電通とunerry、「猛暑下における生活者の外出行動調査」を実施

外出行動は「猛暑日35℃」を待たずに変化、夕方以降へのシフトや地域差が明らかに

電通

2026年7月24日

株式会社 電 通

 

 

 株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:松本 千里)と株式会社unerry(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 執行役員CEO:内山 英俊)は、気候変動に伴う気温上昇が生活者の外出行動に与える影響を把握するため、行動データを用いた調査を共同実施しました。本調査は、猛暑日における外出行動の変化を地域別・曜日別に分析し、企業や自治体が暑熱対策や販促施策、まちづくり施策などを検討する際に活用できる知見を提供することを目的としています。

 近年、気候変動の進行に伴い、最高気温が35℃以上となる猛暑日の増加が全国的な課題となっています。さらに2026年4月には、気象庁が最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と定義するなど、暑熱環境への対応の重要性は一層高まっています。

 猛暑日には、熱中症予防の観点から日中の屋外活動や外出を控えることが推奨されています。一方で、生活者は実際にどの気温水準で行動を変化させるのか、また、その影響は地域や曜日によってどのように異なるのかについては、十分に明らかになっていませんでした。

 そこで両社は、2025年6月から9月までの全国の外出行動データ(500メートル以上の移動を外出と定義)を分析し、気温上昇に伴う生活者の行動変容の実態を検証しました。その結果、外出行動の変化が表れる気温帯や地域ごとの特徴など、暑熱環境下における生活者行動の実態とその兆候が明らかになりました。

 

 本調査で得られた主なファインディングスは次のとおりです。

 

【主なファインディングス】

①土曜日の外出行動の変化は、猛暑日の基準である35℃を待たず、31℃前後から始まっている。

 

②猛暑日の土曜日は、日中(9時~16時台)の外出が夕方(18時以降)へシフトしている。一方で、平日や日曜日は、日中の外出抑制は見えるが、タイムシフトは限定的。

 

③土曜日の夕方以降への外出シフトと、日曜日の日中外出抑制がともに顕著な地域があり、宮崎県、鳥取県、徳島県などでその傾向が強い。暑さが厳しい地域でも外出行動の変化が小さいケースがあり、暑さの厳しさと行動変化の大きさは必ずしも一致しない。

 

④公共交通利用度が高い都市は、自動車移動が中心の都市と比べて、土曜日夕方以降への外出のタイムシフトが起きにくい傾向。

 

【各ファインディングスの詳細】

①土曜日の外出行動の変化は、猛暑日の基準である35℃を待たず、 31℃前後から始まっている。

・全国都道府県の平日、土曜日、日曜日別に12時〜14時台の外出率を調査。その平均外出率に対して、最高気温別の外出率を調査したところ、土曜日は、31℃前後から外出の抑制が始まっていることがわかった。【図表1】

 

【図表1】

 

②猛暑日の土曜日には、日中(9時~16時台)の外出が夕方(18時以降)へシフトしている。一方で、平日や日曜日は、日中の外出抑制は見えるが、タイムシフトは限定的。

・最高気温と外出行動変化の関係は、平日、土曜日、日曜日など、曜日別に違いが見られた。

・土曜日の猛暑日には、最高気温が30 ℃ 未満の日と比較すると9時から16時台の外出率が低下する一方、18時から22時台の外出率が上昇する、外出時間のシフトが見られた。日中の外出率低下の最大幅は14時台の1.9%ポイント 、上昇の最大幅は19時台の1.3ポイントだった。【図表2】

・平日の猛暑日は、最高気温が30 ℃ 未満の日と比較すると、日中の外出率がやや低下する一方で、18時以降の外出率上昇も最大幅の19時で0.4ポイントと小さく、夕方以降への外出時間タイムシフトは限定的である。【図表2】

・日曜日の猛暑日は、最高気温が30 ℃ 未満の日と比較すると日中外出率低下が大きく、13時台から14時台にかけては3.2ポイントの抑制が見られたが、夕方以降へのシフトは最大幅の19時で0.5ポイントと小さく、限定的である。【図表2】

 

【図表2】

 

③土曜日の夕方以降への外出シフトと、日曜日の日中外出抑制がともに顕著な地域があり、宮崎県、鳥取県、徳島県などでその傾向が強い。暑さが厳しい地域でも外出行動の変化が小さいケースがあり、暑さの厳しさと行動変化の大きさは必ずしも一致しない。

・土曜日の外出のタイムシフト(日中9時〜16時台の外出抑制と、夕方以降18時〜22時台の上昇割合)と、日曜日の日中(10時〜15時台の外出抑制)を、県別に調査した。

・土曜日の外出のタイムシフトは、宮崎県(1位)、佐賀県(2位)、長崎県(3位)などの九州地方に顕著に現れ、上位10県を見ても、比較的緯度が低い県が多い。【図表3】

・土曜日の外出のタイムシフトが起きづらい都道府県、日曜日の外出抑制傾向が大きい県には、さまざまな地方からランクインした。この結果から、気温の高さと外出行動の変化の大きさは、必ずしも単純に連動しないことが示された。【図表3】

 

【図表3】

 

④公共交通利用度が高い都市は、自動車移動が中心の都市と比べて、土曜日夕方以降への外出のタイムシフトが起きにくい傾向。

・全国都市交通特性調査※1に基づき、休日の交通手段が、自動車(自動二輪車を含む)移動中心の都市※2と公共交通機関(鉄道、バス)利用度の高い都市※3を比較したところ、土曜日夕方以降の外出のタイムシフトに差が見られた。公共交通機関利用度が高い都市の方が、タイムシフトが起きづらい傾向が見られた。【図表4】

・本調査では、500メートル以上の移動を外出と定義したが、公共交通機関利用度が高い都市の方が、日常の買い物等が500メートル以内でも賄いやすいという都市構造なども影響していると考えられる。【図表4】

 

【図表4】


※1:国土交通省がおおむね5年に1度実施する、人々がどのような目的で、どのような交通手段を利用して移動しているかなど都市における人の動きを把握する「全国都市交通特性調査」令和3年全国都市交通特性調査 都市別指標の休日の代表交通手段別構成比(出典:https://www.mlit.go.jp/toshi/tosiko/toshi_tosiko_fr_000024.html )。

※2:※1の調査のうち、休日の主要移動手段が鉄道・バスの選択率が10%未満、自動車・65%以上の都市が調査対象である都道府県:北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県、静岡県、長野県、愛知県、新潟県、石川県、富山県、滋賀県、岐阜県、三重県、和歌山県、広島県、岡山県、島根県、山口県、愛媛県、高知県、徳島県、福岡県、大分県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県。

※3:※1の調査のうち、休日の主要移動手段が鉄道・バスの選択率が10%以上、自動車・65%未満の都市が調査対象である都道府県:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、京都府、奈良県、兵庫県。

 

【調査担当者の解説】

 今回の調査から、猛暑による生活者行動の変化は、外出の有無や時間帯を比較的自由に選択しやすい土曜日に顕著に現れる一方、翌週への備えや休養を意識する傾向がある日曜日には、外出抑制の傾向が強まることが分かりました。また、その影響は地域特性や暑熱環境への適応度、都市構造などによって異なることも明らかになりました。

 特に注目すべき点は、外出行動の変化が最高気温35℃以上の猛暑日だけでなく、31℃前後から 表れ始めていることです。この傾向は、WBGT(暑さ指数)31℃以上で熱中症リスクが高まるとされる基準とも近く、生活者が暑さを意識して行動を変え始める一つの目安を示している可能性があります。企業や自治体にとっては、31℃前後を目安に、暑熱対策や注意喚起、需要変化への対応を検討することが有効と考えられます。

 一方で、すべての地域で同様の行動変化が見られるわけではありません。兵庫県、大阪府、神奈川県、愛知県などでは、外出パターンの変化が比較的小さい傾向が確認されました。地下街や駅直結施設などの都市インフラの充実に加え、暑さへの適応が進んでいることなどが要因として考えられます。

 さらに、公共交通機関の利用率が高い都市では、外出時間帯の夜間シフトが起こりにくい傾向も見られました。こうした結果は、猛暑時の行動変容が気温だけでなく、地域の移動環境や生活インフラとも密接に関係していることを示唆しています。自治体や交通事業者、小売・商業施設においては、全国一律の対策ではなく、地域ごとの行動特性や移動環境を踏まえた施策設計が求められると考えられます。

 

【本調査に助言・協力いただいた、国立環境研究所 気候変動適応センター 真砂佳史氏からのコメント】

ここ数年、日本では記録的な暑さが続き、気候変動による長期的な気温上昇がその背景にあります。暑さは、熱中症や睡眠不足、電気代の増加など、暮らしのさまざまな場面に影響します。こうした影響を減らすため、暑さに合わせて行動や暮らし方を変えることを「気候変動への適応」といいます。今回の調査は、人々が外出を控えたり時間帯をずらしたりして暑さに適応している様子を、実際の人の動きから示しました。地域や曜日、交通環境によって行動の変化が異なることから、適応の仕方は一つではありません。気候変動の進行を抑える努力とともに、それぞれの状況に合った備えや工夫を、できることから始めていきましょう。

 

【本調査に助言・協力いただいた、東京大学未来ビジョン研究センター 気候変動とエネルギー転換研究ユニット(高村ゆかり教授統括)によるHICARIプロジェクトからのコメント】

本調査は、人流のデータとモデリングを活用し、猛暑が生活者の外出行動に及ぼす影響を、曜日、時間帯、地域特性、交通手段など多角的な観点から分析した極めて興味深いものです。特に、行動変容が猛暑日の基準である35℃に達する前の31℃前後から生じているという知見は、気候変動への適応策を検討する上で重要な示唆を与えます。また、影響の現れ方が地域の交通環境や生活インフラによって異なるとの結果は、各地域の交通インフラや街づくりによって暑熱に対する人の行動も変わることを意味し、これを考慮した地域の対応の重要性を示します。さらに、本調査の結果は、気候変動の影響の一つとしての猛暑がもたらす事業リスクや事業機会を企業が評価し、対応を行う上でも有用な示唆を与えると考えます。本成果が、自治体における適応策や企業による気候リスクの評価・戦略策定に活用されるとともに、排出削減策を含む今後のさらなる調査研究の発展に幅広く貢献することを期待します。

 

 

今後は、購買データや住宅市場データ、生活者意識データなどとの掛け合わせにより、猛暑が生活者の消費行動や暮らしに与える影響をより多面的に分析し、暑熱環境への適応に資する知見の創出を進めていきます。また、地域別・時間帯別・生活者属性別の行動特性を可視化することで、企業のマーケティング戦略立案や商品・サービス開発、自治体や観光分野における暑熱対策の高度化に貢献してまいります。

 

【調査概要】

・目   的:気候変動がもたらす生活者外出行動の実態把握

・対象エリア:外出行動分析 全国47都道府県

       全国都市交通特性調査のデータを用いた分析70都市

・調 査 手 法:unerryが運営する、リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」に蓄積された人流ビッグデータを用いた外出行動分析

・調 査 期 間:2025年6月1日~9月30日(極端な天候影響を排除するため、7時〜23時台に3mm以上の降雨の日・都道府県は集計に含めない)

                                             以上

 

 

 

 

 

 

 
 
 

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