2023年度、累計211万人超のストレスチェックデータを分析

キャリア教育、上司のリーダーシップなどの項目が大きく改善

2024年7月25日

株式会社ドクタートラスト

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 株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者211万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。

 今回は2023年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、47万人超の有効回答結果を分析し、従業員のストレス度合の変化を調査しました。

 

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【解説】「働く人々のストレス状況」を2023年度のストレスチェック結果から分析!約47万人のデータの分析結果を専門家がわかりやすく解説します!(解説:ストレスチェック研究所 主席アナリスト 服部恭子)

 

 

結果の要約

 2023年度のストレスチェックでは、以下の特徴がみられました。

 

・ 不良な結果となったのは「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」「仕事の質的負担」「仕事の量的負担」

・ 良好な結果となったのは「職場のハラスメント」「抑うつ感」「役割明確さ」

・ 2022年度と比較して、「キャリア形成」「上司のリーダーシップ」「多様な労働者への対応」「ほめてもらえる職場」「公正な人事評価」の5尺度が大きく改善された

 

はじめに

 ストレスチェック制度は、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられています。制度開始から8年が経過し、当初の設問数57項目版ではなく、ワーク・エンゲイジメントなどが測定でき、職場環境改善により効果的な80項目版が主流となりました。ドクタートラストでも、設問数80項目版を提供し、国内トップクラスの受検者数を誇っています。

 今回の調査では、2023年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した479,612人の最新結果、経年比較の分析結果をご紹介します。

 

全体の概要

 

1. 受検率と高ストレス者率~高ストレス者率は13%台で安定しているが、10%未満を目指してほしい~

図1

 

 図1は、2019年度~2023年度の受検率および高ストレス者率です。受検率とはストレスチェック受検対象者に対して何人が受検をしたかを表した割合です。それぞれの受検率は、各年度にドクタートラストでストレスチェックサービスを利用した受検者における受検率を示しています。

 2023年度の受検率は87.5%で、前年度と比較し0.3%減少していますが、2020年度以降87%を超え、高受検率を維持しています。

 高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、「ストレスの自覚症状が高い」または「自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポートの状況が著しく悪い」とされた人を指します。また高ストレス者率は、受検者に対して何人が高ストレス者だったかを表した割合です。2022年度の高ストレス者率が13.8%であるのに対し2023年度は同13.7%で大きな変化は見られませんでした。一方で、厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 実施マニュアル」では、高ストレス者の判定基準として、高ストレス者の割合が受検者全体の10%程度となるように設計されています。

 会社の状況や業務の特性、プライベートな要因などストレスの原因となりうるものは多岐にわたる現代においては、一人ひとりが自分にあったセルフケアを身につけ、企業においては産業医や保健師、外部相談窓口の設置や各種研修の実施など、個人としても会社としても対策を継続していくことが必要であるといえるでしょう。

 

2. 各尺度の経年変化(不良尺度)~仕事の質・量のストレスが私生活にまで影響を及ぼしている~

 ストレスチェックは、80の各設問に対して「そうだ」、「まあそうだ」、「ちがう」、「ややちがう」の4択形式で回答し、全42尺度を算出します。

図2

 

 図2は、2023年度の不良10尺度を示したグラフです。数値は大きいほど不良(好ましくない)、小さいほど良好(好ましい)を示しています。

 2023年度に最も不良だったのは「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」で、以下「仕事の質的負担」「仕事の量的負担」と続きました。この並びは2022年度と比較して変化はありません。

「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」は、設問「仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している」への回答状況から算出します。

 ドクタートラストでは、「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」が最も不良な尺度であるのは、新型コロナウイルス感染症によるイベントの自粛や制限によって、プライベートを充実させるのが難しいためだと考えてきました。しかし新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されたことによって、プライベートを充実させやすい環境になってなお最も不良な尺度であることから「仕事の量的負担や質的負担を原因とするストレスが私生活にまで悪影響を及ぼしていると感じている人が多い」と推察します。

 

3. 各尺度の経年変化(良好尺度)~セクハラは減少したもののハラスメントの件数は変わらない~

図3

 

 図3は2023年度良好だった10尺度を、平均点が低い(好ましい)順に示したグラフです。

 2023年度も2022年度に続き「職場のハラスメント」が最も良好な尺度となりました。この尺度は、設問「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ・パワハラを含む)」への回答状況から算出しています。

 2022年4月から規模を問わずハラスメント対策が義務化されており、ストレスチェックの結果では、良好傾向に推移しています。一方では、全国の企業と労働者を対象に2023年12月~2024年1月に実施した厚生労働省の調査(※)によると、過去3 年間の、労働者から企業側への各ハラスメントの相談件数については、セクハラ以外では「件数は変わらない」の割合が最も高く、セクハラのみ「減少している」が最も高いという結果がでています。引き続き、会社としても個人としてもハラスメントへの意識を高めるとともに、ハラスメントセミナーの実施など、さまざまな施策への継続的な取り組みが必要といえるでしょう。このほか「抑うつ感」「役割明確さ」さらに「身体愁訴」なども上位に挙がりました。

(※)厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」

 

経年で特に差が生じた5つの尺度

 2023年度の結果のうち、2022年度とくらべて最も大きな差が生じた5尺度をご紹介します(括弧内の数値は2022年度にくらべて、どれくらい良好に変化したかを示しています)。

 

【良くなった項目】

① キャリア形成(+1.5%)

② 上司のリーダーシップ(+1.4%)

③ 多様な労働者への対応(+1.2%)

④ ほめてもらえる職場(+1.0%)

⑤ 公正な人事評価(+0.9%)

 

なお2023年度は全体的に良好傾向で、大きく「悪化した項目」はありませんでした。

 

1. キャリア形成

 キャリア形成は、設問「意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われている」への回答状況から算出します。(図4)

図4

 

 図4のとおり、良好回答をした割合が2022年度にくらべて1.5%増えました。また2019年度から良好回答をした割合は増加の一途をたどっています。具体的には5年間で6.5%増えました。

 

2. 上司のリーダーシップ

 上司のリーダーシップは、設問「上司は、部下が能力を伸ばす機会を持てるように、取り計らってくれる」への回答状況から算出します。(図5)

図5

 図5のとおり、良好回答をした割合が2022年度にくらべて1.4%増えました。また2019年度から良好回答をした割合は増加の一途をたどっています。具体的には5年間で5.4%増えました。

 

3. 多様な労働者への対応

 多様な労働者への対応は、「職場では、(正規、非正規、アルバイトなど)色々な立場の人が職場の一員として尊重されている」への回答状況から算出します。(図6)

図6

 

図6のとおり、良好回答をした割合が2022年度にくらべて1.2%増えました。

 

4. ほめてもらえる職場

ほめてもらえる職場は、設問「努力して仕事をすれば、ほめてもらえる」への回答状況から算出します。(図7)

図7

 

 図7のとおり、良好回答をした割合が2022年度にくらべて1.0%増えました。また2019年度から良好回答をした割合は増加の一途をたどっています。具体的には5年間で4.3%増えました。

 

5. 公正な人事評価

 公正な人事評価は、「人事評価の結果について十分な説明がなされている」の回答状況から算出します。(図8)

図8

 

図8のとおり、良好回答をした割合が2022年度にくらべて0.9%増えました。

 

さいごに

 2023年度のストレスチェックデータを前年度と比較した結果、変化の大きかった上位5尺度はすべて良好傾向に変化していました。

 その中でも今回は「上司のリーダーシップ」「ほめてもらえる職場」「公正な人事評価」など、上司にまつわる項目での良好回答が増えており、職場環境改善に取り組もうとする企業の意識も高まっていることが推察できます。職場環境改善には上司の役割がとても重要であり、労働人口に減少傾向がみられる現代において、従業員を大切にしなければならないという考えから、行動が変化している状況が表れているのかもしれません。今後は、従業員を大切にすることに重きを置きつつも、仕事の質やパフォーマンスをあげて成果につなげていくために何が必要かを考えることが、企業が発展していく上で重要になってくるのではないでしょうか。

 ストレスチェックはこれまで、働く人々のストレスの状態を知るための調査という側面が強かったのに対し、制度開始から8年が経過した現在は、職場の現状を可視化し職場環境の改善につなげるという、もう一つの側面を重要視する流れに移り変わっています。ストレスチェックの結果は非常に重要なデータが詰まっているので、ぜひ多くの企業で職場環境の把握と改善に取り組むためのきっかけにしていただきたいです。

文責:服部恭子(ストレスチェック研究所 主席アナリスト)

 

調査対象

調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2019年度~2023年度受検者

対象受検者数: 479,612人(2023年度)

410,352人(2022年度)

324,642人(2021年度)

240,275人(2020年度)

199,290人(2019年度)

 

【全80項目一覧】

(1)非常にたくさんの仕事をしなければならない、(2)時間内に仕事が処理しきれない、(3)一生懸命働かなければならない、(4)かなり注意を集中する必要がある、(5)高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ、(6)勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない、(7)からだを大変よく使う仕事だ、(8)自分のペースで仕事ができる、(9)自分で仕事の順番・やり方を決めることができる、(10)職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる、(11)自分の技術や知識を仕事で使うことが少ない、(12)私の部署内で意見のくい違いがある、(13)私の部署と他の部署とはうまが合わない、(14)私の職場の雰囲気は友好的である、(15)私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、喚起など)はよくない、(16)仕事の内容は自分にあっている、(17)働きがいのある仕事だ、(18)活気がわいてくる、(19)元気がいっぱいだ、(20)生き生きする、(21)怒りを感じる、(22)内心腹立たしい、(23)イライラしている、(24)ひどく疲れた、(25)へとへとだ、(26)だるい、(27)気がはりつめている、(28)不安だ、(29)落着かない、(30)ゆううつだ、(31)何をするのも面倒だ、(32)物事に集中できない、(33)気分が晴れない、(34)仕事が手につかない、(35)悲しいと感じる、(36)めまいがする、(37)体のふしぶしが痛む、(38)頭が重かったり頭痛がする、(39)首筋や肩がこる、(40)腰が痛い、(41)目が疲れる、(42)動悸や息切れがする、(43)胃腸の具合が悪い、(44)食欲がない、(45)便秘や下痢をする、(46)よく眠れない、(47)どのくらい気軽に話ができますか?(上司)、(48)どのくらい気軽に話ができますか?(職場の同僚)、(49)どのくらい気軽に話ができますか?(配偶者、家族、友人等)、(50)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(上司)、(51)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(職場の同僚)、(52)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(配偶者、家族、友人等)、(53)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(上司)、(54)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(職場の同僚)、(55)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(配偶者、家族、友人等)、(56)仕事に満足だ、(57)家庭生活に満足だ、(58)感情面で負担になる仕事だ、(59)複数の人からお互いに矛盾したことを要求される、(60)自分の職務や責任が何であるか分かっている、(61)仕事で自分の長所をのばす機会がある、(62)自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている、(63)私は上司からふさわしい評価を受けている、(64)職を失う恐れがある、(65)上司は部下が能力を伸ばす機会を持てるように取り計らってくれる、(66)上司は誠実な態度で対応してくれる、(67)努力して仕事をすれば、ほめてもらえる、(68)失敗しても挽回するチャンスがある職場だ、(69)経営層からの情報は信頼できる、(70)職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている、(71)一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ、(72)人事評価の結果について十分な説明がなされている、(73)職場では(正規、非正規、アルバイトなど)色々な立場の人が職場の一員として尊重されている、(74)意欲を引き出したりキャリアに役立つ教育が行われている、(75)仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない、(76)仕事でエネルギーをもらうことで自分の生活がさらに充実している、(77)職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)、(78)私たちの職場ではお互いに理解し認め合っている、(79)仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、(80)自分の仕事に誇りを感じる

 

ドクタートラスト概要

株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/

株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内第1位※)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、211万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]、健康管理システム「エール+」もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。※帝国データバンク調べ

 

ストレスチェック研究所 https://www.stresscheck-dt.jp/stella/

ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。

 

ストレスチェックサービスに関するお問合せ

株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所 担当:杉山、上田

TEL:03-3464-4000(代表)

企業さま用お問合せフォーム:https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form/

<参考>100名あたり6万円~(専門コンサルタントによる集団分析結果フィードバックなども、料金内でご提供いたします)

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