第13回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式を開催

早稲田大学

11月8日、第13回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の贈呈式を行いました。

2013-11-14

早稲田大学広報室広報課

第13回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式

優れた作品を制作した気鋭のジャーナリストたちを顕彰しました

 早稲田大学では、11月8日、第13回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の贈呈式を行いました。鎌田薫総長の挨拶に続いて、大賞2名・奨励賞2組4名の受賞者に賞状とメダル・賞金を贈り、その成果を称えました。

 第13回を迎えた今年の贈呈式には、受賞者と共に取材・報道に尽力した取材チーム等の方々をはじめ、報道・メディア関係者、ジャーナリストを志す本学学生など約100名が出席。選考委員を代表して下重暁子氏から講評が述べられ、その後に続いた受賞者および関係者の熱いスピーチに、来場者は熱心に聴き入っていました。

 贈呈式後のレセプションは、第一線で活躍するジャーナリスト同士が意見を交換したり、学生たちが受賞者にお話を聞いたりと、和やかながら活気あふれる会となりました。

講評(下重暁子選考委員)

文化貢献部門の大賞となったNHK・Eテレの「永山則夫100時間の告白~封印された精神鑑定の真実~」は、人間の心からの告白が響いてくる、圧倒的衝撃を受けた作品でした。草の根民主主義部門の大賞である沖縄タイムスの「連載「波よ鎮まれ~尖閣への視座~」は尖閣諸島問題を日中の対立軸からではなく、沖縄の現地の人々がどう受け取っているかを克明に記録した感動的な作品。また、公共奉仕部門は選考委員の評価が分かれ、今回は該当作品無しということになりました。

受賞者のコメント

■草の根民主主義部門 大賞

「波よ鎮まれ」取材班代表 沖縄タイムス社 渡辺 豪 氏

尖閣諸島問題を、当事者といえる沖縄と台湾の一般市民の日常の問題として、とことんこだわりました。「個」の暮らしにかかわる幸福や権利を大切にすることで、国の枠を超えた普遍的な価値を見出しました。「日々の食卓が充実すればそれ以上望まないのでは」という市民の言葉は本質をついているのではないでしょうか。領土問題では、国家や国益を語ったり背負ったりすることが崇高とは限りません。家族とか仲間とか日常生活を愛おしむ思いが平和を支える原動力なのだと思い知りました。尖閣報道で足りないのはこうした市民感覚の発信ではないでしょうか。今後も市民の声に寄り添う報道を心がけていきたいと思います。

■文化貢献部門 大賞

「永山則夫100時間の告白」取材班代表 日本放送協会 増田秀樹 氏

このような素晴らしい賞をいただき感謝しています。私の仕事はフリーのディレクターである堀川恵子を起用したこと。今日は、その堀川に話をさせていただきたいと思います。

 堀川恵子 氏

数十年にわたって抱えてきた本当に重い荷物を番組スタッフに託してくださった精神科医の石川義博医師に感謝したいと思います。受賞はスタッフみんながベストを尽くしてくれた結果です。事件の大きな根っこにあったのは物質ではなく関係性の貧困。40年前の古い事件ではなく、今もなお続いている問題かもしれません。日本社会は戦後かつて経験したことのない安全な社会になっているにも関わらず、厳罰化が進み、悪い人は罰してしまえという殺伐とした社会になっています。根底に関係性の貧困、人間への信頼が薄れてきていると感じます。このような賞をひとつの励みにして、また頑張っていきたいと思います。

■公共奉仕部門 奨励賞

朝日新聞社 木村英昭 氏・宮崎知己 氏

手を伸ばせば届くもの、大切なものであるにも関わらず、取ることができない。私たちの報道はそういうものでした。ルポでも調査報道でも特ダネでもないが、定義すると「公共化」といえる。結果として数多くの論文、書籍に引用され、さらにドキュメンタリー番組も作られました。市民社会に還元しえたと意味で、受賞は今回の報道を社会的に定義づけてくれたと思います。この報道はこれからも継続し、必ず全面公開を勝ち取ります。今後の励みになる賞で、勲章だと思っています。

■公共奉仕部門 奨励賞

「原子力“バックエンド”最前線」取材チーム 林 新 氏

取材はバックエンド(※原子力発電所の廃炉、放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルなどにかかわる事業)という耳慣れない言葉から始まりました。イギリスの先見性は専門の廃炉機関を持っていたことです。こうしたアイデアは現在、日本政府からも出ているようですが、重要なことは透明性や情報公開といった点です。これがないとバックエンドは機能せず、福島の原子力発電所問題は解決しない。福島のことを見ていくうえで、今後この点を注目して、引き続き問題を追いかけていきたいと思います。

 なお、贈呈式の席上、本賞記念講座の2012年度授業内容をまとめた最新刊『「危機」と向き合うジャーナリズム』が6月に刊行されたことも報告されました。

【リンク】

ニュースリリース本文 http://www.waseda.jp/jp/news13/131114_wja.html

第13回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」選考結果 http://www.waseda.jp/jp/global/guide/award/award08.html

『「危機」と向き合うジャーナリズム』(早稲田大学出版部) http://www.waseda-up.co.jp/journalism/post-663.html

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