ドローン同士の直接通信でニアミスを自動的に回避する実験に成功

2019年1月24日

ドローン同士の直接通信でニアミスを自動的に回避する実験に成功

~目視外飛行における安全な飛行運用に向けて~

<ポイント>

〇 ドローン間の直接通信で、相互のドローン位置を把握しながら飛行制御を行うシステムを開発

〇 前方から接近する他のドローンとのニアミスを自動的に回避する実験に成功

〇 ドローンが互いの位置を直接把握することができるため、目視外での安全運用が可能に

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ(プログラム・マネージャー: 田所 諭)の一環として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、ドローン(小型無人航空機)を含む複数の飛しょう体が飛行する環境での安全運航実現のために、ドローン間の直接通信により、位置情報を共有するシステム“ドローンマッパー”を用いた飛行制御を行い、合計3機までのドローンが互いに接近してくる他のドローンとのニアミスを自律的に回避する実験にこのたび成功しました。

 これまでドローンを目視外で飛行させる場合には、ドローンと操縦者との間の通信を行いながら、あらかじめプログラムされた飛行経路や飛行方法に従って、自動で飛行させる飛行制御が用いられてきました。しかし、これまでの飛行制御方法では、他のドローンや有人航空機等の接近への対応が困難である等の課題がありました。

 今回開発した技術では、ドローンマッパーとドローンのフライトコンピュータを初めて連携させることで、操縦者を介さずに、ドローン同士が互いに直接共有される位置情報から周辺のドローンの位置を把握し、ドローン自体が自動で飛行制御(ニアミス回避や群飛行等)することができるようになりました。動作を検証するための試験を実施し、最大3機のドローンがそれぞれの目的地に向かう際、自動で接近を検知し、ニアミスを回避した後、予定の飛行経路に戻り、最終目的地まで到達することを確認しました。今回の開発により、ドローン間の直接通信が、目視外飛行環境におけるドローンの飛行制御と安全運用に寄与できる見通しが得られました。

本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)

プログラム・マネージャー: 田所 諭

研究開発プログラム: タフ・ロボティクス・チャレンジ

研究開発課題: タフ・ロボティクスのためのタフ・ワイヤレス技術の研究開発

研究開発責任者: 三浦 龍(国立研究開発法人情報通信研究機構)

研究期間: 2015年度~2018年度

本研究開発課題では、電波の伝わりにくい環境下においても切れにくいタフなロボット制御用無線通信技術の研究開発に取り組んでいます。

<田所 諭 プログラム・マネージャーのコメント>

 ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジは、災害の予防・緊急対応・復旧、人命救助、人道貢献のためのロボットに必要不可欠な、「タフで、へこたれない」さまざまな技術を創り出し、防災における社会的イノベーションとともに、新事業創出による産業的イノベーションを興すことを目的とし、プロジェクト研究開発を推進しています。

 飛行ロボット(ドローン)は、災害状況や被害の情報収集に有効であり、本プロジェクトでも九州北部豪雨災害に適用するなど、さまざまな実績に加え、各所で配備も進みつつあります。しかしながら、災害救助や報道のための有人ヘリとの空域の重なりが大きな問題であり、有人機との衝突の危険性が指摘されていました。また、多数の飛行ロボットを群制御することによって、一度に広範囲の情報を収集することも求められています。

 本研究は、飛行ロボットや有人機との間で、位置情報を相互に把握することを可能にしたものであり、ニアミスを防止して安全性を高め、同時に多数の飛行体を使った災害対応を可能にする実用技術です。このような技術が国際的に標準化され、飛行ロボットの災害現場での運用が更に進むことを期待しています。

<研究の背景と経緯>

 ドローンの普及に伴い、ドローン同士やドローンと有人ヘリコプターとのニアミス等が報告されるようになっています。ドローンの産業分野での利活用が本格化し、その飛行環境が目視内から目視外に移行するにつれ、ドローンを含む飛しょう体間で位置情報を共有し、安全に距離を保ちながら運用することが望まれています。

 これまでドローンを目視外で運用する場合、操縦者との通信を行いながら、あらかじめプログラムされた飛行経路や飛行方法に従って自動で飛行させる飛行制御や、操縦者がドローンに搭載されたカメラ等のセンサによって周辺状況を把握しながら飛行制御する方法が用いられてきました。しかし、あらかじめプログラムされた飛行制御では、予期しない他のドローンや有人航空機等の接近への対応が困難であること、操縦者がドローン搭載センサによって周辺状況を把握しながら飛行制御する場合は、ドローンからの距離が近くならないと対応できない等の大きな課題がありました。また、大型の有人航空機では既に実用化されている類似のシステムはありますが、小型のドローンへの適用は制度的に難しいという課題がありました。

 一方、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が2018年6月15日に取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2018 ~小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備~」では、目視外飛行環境でのドローンの利活用の本格化に向けて必要な技術開発の一つとして、遠隔からの機体識別と飛行位置把握が挙げられています。これらのことから、NICTでは、920MHz帯を用いた機体間通信による位置情報共有システム“ドローンマッパー”を研究開発してきました。昨年3月には、NEDOのDRESSプロジェクトの一環として、このシステムを将来のドローンの運航管理に応用することを目指した実験を行い、複数ドローン間だけでなく、ドローンと有人ヘリコプターの機体間及びそれらの飛しょう体と地上局の間において、途中に障害物等がなければ約9kmの距離を隔てて1秒ごとに相互の飛行位置及び各機体の識別番号の把握が可能であることを確認しています。

 これまでの研究開発や実証実験のほとんどは、操縦者の手元にある地上局をいったん経由して飛行制御するものであり、ドローン同士が直接通信した情報に基づき飛行制御するものではなかったため、異なる操縦者が運用するドローンの位置を把握できず、ニアミス回避に利用できないという問題点がありました。

<研究の成果>

 このたび、ドローン同士の機体間通信により、位置情報や識別番号を共有するだけでなく、その位置情報をドローンの飛行制御に活用するための飛行制御装置を試作し、これを空中でのニアミス回避に応用するための実証実験を実施しました。

 本研究では、ドローンマッパー装置とドローンのフライトコンピュータを連携させるために、飛行制御装置を開発しました。この飛行制御装置は、ドローンマッパーによって共有される周辺のドローンの位置情報に基づき、接近を検知します。そして、その周辺の接近ドローンの飛行方向等により、自らのドローンの飛行速度や飛行方向を制御するコマンドをドローンのフライトコンピュータに出力し、ドローンはそのコマンドに従い飛行します。このシステムでは、ドローン同士が互いに直接共有する互いの位置情報に基づいて飛行制御するため、操縦者を介さずに、ドローン自体が自動で相手機との接近を回避したり追従したりする飛行が可能となります(図1参照)。

図1 ドローンマッパーと飛行制御装置を連接したドローンの構成図

図1 ドローンマッパーと飛行制御装置を連接したドローンの構成図

 開発したシステムの性能を評価するため、2018年12月17日及び18日に埼玉県秩父市のグランドにて、異なる操縦者が運用する複数のドローンに、ドローンマッパーと飛行制御装置を搭載し、実証実験を実施しました。本試験では、初めて実際の飛行環境において、ドローン間の直接通信により、互いの位置情報から接近を検知し、約40m程度に接近した段階で、自動でニアミス回避行動を取り、安全距離を保ったまま目的地まで到達できることを確認しました。

 本技術は、国が目指している「空の産業革命に向けたロードマップ2018」における目視外での安全なドローン運航(レベル3、レベル4)にも寄与できるものと期待されます。

<今後の課題と展望>

 今回の実験は安全確認のため毎秒1 mという非常にゆっくりとした飛行速度で実施しましたが、次のステップとして、飛行速度を更に増した状況での性能検証を行うとともに、他の機関との連携も視野に、同時飛行台数の増加や様々な飛行シナリオにおける評価についても動作検証する予定です。また、ドローン同士だけではなく、ドローンと有人ヘリコプター等との接近検知及び飛行制御を行い、その性能を明らかにしていく予定です。

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プレスリリース添付画像

図1 ドローンマッパーと飛行制御装置を連接したドローンの構成図

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