手で触れたときにやわらかさ・心地よさを実感するほど唾液中のオキシトシン量が増えることを確認

花王

2020/10/13 11:10

2020年10月13日

花王株式会社

花王株式会社(社長・澤田道隆)感覚科学研究所とサニタリー研究所は、養育者と子どもの間の愛着形成に関わるホルモン「オキシトシン」※1と触感の関係について研究を進めています。このたび、手で触れたときにやわらかさや快感情(心地よさ)を実感するほど、唾液中のオキシトシン量が増加することを確認しました。

本研究内容は、第61回日本母性衛生学会学術集会(2020年10月9~10日、オンライン開催)にて発表しました。

※1 オキシトシン: 養育者と子どもの間の愛着形成に関わる脳由来のホルモンであることが報告されており、養育者のオキシトシンの増加に伴って子どものオキシトシンも増加し、子どもの社会的発達を促すことが示唆されています。また脳内と唾液中のオキシトシンは関連することが報告されています。

 

背景

養育者と子どもの関係性は、両者のこころとからだの育みに大きな影響を与えます。オキシトシンというホルモンは、養育者と子どもの間の安定した愛着形成において重要なはたらきをしているといわれています。

花王は、赤ちゃん用紙おむつなどの乳幼児向け商品開発の基盤研究として、このオキシトシンに着目した研究を行なってきました。2018年の先行研究により、凹凸の形状で風合いに差をつけた赤ちゃん用紙おむつに使われる素材に成人女性が手の平側で触れたとき、その触感の違いによって唾液中のオキシトシン量の変化に差異が出ることがわかっています※2。その際は、2つの素材のうち、より「やわらかい」「ふんわりする」と感じられるものを触ったときに、唾液中のオキシトシン量が増加することが示されました。

そこで今回、触感の違いによるオキシトシン量の変化をさらに追究するため、さまざまな風合いの生地に手の平側で触れたときの唾液中のオキシトシン量の変化を解析しました。

※2 2019年1月29日ニュースリリース:手の平で物に触れる行動と唾液中のオキシトシン量との関連性を確認https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2019/20190129-001/

 

試験方法

・試験参加者: 20~50代の妊娠・授乳をしていない女性14名

・触 ってもらった生地:一般的に触感が心地よく感じられそうなものから、摩擦性・弾力性ができるだけバラつくように選択した5種類(図1)。

①眼鏡拭き(ポリエステル/ナイロン超極細繊維)

②シルク毛布

③マイクロファイバー毛布

④ベロア生地(ぬいぐるみなどによく使われる)

⑤カシミヤセーター

図1 試験で使用した生地

 

視覚による影響を排除するため、生地は外から見えない不透明なボックスに入れて底面に動かないように固定しました。試験参加者はボックス内に両手を入れ、手の平と指を生地につけた状態で前後左右に自由に滑らせるように動かして触りました(図2)。ひとつの生地に対して「30秒ボックスに手を入れて触ったあと、30秒生地から手を離して触らず安静にする」という動作を5回繰り返しています。

 

図2 生地の触り方

 

生地に触る前と触る動作がすべて終了したあとに唾液を採取してオキシトシン量を測定し、前後の変化率を算出しました。さらに、触る動作がすべて終了した直後に、生地の触感についての3項目(やわらかさ、なめらかさ、ふんわり感)に、快感情(心地よさ)を加えた計4項目を試験参加者に評価してもらいました。これらの項目の評価には、10 cm Visual Analog Scale(VAS)を用いました。これは試験参加者の感覚を10cmの長さの直線上で示すものです。たとえば「やわらかさ」を例にとると、左端(0 cm)が「やわらかくない」、右端(10cm)が「非常にやわらかい」を意味しており、試験参加者はどの程度やわらかさを感じたかをスケールの任意の場所で評価します。

なお、各試験参加者は、1日にひとつの生地にしか触れていません。

 

結果

今回の研究では、5種類の生地の中に、手の平側で触れた前後でオキシトシン量が有意に変化したものはありませんでした。しかし、分析の結果、試験参加者の触感評価とオキシトシン量の変化に関係があることがわかりました。

やわらかさ」の評価とオキシトシン量変化率の間に、有意な弱い正相関がありました(図3左)。また、「やわらかさ」の評価で全体を2つのグループに分けると、やわらかさの評価が高いグループでオキシトシン量の変化率も大きくなっていました(図3右)。これは、試験参加者が生地を触ってやわらかさを実感するほど、オキシトシン量が増えることを意味しています。

 

図3 試験参加者のやわらかさ評価とオキシトシン量変化率

 

快感情(心地よさ)の評価とオキシトシン量変化率との間にも、有意な弱い正相関がありました(図4左)。快感情(心地よさ)の評価で全体を2つのグループに分けると、快感情(心地よさ)の評価が高いグループでオキシトシン量の変化率も大きくなっていました(図4右)。これは、試験参加者が生地を触って「心地よい」と実感するほど、オキシトシン量が増えることを意味しています。


図4 試験参加者の快感情(心地よさ)評価とオキシトシン量変化率

 

まとめ

手で触れたときにやわらかさや快感情(心地よさ)を感じるほど、養育者と子どもの間の愛着形成に関わるオキシトシンが増えることが示唆されました。この研究から、養育者が触れて「やわらかい、心地よい」と感じるものを子どもの衣類やおむつなどに用いることが、養育者のオキシトシンの上昇を介した養育者と子どもの関係性の向上に寄与する可能性が考えられます。

花王は今後も、五感を介した養育者と子どもの関係性向上に関する研究を深めると共に、広く社会に情報提供を行なっていきます。

 

本研究をご指導いただいた、桜美林大学リベラルアーツ学群 山口創教授からのコメント

オキシトシンは、末梢器官ではホルモンとして、中枢神経では神経伝達物質として作用する脳由来の物質であり、養育者と子どもの間の愛着形成に関わることが報告されています。末梢の主な作用は、ストレス反応の抑制や疼痛の緩和、中枢における作用は、不安や抑うつの低下や信頼関係の構築といった作用が知られています。また親子のオキシトシンは同調するため、養育者のオキシトシンの増加に伴って子どものオキシトシンも増加し、親密な関係の形成や共感などの子どもの社会的発達を促すことが示唆されています。

本研究では、手に触れるものによるやわらかさ、心地よさの実感で養育者のオキシトシンの増加が期待できることが示唆されており、養育者と子どもの関係性を考えるうえで非常に興味深い結果となっています。

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

図1 試験で使用した生地

図2 生地の触り方

図3 試験参加者のやわらかさ評価とオキシトシン量変化率

図4 試験参加者の快感情(心地よさ)評価とオキシトシン量変化率

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