尿酸値の高い状態によって 傷ついた血管の治癒能力低下が引き起こされることを示唆

第52回日本免疫学会学術集会および第57回 日本痛風・尿酸核酸学会総会にて発表

meiji

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)および鳥取大学 医学部 ゲノム再生医学講座再生医療学分野の經遠 智一助教らの研究グループは、尿酸値が高い高尿酸血症の状態で生じる尿酸塩結晶※1が血管の細胞に与える影響に関する研究成果を、2024年1月17日~19日に開催された「第52回日本免疫学会学術集会」および2024年2月29日~3月1日に開催された「第57回日本痛風・尿酸核酸学会総会」にて発表しました。本研究成果は昨年度開催された「第51回日本免疫学会学術集会」および「第56回日本痛風・尿酸核酸学会総会」に続き、さらなる成果を追加した続報としての発表となります。

 本研究により、血管に尿酸塩結晶が沈着すると、異物に反応する好中球※2がその沈着部分に集まるように促され、血管の炎症反応を引き起こす可能性が示唆されました。さらに血管の創傷治癒能力の低下を引き起こし、これが血管組織での炎症を引き起こしたり悪化させたりすることに関与している可能性が示唆されました。一連の研究から、高尿酸血症の状態が動脈硬化の直接的なリスク因子になり得ることがより強く示唆されました。

 

<研究成果の概要>  尿酸値が高い状態で生存していた血管細胞は、好中球などの免疫細胞を呼び寄せることで、傷ついた血管の治癒能力の低下を引き起こし、血管組織の炎症反応や炎症の増悪に関与している可能性が示唆されました。

 

   創傷治癒試験について顕微鏡で観察した様子の動画:

   https://www.meiji.co.jp/movie/corporate/pressrelease/2024/0314_01_meiji_pr.html

 

<今後の活用>

 高尿酸血症がもたらす人への影響は、耳にすることが多い痛風だけにとどまらず、本研究で着目している動脈硬化や、メタボリックシンドローム、心臓病、腎臓病、尿路結石などのさまざまな疾患にもおよぶと報告されています。従って、尿酸値を正常な値に保つことは、多くの疾患を予防するためにも重要であると考えられます。

 当社は今後もお客さまの健康維持のために有益な基礎的研究の知見を発信し、「meijiらしい健康価値」を提供してまいります。

 

※1 尿酸塩結晶:血中の尿酸が高濃度になり溶けきれなかった一部が結晶化したもの

   尿酸塩結晶を添加した際の血管の細胞を顕微鏡で観察したところ、細胞が次々に死滅していく様子を確認しております。

  https://www.meiji.co.jp/movie/corporate/pressrelease/2022/1213_01_urate_crystals.html

※2 好中球:白血球の一種で、主に体内の異物を取り込み排除することで免疫機能において重要な役割を有する

 

<発表内容>

【演題名】

「尿酸塩結晶がヒト血管内皮細胞へ及ぼす直接的影響の詳細な解析」

 

【背景と目的】

 血中尿酸値が7 mg/dL(=70 µg/mL)を超えた状態は高尿酸血症と呼ばれ、この状態が持続すると血中に溶けきれなかった尿酸が結晶化し、尿酸塩結晶として関節組織に沈着することで痛風の原因となります。近年では尿酸塩結晶が血管にも沈着することが明らかとなり、関節以外での尿酸塩結晶の影響が懸念されています。これまでにヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶を125 µg/mLの濃度で添加すると炎症などに関連したケモカイン遺伝子発現が上昇することを報告してきました※3

 そこで本研究では、高尿酸血症によって生じる尿酸塩結晶が血管の細胞に及ぼす影響について詳しく評価しました。

 

【方法】

 ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125 µg/mL)を添加して3日後に生細胞を分取し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。その結果、非添加群に比べて、細胞遊走※4に関連する遺伝子群の発現量が増加し、細胞増殖に関わる遺伝子群の発現量が減少していました。これらを踏まえて以下の検証実験を行いました。

<細胞遊走遺伝子発現量増加の検証実験>

 ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125 µg/mL)を添加した細胞上清をヒト末梢血由来好中球に添加し、細胞遊走試験を行いました。

<細胞増殖遺伝子発現量減少の検証実験>

 ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125 µg/mL)を添加し、1日後の細胞数をカウントしました。さらに一層の内皮細胞シートに傷をつけた(創傷)状態で尿酸塩結晶(125 µg/mL)を添加し、創傷治癒能力について評価しました。

 

【結果と考察】

 ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125µg/mL)を添加した細胞上清をヒト末梢血由来好中球に添加することで、遊走する好中球の細胞数が増加しました(図1)。一方で、ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125µg/mL)を添加することで、細胞増殖が抑制されました(図2)。さらに創傷部分(スクラッチ)の回復が抑制されました(図3)。これにより細胞遊走が引き起こされること、および細胞増殖能が低下することで創傷治癒能力が低下している可能性が示唆されました。

 

【結論】

 本研究成果より、高尿酸血症によって尿酸塩結晶が血管組織に沈着すると、以下の2つの側面から血管の細胞に直接的な影響をもたらし得ることが示唆されました。

 

 細胞死を起こさない濃度において、

①好中球を含めた多くの免疫細胞の遊走を介して炎症反応を引き起こす。

②細胞の増殖を抑制し、血管の創傷治癒能力の低下を引き起こす。

 今回、尿酸塩結晶の血管への影響について、細胞評価においても遺伝子発現量変化と一致する結果を確認することができました。したがって、ヒトの体内において、高尿酸血症によって生じた尿酸塩結晶が細胞の傷害を介して動脈硬化のリスク因子となり得ることがより強く示唆されました。

 



 

※3 2022年12月13日プレスリリース「尿酸値が高いと血管の炎症を引き起こす可能性を発見~第51回 日本免疫学会学術集会にて 尿酸塩結晶が血管の細胞に与える影響と遺伝子発現の変化について発表~」

https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2022/1213_01/index.html

※4 遊走:細胞が炎症部位などの目的の場所に移動し、さらに炎症を増悪させることが示唆されている

 

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

尿酸塩結晶添加群キャプチャ

図1図2

図3

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