早期大腸がんの新規血清スクリーニングマーカーを発見

ウシオ

京都府立医科大学と株式会社プロトセラ(ウシオ電機グループ)が、プロトセラが特許を保有する新しい質量分析法によって発見された5種類のペプチドが、早期大腸がんの血清スクリーニング検査に有用であることを明らかにしました。

2018年3月8日

京都府立医科大学

株式会社プロトセラ

ウシオ電機株式会社

早期大腸がんの新規血清スクリーニングマーカーを発見

―新規解析手法で同定した早期大腸癌血清マーカーの検証研究に関する研究論文の掲載―

【研究の概要】

京都府公立大学法人京都府立医科大学(京都府立医大)大学院医学研究科消化器内科学の内藤裕二准教授、内山和彦講師らの研究グループとウシオ電機株式会社の連結子会社である株式会社プロトセラ(プロトセラ)のグループは共同で、プロトセラが特許を保有する新しい質量分析法(BLOTCHIP®-MS法)によって発見された5種類のペプチドが、早期大腸がんの血清スクリーニング検査に有用であることを明らかにしました。

5種類のペプチドの組み合わせをリスクインデックスとして算出し、大腸がんの各ステージの患者で比較したところ、ステージ1、2といった手術で根治可能な段階の大腸がん患者でも血清中のリスクインデックスは健常者と比べて上昇していることがわかりました。

本研究手法を用いたスクリーニング検査をおこなうことで、大腸がんを根治可能な早い段階で診断することが可能となり、大腸がんによる死亡率が今後大幅に減少する可能性があると考えられます。本研究成果は、日本時間2018年3月1日Journal Gastroenterology誌のオンライン版で発表されました。

【論文名】

Selected reaction monitoring for colorectal cancer diagnosis using a set of five-serum peptides identified by BLOTCHIP®-MS analysis.

[日本語:5種類の血清ペプチドを用いた選択反応モニタリングによる大腸がん診断]

【掲載雑誌】

J Gastroenterol  [2018年3月1日(木)オンライン掲載] 

参考URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00535-018-1448-0?wt_mc=Internal.Event.1.SEM.ArticleAuthorOnlineFirst

【論文著者】

Uchiyama K, Naito Y, Yagi N, Mizushima K, Higashimura Y, Hirai Y, Dohi O, Okayama T, Yoshida N, Katada K, Kamada K, Handa O, Ishikawa T, Takagi T, Konishi H, Nonaka D, Asada K, Lyang-Ja Lee, Tanaka K, Kuriu Y, Nakanishi M, Otsuji E and Itoh Y

【研究の背景】

日本における大腸がん患者および大腸がんによる死亡率は近年増加していますが、大腸がんは早期発見により根治が可能な疾患であり、死亡率減少のためにはスクリーニング検査が重要です。しかし、現在スクリーニングに使用される便潜血や腫瘍マーカーの測定は早期大腸がんの発見には不十分であり、また大腸内視鏡検査は患者への侵襲や、施行できる施設・医師が不足しているなどの理由から、健診用スクリーニング検査法としては適していません。

プロトセラは早期大腸がんを非侵襲的に診断する方法として、大腸がん患者の血清で特異的に変化するペプチド群をBLOTCHIP®-MS法で発見・同定し、その中から5種類のペプチドの組合せが大腸がんの検出に有用であることをこれまでに報告しました。今回は別コホートの患者群に対して、各ペプチドの濃度を測定し、既報のスクリーニング成績と比較することでその有用性を検証しています。

【研究の方法】

対象は京都府立医大病院外来受診者で、それぞれの群で性別と年齢を一致させた56人の大腸がん患者(それぞれの病期(ステージ1〜4)につき14症例)と、60人の健常および60人の大腸腺腫患者としました。採取した血清は『ProtoKey®大腸がんリスク検査キット(以下「キット」)』(プロトセラ)で処理後、液体クロマトグラフィー質量分析法で5種類のペプチドを測定し、0~1のリスクインデックス値を算出しました。

【結果】

リスクインデックス値は健常者に比べ、大腸がん各ステージで有意に高い値を示し、ステージに従って上昇しました(図1)。

結果の中で注目すべきは、手術で根治が望めるステージ2までの段階でも有意に上昇し、大腸がんを早い段階で非侵襲的に診断できることが分かった点です。これらの結果から「キット」を使用した液体クロマトグラフィー質量分析法が大腸がんのスクリーニング検査法として期待できると考えられます。この検査でリスクインデックス値が高く出た受診者は医師による内視鏡検査を経て、最終的な診断結果が下されます。

【今後の展望】

今後さらに症例数を重ねることにより、本法を用いたスクリーニング検査が早期大腸がん発見率の上昇や、死亡率の低下をもたらすのか、また大腸がんのスクリーニングのみならず、手術や抗がん剤による化学療法の治療効果判定における有用性に関しても検証が必要であると考えています。

本研究は文部科学省平成23年度「次世代がん研究戦略推進プロジェクト」(研究代表者:八木信明(現朝日大学村上記念病院教授)、研究課題:大腸がんの早期・精密化診断を実現するペプチドバイオマーカーの開発)による支援、科学研究費補助金基盤研究(B)平成28−30年度「高速高精度な選択反応モニタリング定量的質量分析法による大腸癌先制医療の確立」を受けておこなわれました。

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

京都府立医大とプロトセラ

(図1)5つの血清ペプチドの組み合わせ値(リスクインデックス)による大腸癌の血清診断

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