5G携帯電話基地局からの電波強度を明らかに
公的研究機関として世界で初めて5G基地局周辺の電波ばく露レベルを測定
2024年7月5日
ポイント
■ 5Gで使われている二つの周波数帯(6 GHz以下と28 GHz帯)の電波ばく露レベルを測定
■ 公的研究機関が中立の立場で商用サービス中の5G基地局周辺の電波強度を測定したのは世界で初めて
■ 5G基地局からの電波ばく露レベルは従来の携帯電話システムと同程度又はそれ以下であることが明らかに
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)は、我が国で初めてとなる大規模な電波ばく露レベルの長期測定を2019年から行っており、生活環境における電波ばく露レベルのデータを取得しています。
この度、NICTは、商用運用されている第5世代移動通信システム(5G)携帯電話基地局からの電波ばく露レベルを複数地点で測定しました。これまでに携帯電話事業者自身による測定例等はあるものの、公的研究機関が中立の立場で商用サービス中の5G基地局周辺の電波強度を測定したのは世界で初めてです。5Gで使われている二つの周波数帯、6 GHz以下(FR1)と28 GHz帯(FR2)について測定したところ、従来の携帯電話システム(4G)のレベルと同程度又はそれ以下であることが分かりました。
引き続き、長期定点測定等を通じて、5Gが普及しつつある中で我が国の電波ばく露レベルの長期、大規模測定を進めていきます。
背景
我々の身の回りにある無線機器からの電波は、電波防護指針に基づき、人体に悪影響を及ぼさない範囲で利用されています。他方、海外では、5G携帯電話基地局からの電波による健康不安が5Gの展開の障害となっているという事例もあり、我が国においても一部で不安の声が上がっています。
こういった不安の理由の一つとして、確実に身の回りに存在している電波が目に見えないため、どのような強さなのか分からないということが挙げられます。そこで、様々な発生源からの電波環境を網羅的に把握してデータを蓄積し、電波ばく露レベルの情報を広く共有することが求められています。
このため、NICTでは、電波環境の測定技術を有する公的研究機関として、我が国で初めてとなる大規模な電波ばく露レベルの長期測定を2019年に開始しました。定点測定、スポット測定、携帯型測定器による測定、電測車による広域測定等を組み合わせることで、データの偏りを抑え、大規模かつ詳細な電波ばく露レベルのデータを取得しています。
今回の成果
NICTは、5G携帯電話基地局からの電波ばく露レベルのスポット測定を都内及び近郊で行いました。これまでに携帯電話事業者自身による測定例等はあるものの、公的研究機関が中立の立場で商用サービス中のFR1及びFR2の5G基地局周辺の電波強度を測定したのは世界で初めてです。FR1は東京都内及び近郊 51か所(51地点)、FR2は東京都心の3か所(15地点)で測定を行いました。
図1 28 GHz(FR2)測定風景
FR1の測定には電界プローブを用いて、我が国の電波法施行規則で定められた測定手順に準拠した測定を行いました。FR2の測定には電界プローブの代わりに28 GHz測定用アンテナを用いました(図1参照)。さらに、測定場所付近の携帯電話端末(スマートフォン)にデータをダウンロードしながらの測定も行いました。FR1は6 GB、FR2は10 GBのデータを約1分間ダウンロードしました。測定で得られたデータを統計処理し、過去の測定結果と比較しました。
図2 電波ばく露レベル(中央値)の測定結果
(なし;スマートフォン電源オフ、 あり;スマートフォンにデータをダウンロード)
データのダウンロード有無の比較では、データをダウンロードした時の方が、レベルはFR1で約70倍、FR2で約1,000倍大きくなることが分かりました(図2参照)。また、従来の携帯電話システム(4G)の基地局の過去の測定結果と比較すると、データをダウンロードした時でも、レベルは同程度又はそれ以下であることが分かりました(図2参照)。
いずれの場合も、電波防護指針に対して低いレベル(中央値で約1万分の1以下)です(図2参照)。また、今回得られた電波ばく露レベルは、最近の海外での5G FR1基地局の測定結果と比べて12 %程度でした。
これらの研究成果は、2024年4月に国際学術論文誌(Bioelectromagnetics)の電子版に掲載されるとともに、2024年5月に開催されたEMC Japan/APEMC Okinawaで発表されました。
今後の展望
今回の成果は、我が国で5Gが導入されて初めての測定結果であり、今後更なる5Gの普及によって電波ばく露レベルがどのように変動するかを明らかにするための参照データとなるものです。そのため、長期的に(少なくとも2040年まで)測定を継続し、結果を学会発表等で公表していきます。また、海外における電波ばく露レベルの調査活動とも連携し、国際的に相互比較可能な電波ばく露レベル測定データの取得・蓄積・活用の実現に取り組みます。
論文情報
掲載誌: Bioelectromagnetics
DOI: 10.1002/bem.22505
URL: https://doi.org/10.1002/bem.22505
論文名: Electromagnetic field exposure monitoring of commercial 28 GHz Band 5G base stations in Tokyo, Japan
著者: Sen Liu, Kazuhiro Tobita, Teruo Onishi, Masao Taki, and Soichi Watanabe
国際会議: EMC Japan/APEMC Okinawa 2024
論文名: Electric Field Measurements Around 5G FR1 Mobile Phone Base Stations
著者: Kazuhiro Tobita, Teruo Onishi, Sen Liu, Masao Taki, and Soichi Watanabe
関連する過去の報道発表
・2021年12月7日付け
「生活環境における携帯電話基地局等の電波強度を明らかに」
https://www.nict.go.jp/press/2021/12/07-1.html
なお、本研究は、総務省委託研究「電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」(JPMI10001)として行われました。
本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。
このプレスリリースには、報道機関向けの情報があります。
プレス会員登録を行うと、広報担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など、報道機関だけに公開する情報が閲覧できるようになります。
このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部
- 所在地 東京都
- 業種 その他情報・通信業
- URL https://www.nict.go.jp/
過去に配信したプレスリリース
外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現
10/15 14:00
映像の中の画像由来、音楽由来の感情に関連する脳部位を特定
10/3 14:00
世界初、量子コンピュータを利用した屋外多数同時接続実験に成功
7/25 14:00
基準光配信と光コムを用い、光源一つで大容量コヒーレント光通信に成功
7/24 14:00
5G携帯電話基地局からの電波強度を明らかに
7/5 14:00
スマホ上でも高速動作可能な21言語の高品質ニューラル音声合成技術を開発
6/25 14:00
迷うことにも意味がある
6/13 14:00
国際無線通信規格Wi-SUNが採用された「IoTルート」用無線標準規格が発効
6/12 14:00
セキュリティ情報融合基盤 “CURE” のカスタム通知機能を開発
6/11 14:00
女性を対象とした令和7年度採用パーマネント研究職等の公募を開始
5/13 14:00