イタリア料理リゾットに向き、栽培しやすい水稲新品種「和み(なごみ)リゾット」を育成
・大粒でリゾット 1) への調理適性があり、倒伏に強く栽培しやすい水稲新品種「和みリゾット」を育成しました。 ・「和みリゾット」により、国産のリゾット用米の普及が期待されます。
平成26年4月21日
農研機構
イタリア料理リゾットに向き、栽培しやすい水稲新品種「和み(なごみ)リゾット」を育成
■ ポイント
・大粒でリゾット 1) への調理適性があり、倒伏に強く栽培しやすい水稲新品種「和みリゾット」を育成しました。
・「和みリゾット」により、国産のリゾット用米の普及が期待されます。
■ 概要
1. 国内のイタリア料理店では、イタリア産米が高価であることや、地産地消への関心の高まり等から、リゾットに適する国産の大粒米が求められていました。
2. 実需者からの要望に対し、農研機構は、リゾットへの調理適性があり、倒伏に強く栽培しやすい水稲新品種「和みリゾット」を育成しました。
3. 収量性はリゾットに適するイタリア品種「CARNAROLI(カルナローリ)」よりも高く、玄米千粒重は「CARNAROLI」並の極大粒です。
4. リゾットに調理した「和みリゾット」は、「コシヒカリ」よりも外観に優れ、歯ごたえがあり、粘りがなく、べたつかず、煮崩れしにくく、総合的に「CARNAROLI」に近い評価です。
5. 国内のイタリア料理店での評価も高かったことから、新潟県柏崎市で国産リゾット用米としての作付けが予定されています。
予算:運営費交付金
品種登録:出願番号 第28215号(平成25年10月8日品種登録出願公表)
■ 背景・経緯
イタリア原産の大粒品種「CARNAROLI」は、リゾットに最適とされていますが、稲は倒れやすく低収量で、脱粒、穂発芽しやすい問題があり、イタリアからの輸入米としては高価になっています。一方、「コシヒカリ」等の国産米は粒が小さく、イタリア産米とはリゾットに調理した際の外観や食感が異なることが問題となっています。現在、国内のイタリア料理店では、イタリア産米が高価であることや、食の安全・安心、地産地消への関心の高まり等から、リゾットに適する国産の大粒米が求められていました。
この要望に応えるため、国内初のリゾット用品種として、「CARNAROLI」を品種改良した「和みリゾット」を育成しました。
・平成18年:農研機構 中央農業総合研究センター北陸研究センターにおいて、「北陸204号」と「CARNAROLI」を交配して、育成を開始。
・平成24年:株式会社結アソシエイト、有限会社ファーミング・スタッフ(新潟県柏崎市)、新潟大学との共同研究の中で、「北陸253号」の名前で現地実証試験、リゾットへの調理適性試験を開始。
・平成25年:「和みリゾット」として品種登録出願。
■ 内容・意義
1. 「和みリゾット」は「ひとめぼれ」と比べて、出穂期が1日程度早く、成熟期は3日程度早く、育成地(新潟県上越市)では早生品種になります(表1)。
2. 稈長は「ひとめぼれ」と比べてやや短く、「CARNAROLI」より明らかに短くなっています。倒伏に対する強さは、「ひとめぼれ」、「CARNAROLI」に優ります(表1、表2)。
3. 収量性は「ひとめぼれ」よりも劣りますが、「CARNAROLI」よりも高く、玄米千粒重は「CARNAROLI」並の極大粒です(表1、表2)。
4. いもち病 2) 抵抗性は、葉いもちには“強”、穂いもちには“弱”です。耐冷性 3) は中程度、脱粒性は“難”、穂発芽性 4) は“やや難”です(表3)。
5. リゾットに調理した「和みリゾット」は、「コシヒカリ」に比べて外観が優れ、歯ごたえがあり、粘りがなく、べたつかず、煮崩れしにくくなっています。総合的には、「コシヒカリ」に優り「CARNAROLI」に近い評価で、リゾットへの調理適性が認められます(表4)。
■ 今後の予定・期待
「和みリゾット」はリゾットへの適性が認められ、国内のイタリア料理店での評価も高かったことから、新潟県柏崎市で平成26年度から作付けが予定されています。国産のリゾット用米の普及が期待されます。
■ 用語の解説
1)リゾット:イタリアの米料理の一つ。米に油を加えて炒め、スープを加えながら炊いたもの。多くの場合、仕上げにチーズを入れます。
2)いもち病:稲の重要な病気の一つで、糸状菌(かび)により感染、発病します。葉に出るものを葉いもち、穂に出るものを穂いもちといい、品種によって抵抗性に差異があります。抵抗性が弱いと、枯れて減収しやすくなります。
3)耐冷性:寒さに対する抵抗性で、品種によって差異があります。抵抗性が弱いと、冷害時に籾に実が入らず、減収しやすくなります。
4)穂発芽性:降雨等で穂に籾が着いた状態で、籾が発芽する性質です。発生すると、玄米の外観品質が悪くなります。品種によって差異があります。
本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。
このプレスリリースには、報道機関向けの情報があります。
プレス会員登録を行うと、広報担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など、報道機関だけに公開する情報が閲覧できるようになります。
このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 農研機構 中央農業総合研究センター
- 所在地 茨城県
- 業種 水産・農林業
- URL http://www.naro.affrc.go.jp/narc/
過去に配信したプレスリリース
農業経営の実績評価・改善計画を支援するシステム「CAPSS」を公開
2014/7/14
「水田放牧の手引き」を作成
2014/2/10
「人・農地プラン」等の策定に活用できる「地域農業情報」
2013/7/9
ソフトタイプ米菓に適した水稲新品種「亀の蔵(かめのくら)」を開発
2012/12/14