アトピー性皮膚炎“痒み”悪化のメカニズムに新知見

京都薬科大学

2019年2月21日

学校法人京都薬科大学

アトピー性皮膚炎“痒(かゆ)み”悪化のメカニズムに新知見

―痒みに脳内物質アロプレグナノロンが関与―

 京都薬科大学薬理学分野の藤井正徳准教授らの共同研究グループは、アトピー性皮膚炎において、脳内物質であるアロプレグナノロンが痒みの悪化に関与することを見いだしましたので報告します。

 今回、脳内で生合成されるアロプレグナノロンとアトピー性皮膚炎の“痒み”との関連性を初めて明らかにしたことにより、アロプレグナノロンをターゲットとしたアトピー性皮膚炎の痒みに対する新しい治療薬の開発につながることが期待されます。

 本研究の成果は、2019年2月20日(英国時間)に英国の国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン速報版で発表されました。

<アトピー性皮膚炎について>

 アトピー性皮膚炎は、強い痒みを伴う湿疹が繰り返し出現する皮膚の病気で、全国の推計患者数は45万人以上となり、その数は近年増加していると言われています。

 一般に乳幼児・小児期に発症し、加齢とともにその患者数は減少し、一部の患者が成人型アトピー性皮膚炎に移行すると考えられています。

 アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる治療法はなく、その治療法は病態に基づいて様々ですが、いずれも長期間にわたり継続的な薬剤の塗布や保湿などの治療を要するため、患者やその家族にとって、より簡便で副作用が少ない治療法の開発が課題となっています。

 痒みは、アトピー性皮膚炎において、患者に最も苦痛を与える症状であり、また、アルコール摂取や睡眠時などに増悪することがよく知られていますが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。

<研究概要>

 今回、共同研究グループは、脳内の神経組織で生合成される神経ステロイド(ニューロステロイド)のうち、鎮静/催眠作用を示すアロプレグナノロンに着目。独自に開発したヒトのアトピー性皮膚炎の病態を示すモデルマウス注1を用いて、

(1)アロプレグナノロンを脳内に投与すると、掻痒行動(痒みによる引っ掻く行動)が著しく増加すること

(2)アルコールを経口投与すると脳内アロプレグナノロンの増加を伴って掻痒行動が増加すること、また、この掻痒行動の増加がアロプレグナノロン合成酵素阻害薬であるフィナステリドの投与により抑制されること

を発見しました。本成果は、アロプレグナノロンとアトピー性皮膚炎の痒みとの関連性を示す初めての知見であり、新しい治療薬の開発につながることが期待されます。

本研究の概要

図.本研究の概要.

アトピー性皮膚炎を発症したマウスでは、(1) アロプレグナノロン (ALLO) が増加することにより掻痒行動が増加する.(2) アルコール摂取による脳内ALLOの増加および掻痒行動に対してフィナステリドが有効.

<備考> 本研究は、文科省科学研究費補助金・若手研究(B) (25870894) および基盤研究(C) (16K09000)、京都薬科大学科学振興基金 (12-05および15-04) などの支援を受けて行なわれました。

注1) Fujii et al. “Atopic dermatitis-like pruritic skin inflammation caused by feeding a special diet to HR-1 hairless mice.” Exp. Dermatol., 14, 460–468 (2005)

<発表雑誌>

雑誌名:

Scientific Reports

発表タイトル:

Brain allopregnanolone induces marked scratching behaviour in diet-induced atopic dermatitis mouse model

著者:

Masanori Fujii1) *, Sayaka Ohgami1), Erika Asano1), Takanori Nakayama1), Takahiro Toda1), Takeshi Nabe1,2), Susumu Ohya1,3)

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著者所属:

1)京都薬科大学 薬理学分野

2)摂南大学 薬学部 薬効薬理学研究室

3)名古屋市立大学 医学部 薬理学分野

[研究に関するお問い合わせ先]

京都薬科大学 薬理学分野 

准教授  藤井 正徳

〒607-8414 京都市山科区御陵中内町5

TEL: 075-595-4668  FAX:075-595-4764

E-mail: fujii@mb.kyoto-phu.ac.jp

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本研究の概要

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