新種植物200種超を発見した植物学者が書く科学ファンタジー『花神戦記』、第50話で「九州編」完結 ― 大雪山から屋久島まで、物語の舞台となった自生地をつなぐ保全の輪を
実在の山と島を舞台に花に宿る神「花神(かがみ)」と少女の冒険を描く。物語投稿サイト「TALES」で連載中
植物学者の矢原徹一(ペンネーム:谷桔梗)は、物語投稿サイト「TALES」で連載中の科学ファンタジー小説『花神戦記(かがみせんき)』第50話「キリシマイバラ-龍王を呼ぶ花」を【2026年10月23日】に公開します。これにより、福岡の雷山から霧島山まで九州各地を巡る中盤の山場「九州編」が完結します。本作は、200種を超える新種植物を発見してきた著者が、自らの野外調査の体験をもとに執筆しています。日本の野生植物の魅力と、いま自生地で起きている危機を、物語を通して多くの読者に届けることを目指しています。
『花神戦記』とは ― 現実の野外調査と、夢の世界の冒険が交差する物語
主人公は、伊都大学に入学したばかりの18歳の少女、房桜知花(ふさざくら・ちか)。彼女は谷桔梗教授が執筆した『保全生態学入門』を高校生時代に読んで、人と花の共生をめざす科学があることに感銘を受け、伊都大学に入学します。そして谷教授が守った伊都大学生物多様性保全ゾーンに足を踏み入れた途端、彼女の脳裏に衝撃が走ります。そこは、彼女が毎晩のように見る夢に登場する花学校の景色と瓜二つでした。夢の世界では、知花は花の自生地を守る「花守」の娘。彼女には、花に宿る神「花神(かがみ)」の姿が見え、言葉を交わすことができる不思議な力があります。花学校で「花狩人」に出会ったことがきっかけで、彼女はハカセや先輩とともに、花の世界を救う「神の花」を求めて旅立ちます。現実の世界では、憧れの谷桔梗教授の野外調査に同行し、未知の植物を探して全国の山を歩きます。
現実の調査で新種を見つけた場所に、夢の世界では「神の花」が咲き、花を奪う「花狩人」との戦いが始まります。二つの世界を行き来する構成により、読者は冒険を楽しみながら、植物を見分ける目の付けどころ、新種が「新種」と判断されるまでの過程、そして自生地が直面する厳しい現実を自然に学ぶことができます。
物語のもう一つの柱は、古事記の神々と各地に伝わる民話・伝説です。知花の旅の目的は、世界を救う神イザナギへの扉を開くこと。その行く手には、花神が見える者を狙う邪神イザナミが立ちはだかります。旅の途中では、富士の峰に座すコノハナサクヤヒメ、翡翠を守る女神ヌナカワヒメ、水を司る瀬織津姫といった神々が知花を導きます。北海道ではアイヌの人々が敬うカムイが、各地の山ではその土地に古くから伝わる守り神が、花神とともに現れます。神話や民話の神々は、その土地の自然と深く結びついています。物語の中で神々と出会うことは、その土地にしか咲かない植物と出会うことでもあります。
物語は屋久島から始まり、北海道(アポイ岳・夕張岳・大雪山)、信州(中央アルプス・白馬・戸隠)、北陸・白山、尾瀬へと全国に広がってきました。第33話から始まった「九州編」は、その中盤の山場です。
九州編の見どころ
• 実在の自生地が舞台 雷山、くじゅう連山、阿蘇、宮崎の白岩山、祖母山、甑島、対馬、霧島山。読者は、知花とともに九州の山と島を巡ります。
• 自生地の「いま」を描く シカに食べ尽くされて緑が消えた森、野焼きで守られてきた草原、再発見できずに絶滅を確認するつらさ。現場を知る著者ならではの描写が続きます。
• 新種発見の瞬間 「ここに新種があるはず」と地形を読み、標本と照合し、似た種との違いを確かめる。研究者の思考過程が、ミステリーのように描かれます。
• 神話と伝説の地を巡る 雷山では山に宿る土地神・清賀上人が、くじゅうでは古事記に登場する鹿の神アメノカクが登場します。阿蘇では、外輪山を蹴破って湖を野に変えたと伝わるタケイワタツが現れます。祖母山では大蛇の姿で聖域を守る豊玉姫が、霧島では大浪池に宿る龍王が知花たちの前に姿を見せます。阿蘇の「蹴裂伝説」は、かつて実在したカルデラ湖の消失と重ねて語られます。神話や伝説の背後にある土地の自然史にも光を当てています。
• 敵にも「花を愛する理由」がある 敵役の三人衆は、失われた自生地への絶望から、植物を移植し「花園で守る」道を選んだ者たちです。自生地で守るか、移して守るか。保全の現場にある価値観の違いが、物語の対立軸になっています。
• もうひとりの夢見人 夢の世界で敵対する少女・葛原里花が、現実の世界にも実在していました。二人の関係の行方が、九州編を貫くドラマです。
九州編の舞台と主な登場植物
• 第33〜35話( 福岡・水無、雷山 ): ミズナシハコベ、ライザンクルマバナ、ライザンミズ
• 第36〜38話(くじゅう連山): モモイロウツギ、ツクシコウツギ、クジュウオトギリ
• 第39〜40話(阿蘇): キュウシュウハガクレツリフネ、カヤノウメバチソウ
• 第41〜42話(宮崎県白岩山): シライワアザミ、シライワアケボノソウ
• 第43〜44話 (祖母山・障子岳): ウバタケギボウシ、ブンゴギボウシ、タシロノガリヤス
• 第45〜46話(甑島): コシキイトラッキョウ、コシキノダケ、コシキヒヨドリ
• 第47〜48話(対馬): オオチダケサシ、ツシマヤマラッキョウ
• 第49話(伊都大学・生物多様性保全ゾーン):ガマ。ミズオオバコ、ヒシ
• 第50話(霧島山・えびの高原):キリシマイバラ
なお、『花神戦記』に登場する植物については、谷桔梗の新種植物発見伝(https://note.com/tetsukazuyahara)という記事に、写真入りで解説されています。
第50話では、白岩山・甑島・対馬で出会った三柱の花神の力を集め、知花たちは霧島での決戦に挑みます。そして物語は、夢の世界と現実世界の両方に密かに影を落とす本当の敵の存在へと近づいていきます。知花が毎晩のように見る夢-その夢の世界が次第に現実世界と交差し始めます。夢の世界とはいったい何なのか? 物語の核心に位置するミステリーが具体的な姿を現します。
新種を探し続けた植物学者が、小説を書く理由
著者は、2020年以来の日本各地の野外調査で200種を超える新種植物を発見してきた植物学者です。作中で谷教授が見せる「地形を読んで急斜面に向かう」ような調査の姿や、標本と野外の個体を見比べて新種だと確信する場面には、著者自身の経験が反映されています。
一方で著者は、調査地で植物が消えていく現場も見てきました。シカの食害、草原の減少、水辺の環境の変化、そして盗採。新種として名前がつく前に、絶滅の危機にある植物も少なくありません。論文や報告書では、こうした現実は一部の専門家にしか届きません。そこで著者は、花に神が宿るファンタジーの形を借りて、野生植物のすばらしさとその危機を広く伝えることにしました。
作中に登場する植物の姿、花の色、生えている岩や土、シカに食べられた森の匂いまで、描写は現地での観察に基づいています。一輪一輪の花に「花神」として人格を与えることで、名前も知られていない小さな植物にも、それぞれの個性と物語があることを伝えています。
著者は植物学の研究のかたわら、古事記や各地の民話にも親しんできました。神話や民話には、その土地の山や川、そこに暮らす生きものへの人々のまなざしが刻まれています。『花神戦記』では、古事記の神々や民話のキャラクターを花神とともに登場させています。なじみのある神話や民話を入り口に、その土地にしか咲かない固有の植物へと読者の関心を広げることをねらっています。
【著者コメント】
「新種を見つけた瞬間の高揚と、その花が絶滅の危機に直面している悲しさ。その両方を、少しでも多くの人に伝えたいと思い、この物語を書き始めました。日本の山や島には、まだ名前のついていない植物がいまも咲いています。知花と一緒に旅をしたあと、近くの野山で足もとの花に目を留めていただけたら、これ以上の喜びはありません」
大雪山から屋久島まで ― 物語の舞台をつなぐ保全の輪へ
『花神戦記』の舞台は、北は大雪山から南は屋久島まで、その多くが実在する新種植物の自生地です。著者は、物語をきっかけにこれらの自生地をつなぐ保全活動を生み出したいと考えています。
自生地の多くは山間部や離島にあり、それぞれの地域で守り手が不足しています。一方、シカの食害や草原の減少など、各地が抱える課題には共通するものが少なくありません。物語の中で知花が各地の花神と仲間になっていくように、現実の世界でも、自生地を守る人々と、物語を読んで花に関心を持った読者とをつなぐことを目指します。
構想している取り組みの例は次のとおりです。
• 物語の舞台となった自生地で保全に取り組む地域の団体・自治体・研究者との連携
• 作品に登場する植物と自生地の現状を紹介する情報発信
• 読者が自生地の保全活動に参加・支援できる仕組みづくり
作品の教材としての活用、自生地での取材・調査、保全活動へのご協力に関するご相談も歓迎します。
【著者プロフィール】
矢原徹一(ペンネーム:谷桔梗):九州大学名誉教授、福岡市科学館館長、一般社団法人九州オープンユニバーシティ研究部長。保全生態学・植物分類学を研究。九州大学退職(2020年3月)以来、日本各地を調査し、これまでに200種を超える新種植物を発見。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 一般社団法人九州オープンユニバーシティ
- 所在地 福岡県
- 業種 その他教育
- URL https://qou.jp/
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