カイロウドウケツのシリカ形成に関わる新規タンパク質の発見

鳥取大学

2015年8月18日

国立大学法人鳥取大学

カイロウドウケツのシリカ形成に関わる新規タンパク質の発見

~ 生物が環境に優しい条件でシリカガラスをつくる仕組みを解明へ ~

概 要

鳥取大学(学長:豐島 良太)の産学・地域連携推進機構・清水克彦准教授らは、Harvard University Wyss Institute for Biologically Inspired EngineeringのJames C. Weaver博士とともに、カイロウドウケツ骨格中に新規タンパク質グラシンを発見し、このタンパク質が室温中性の条件下でシリカの形成を促進することを明らかにしました。本研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America」電子版Early Editionに公開されました。

研究背景

カイロウドウケツの骨格はアモルファスシリカ(シリカガラス)を主成分としています。ガラスという脆い材料ながらしなやかさを備えています。また、中心部と外縁部の屈折率が異なることから、光ファイバーの特性を示すことがわかっています。骨格の中に微量の有機物が含まれており、この有機物がカイロウドウケツの骨格の特性やその環境に優しい作り方の鍵を握っていると考えられており、有機物の同定、その機能の解明に取り組んできました。

研究成果

カイロウドウケツのシリカ骨格を溶解して得られる抽出液中に、シリカの形成を促進する活性を見つけました。この活性はpH6以上で顕著であり、pH7で最大となります。抽出液中には23 kDaのタンパク質が主成分として含まれていることがわかり、グラシン(glassin)と名付けました。グラシンの遺伝子を単離して、その配列を解読したところ、ヒスチジン、アスパラギン酸、スレオニン、プロリンを多く含み、ヒスチジンがアスパラギン酸やスレオニン、グリシンと交互に配列するこれまでにないタンパク質であることが明らかになりました。単離した遺伝子を用いて生産した組換えグラシンにシリカ形成活性を有することを確認し、カイロウドウケツのシリカ骨格中に見出されたシリカ形成活性の本体であることを示しました。筆者らはこれまでに普通海綿類Tethya aurantiaのシリカ針骨からシリカテインというタンパク質を見いだしていますが、グラシンは構造、機能ともに異なるタンパク質でした。

今後の展開

本研究は生物の優れた仕組みや機能を学び、新たな技術の創出へとつなげる「生物模倣技術(バイオミメティクス)」とよばれる研究分野の研究の一例です。本研究を発展させることにより、カイロウドウケツが作るような優れた性質を備えたシリカガラスを、一般にガラスを作るのに必要な高温を使わずに、温和な条件のもと人工的に作り出すことが可能になると期待しています。

【掲載論文】

題名:Glassin, a histidine-rich protein from the siliceous skeletal system of the marine sponge Euplectella, directs silica polycondensation

雑誌名:Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America

オンラインURL:http://www.pnas.org/content/early/recent/2015/08/05/1506968112

【外部資金】

2011-2012年度 文部科学省科学研究費新学術領域研究(研究領域提案型)「融合マテリアル」(研究課題番号:23107521)

2013-2014年度 文部科学省科学研究費新学術領域研究(研究領域提案型)「融合マテリアル」(研究課題番号:25107722)

2015-2017年度 文部科学省科学研究費基盤研究C(研究課題番号:15K06581)

【用語解説】

カイロウドウケツ:海綿動物門六放海綿類に属する深海に棲息する固着性生物です。体内にカイロウドウケツエビのつがいがよく見られることから、日本では偕老同穴と綴り,夫婦の仲むつまじさ,契りの深さを示すものとして婚礼の縁起物などに珍重されてきました。また、西洋ではその造形的な美しさからVenus’ flower basket spongeと呼ばれています。

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総務課広報企画室

電話: 0857-31-5006   E-Mail: toridai-kouhou@adm.tottori-u.ac.jp

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