日本の子ども達の体水分状態はやや不足気味
新潟大学附属新潟小中学校の子ども達を対象とした調査より
日本の子ども達の体水分状態はやや不足気味 -新潟大学附属新潟小中学校の子ども達を対象とした調査より-
詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。
新潟大学教育学部の天野達郎准教授、早稲田大学スポーツ科学学術院細川由梨准教授らの研究グループは、新潟大学附属新潟小学校・中学校の児童・生徒の皆さんおよび保護者の方のうち研究参加に同意してくれた合計349名を対象に、春(4月)と夏(7月)に尿検査を行い、子ども達の体水分状態(尿浸透圧や尿比重)を調べました。その結果、世界の子ども達の傾向と同様に日本の子ども達の多くも体水分状態がやや不足気味で、その傾向は夏より春に顕著になることが分かりました(起床時の尿の尿浸透圧が水分不足の基準値を超える人の割合が春に66%、夏に50%)。この結果は、夏の脱水予防はもちろん、暑さが顕著ではない季節にも、子ども達のこまめな飲水が必要になることを示しています。
本研究成果のポイント
◆ 日本の子ども達数100名を対象に体水分状態の季節変化を尿から調べた。
◆ 春夏ともに、多くの子どもで体水分不足となる基準を超えていた。
◆ この傾向は特に春に顕著であった。
【研究の背景】
体水分状態は身体機能の恒常性や健康に深く関わるため、適切な範囲に維持することが重要です。体水分状態は、尿の浸透圧や比重を調べることで知ることができます。近年の研究で、世界各国の子ども達の体水分状態が報告されており、子ども達の多くは体水分状態がやや足りていないことが明らかになっています。これは、夏の脱水や、夏以外の季節でも免疫や腎機能といった身体の健康全般に関わることです(将来的な健康リスク含む)。体水分状態は季節、人種、民族、食文化、地理的・環境要因など多くの影響を受けると考えられますが、意外にも日本の子ども達の体水分状態はこれまで報告されていませんでした。そこで本研究では、日本の子ども達の体水分状態を季節の影響と共に明らかにすることを目的としました。
【研究の成果】
春の起床時サンプルの尿浸透圧は903±220 mOsm/L(浸透圧の単位)、夏のサンプルは800±244 mOsm/Lであり、春は夏より統計的に高く、いずれもやや水分不足だと判断される基準値(800 mOsm/L)を超えていました。尿サンプルを提供してくれた子どものうち春は66%、夏は50%がこの基準値を超えていました。学校での測定は学校活動のスケジュール的にも難しいこともあり、サンプル数が減ってしまいましたが、その平均値は、起床時同様に体水分不足の基準を超えていました(春:885±225、夏:859±247 mOsm/L)。これらの測定値に男女差は認められませんでした。
尿の色から体水分状態を判断できれば、適切な飲水行動につながります。脱水予防の観点では、体の水分が足りていない時に、それを尿の色から自ら判断できることが重要です。尿カラースケールは色が濃いほど値が高くなり、8段階のうち4以上が体水分不足を示します。しかし、尿浸透圧が800 mOsm/Lを超えていた子ども達のうち、実際に尿カラースケールで4以上を選択した人の割合は多くて30%程度でした。
以上の結果は、世界的な傾向と同様に、日本の子ども達もやや体水分状態が足りていないこと、それは夏より春に顕著になることを示しています(夏は日常的な飲水量が増えていると考えられます)。子ども達自身が尿の色から適切に体水分不足を判断することは難しいようです(ただし、子どもでも判断可能とする海外の研究もあります)。
【今後の展開】
本研究結果を基に、子ども達の体水分状態をどのように改善できるか、その解決策を打ち出すことが重要です。本研究グループではすでに、子ども向けの教育動画「からだと水分」を製作して、公開しています(https://www.niigata-u.ac.jp/news/2024/614025/)。この公開に先立ち、子ども達の飲水意識の現状を調査しており、この動画を視聴することで実際に子ども達の飲水行動の理解につながるのかどうかも調べています。これらの研究成果も追って公開する予定ですが、子ども達の飲水意識と飲水行動を改善して、夏の脱水予防はもちろんのこと、暑くない時期にも体水分状態を良好に維持するマネジメント力の向上につなげていきたいと考えています。
【研究成果の公表】
本研究成果は、2024年6月14日、科学誌「Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism」に掲載されました。
論文タイトル:Seasonal changes in hydration in free-living Japanese children and adolescents
著者:Tatsuro Amano, Kotaro Sato, Junto Otsuka, Yumi Okamoto, Shota Takada, Hanano Kato, Shotaro Yokoyama, Shoma Oshima, Yuri Hosokawa, Naoto Fujii, Toby Mündel, Glen P. Kenny, Takako Hiwa, and Yoshimitsu Inoue
doi: 10.1139/apnm-2023-0464
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