、業種や国境を超えた連携・共創を促進し、グローカル課題であると同時に地域創生の鍵でもあるネイチャーポジティブ実現を支える社会共創のハブとして機能する社会共通インフラとしての役割を果たしていきます。

拠点開始時において、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体などを含む26の機関が参画しており、自然の高度な科学的理解に基づく自然の価値の可視化、ネイチャーポジティブに資する基礎・応用研究の促進、自然資本への資金の流れの加速および産業の創出、社会のシステムや制度設計への貢献、専門知識を備え地域で活躍する人材の育成や起業促進等を一体的かつ効率的に展開し、国際的な社会変革をリードしていきます。

 

 

本拠点への参画機関:

国立研究開発法人海洋研究開発機構、公益財団法人かずさDNA研究所、国立研究開発法人国立環境研究所、国立大学法人京都大学、国立大学法人筑波大学、国立大学法人東京大学、学校法人東邦大学、国立大学法人北海道大学、国立大学法人琉球大学、認定NPO法人アースウォッチ・ジャパン、アミタホールディングス株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社、神奈川県環境科学センター、株式会社KDDI総合研究所、一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン、株式会社佐久、一般社団法人サスティナビリティセンター、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合、東北緑化環境保全株式会社、公益社団法人日本山岳会、日本生命保険相互会社、日本電気株式会社、日本郵船株式会社、パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社、南三陸町

 

 

用語説明

注1.  環境DNA

土壌や水に含まれる細胞片や糞の中のDNAを活用して生物を調査する方法。「バケツ一杯の水」のみによってどこに住む生物の種類を調べたり、分布を調べることができるため、革命的な生物調査法と考えられています。

注2.  ANEMONE

「All Nippon eDNA Monitoring Network」の略。環境DNA技術を利用して我が国において構築された生物多様性観測のネットワーク。従来の生物多様性観測とは桁違いの多地点、高頻度で多様な生物を網羅した観測が可能になっています。近藤倫生教授が2019年に設立、東北大学に意思決定機関としての運営委員会を設置しています。観測には産官学に加えて、市民も参加しており、観測データは誰もがアクセスできる専用のデータベース「ANEMONE DB」において無料で公開されています。

注3.  TNFD枠組み

「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略。自然の回復に向けた企業等の積極的なコミットメントを促進すべく、企業の生物多様性・自然資本に関する情報開示を実施する枠組みです。

注4.  自然共生サイト

民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する区域のこと。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM」として国際データベースに登録されます。

 

▶︎ ANEMONE [環境DNAを利用した生物多様性観測網]

https://anemone.bio/

 

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