陽子線が体内で起こす核反応を光で可視化 陽子線治療の精度向上に大きく貢献
早稲田大学理工学術院 片岡淳(かたおかじゅん)教授らの研究チームは、東京女子医科大学、京都府立医科大学、量子科学技術研究開発機構、名古屋陽子線治療センター、名古屋大学と共同で、陽子線の照射によって体内の原子核で起こるミクロな物理現象を可視化する画期的な手法を確立しました。
2018年2月8日
早稲田大学
陽子線が体内で起こす核反応を光で可視化
陽子線治療の精度向上に大きく貢献
早稲田大学理工学術院 片岡淳(かたおかじゅん)教授らの研究チームは、東京女子医科大学、京都府立医科大学、量子科学技術研究開発機構、名古屋陽子線治療センター、名古屋大学と共同で、陽子線の照射によって体内の原子核で起こるミクロな物理現象を可視化する画期的な手法を確立しました。
医療の進歩によりガン(癌)の根治が期待できるようになった現代では、ただ治すだけでなく治療後には健康な生活を送ることが望まれています。放射線を用いたガン治療は体にメスを入れる必要がないため、患者さんの負担を低減することができます。特に、陽子線と呼ばれる放射線は止まる直前になるとエネルギーを一気に解放する性質を持つため、体の奥深くに位置するガンにもダメージを集中させることができます。ガンに対して的確な照射を行えたかどうか逐一確認することが理想的ですが、陽子線がどのように体内を進み、どの組織にどれだけのダメージを与えたかを直接目で視ることはできません。そこで、陽子線が体内を進む過程で原子核に衝突した際に生成される「陽電子放出核種」と呼ばれる特殊な原子核の生成分布をPET装置で捉えることで、陽子線の進路を可視化することが考えられますが、これまで医療に求められる精度でPET計測をシミュレーションすることが困難でした。
今回、本研究チームは陽電子放出核種から生じるチェレンコフ光に着目しました。チェレンコフ光とは、紫外線から可視光領域にまたがる青白い微弱光です。本研究では、その生成頻度を簡単かつ正確に導出する画期的な手法を確立しました。本手法により得られた結果は従来のデータベースを刷新する高い精度を誇り、この結果を用いることで初めて、PET計測を正確にシミュレーションできるようになりました。今回の研究成果は「放射線を視ながらガンを治す」次世代の陽子線治療を実現するうえで重要な役割を担うだけではなく、核物理学や量子力学、素粒子物理学といった基礎物理学の研究で標準的に用いられるデータベースの大幅な精度向上に貢献することが期待されます。
本研究成果は英国Nature Publish Groupのオンライン科学誌『Scientific Reports』に2月7日に掲載されました。
掲載論文
https://www.nature.com/articles/s41598-018-20906-z
早稲田大学ウェブサイト
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