AI・量子共通基盤の研究開発を開始
~国内10機関が連携し、量子コンピューターの利用促進へ~
2025年8月1日
早稲田大学
AI・量子共通基盤の研究開発を開始
~国内10機関が連携し、量子コンピューターの利用促進へ~
詳しくは、早稲田大学ウェブサイトをご確認ください。
【発表のポイント】 ●NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究事業(g5-3)量子コンピューターの産業化のためのミドルウェア開発」の採択を受け、国内の産官学10機関で量子技術の専門的知識が無くても利用できる「AI・量子共通基盤」の構築を目指した研究開発を開始します。
●早稲田大学は、AI・量子共通基盤の中でも最適化アプリケーションの高性能化に関する統合開発環境を研究開発します。 |
学校法人早稲田大学(所在地:東京都新宿区、理事長:田中愛治)は、2025年7月31日にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に採択された「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(g5-3)量子コンピューターの産業化のためのミドルウェア開発」(注1)の取り組みにおいて、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所、株式会社セック、株式会社Jij、株式会社QunaSys、国立研究開発法人産業技術総合研究所、学校法人慶應義塾、国立大学法人大阪大学、学校法人芝浦工業大学とともに、AI・量子共通基盤の研究開発を実施します。
量子技術を巡る国際競争が激しさを増すなか、内閣府が掲げる「量子未来社会ビジョン」(注2)においても、量子技術の社会実装や産業化の強化が重要方針として示されています。本研究開発を通じて2027年度末までに、量子コンピューター利用の敷居を下げ、さまざまな産業分野で量子技術を手軽に活用できる技術を確立します。これにより、AIと量子コンピューターの計算資源を融合し、量子技術に関する専門的な知識がなくても利用できる「AI・量子共通基盤」の構築を目指します。
なお、早稲田大学の代表研究者は、理工学術院の戸川望(とがわ のぞむ)教授です。
(1)背景と課題
・2019年のGoogleによる量子超越の発表以降(注3)、世界的に量子コンピューターの技術が進化し、主要IT企業が実機配備やクラウドサービスの提供を始めるなど量子コンピューターの産業化が加速しています。
・日本においても内閣府が「2030年までに量子技術の利用者を1,000万人、国内生産額を50兆円にする」を目標に掲げており、エネルギーや製造・物流、材料開発などの分野でのユースケース開拓に向けた取り組みが進められています。
・その中でも特に、量子コンピューターの利用者には高度な専門性が必要であることや、プロバイダーが量子コンピューターを安定的に運用する技術が未成熟であることなど、量子コンピューター市場の活性化に向けては多くの障壁があります。
■利用者が抱える課題
・現状、量子コンピューターの利用者は、量子情報や量子力学のような高度で専門的な量子技術の知識が必要です。量子コンピューター市場の活性化に向けて利用者を拡大するためには、専門的な知識を持たなくても直感的に利用できるプラットフォームが不可欠です。
・量子コンピューターには超伝導方式・中性原子方式・光方式など多様な方式が存在します。さまざまなクラウドサービスの中から、ユースケースに応じて適切な計算資源を選択することができる仕組みが必要です。
■プロバイダーが抱える課題
・量子ビットの状態が非常に不安定で、量子コンピューターを長時間にわたって安定稼働させることが困難であるため、安定的に運用する技術を成熟させる必要があります。
(2)本研究開発について
■概要
量子コンピューターの産業利用加速に向け国内10機関で以下の2つの共同研究テーマに取り組みます。共同研究では、産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(注4)に設置された量子・古典ハイブリッドコンピューティングのテストベッド(以下 ABCI-Q)を活用し、研究開発を推進していきます。
図1 本研究開発の概要図
①計算資源を最適に割り当てるミドルウエア技術の開発
量子コンピューターの機能が抽象化されたAPIや、量子技術の知識を学習した生成AIを導入した統合開発環境(以下 IDE)を構築し、利用者が専門的な知識を持たなくても利用できるプラットフォームを開発します。また、AI・量子共通基盤の利用者がアプリケーションを実行する際に最適な計算資源を自動的に割り当てるロードバランシング技術(注5)の開発にも取り組みます。
さらに、プラットフォーム上で開発したアプリケーションを多数の利用者へ提供するためのアプリケーションサービスプロバイダー(以下 ASP)を開発し、量子コンピューターの利用者拡大を促進させます。
②量子コンピューターの運用技術の開発
各量子コンピューターの運用に必要となるテレメトリデータの抽出と蓄積方法を開発し、量子コンピューターの運用技術を確立します。また、極低温冷凍機や制御装置といった周辺機器のテレメトリデータを基に障害検知・管理技術を確立します。
(3)本研究開発の推進体制について
本研究開発は、KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所がプロジェクト全体のマネジメント及び技術要件定義の統括を行い、産学官による研究チームで推進します。
この中で、早稲田大学は、研究開発テーマ「計算資源を最適に割り当てるミドルウエア技術の開発」のうちIDEプロトタイプのAPI開発を担当します。特に、最適化アプリケーションの高性能化に関するAPIの研究開発を行います。本研究開発を通して、通信分野をはじめ、量子コンピューターのユースケースの探索や創出に貢献します。
表1 参画する研究機関と役割
参画機関 | 役割 |
KDDI株式会社 |
・プロジェクト全体の統括、および事業開発 ・ASPの開発 |
株式会社KDDI総合研究所 |
・プロジェクト全体の技術要件定義 ・AI・量子資源を最適に割り当てる技術の実装 ・量子プログラムを生成するAIモデルの開発 |
株式会社セック |
・量子システムの障害検知技術および運用システムの開発 |
株式会社Jij |
・最適化計算の精度推定技術等の開発 ・IDEプロトタイプの開発 ・最適化パッケージの実装 |
株式会社QunaSys |
・化学計算の精度推定技術等の開発 ・消費資源推定技術の開発 ・化学計算パッケージ開発 |
国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
・ABCI-Q環境の提供、および環境に関する情報提供 ・ジョブスケジューラの開発 |
学校法人早稲田大学 |
・IDEプロトタイプのAPI開発 |
学校法人慶應義塾 |
・IDEプロトタイプのAPI開発 |
国立大学法人大阪大学 |
・量子システムの障害検知技術の開発 |
学校法人芝浦工業大学 |
・量子プログラムを生成するAIモデルの開発 |
(4)研究者のコメント
早稲田大学は、これまでもKDDI株式会社とKDDI総合研究所等と共同して、通信分野をはじめ、量子コンピューターのユースケースの探索や創出に取り組んできました。さらに具体的なユースケースのもと、最適化アプリケーションの高性能化に関して多くの要素技術を創出してきました。本研究開発では、これまでの研究開発成果を高度化するとともに、これらの成果を統合開発環境に組み込み、量子コンピューターのユースケース探索や拡大を通して、量子未来社会ビジョンの実現に貢献したいと思います。
(5)用語解説
(注1)2025年3月26日「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に係る公募について
(注2)出典:2022年4月22日「量子未来社会ビジョン ~量子技術により目指すべき未来社会ビジョンとその実現に向けた戦略~」(内閣府 統合イノベーション戦略推進会議)
(注3)2019年のGoogleによる量子超越の発表
Quantum supremacy using a programmable superconducting processor | Nature
(注4)産総研:量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター
(注5)ここでのロードバランシングとは、多くのリクエストを複数の計算機に均等に分散させるだけではなく、利用者の要件や計算機の状態を加味し、アプリケーションの実行に最も適した計算機を選択する技術のこと。
(6)参考
量子コンピューターに関する過去の報道発表
・2025年2月27日ニュースリリース KDDI、KDDI総合研究所、Jij、QunaSys、早稲田大学、AI・量子共通基盤の構築に向けパートナーシップ締結
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 早稲田大学
- 所在地 東京都
- 業種 大学
- URL https://www.waseda.jp/top/
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