sacituzumab govitecan、転移性トリプルネガティブ乳がんの治療薬として、欧州委員会の販売承認を取得

sacituzumab govitecanが、侵攻性の高いタイプの 転移性乳がん患者さんにとって、重要で新たな治療選択肢に

2021年12月3日

ギリアド・サイエンシズ株式会社

sacituzumab govitecan、転移性トリプルネガティブ乳がんの セカンドライン治療薬として、欧州委員会の販売承認を取得

医師が選択した化学療法と比較し、sacituzumab govitecanが転移性トリプル ネガティブ乳がんに対し、全生存期間を有意に延長したことを示す IIIASCENT試験結果に基づく承認―

sacituzumab govitecanが、侵攻性の高いタイプの 転移性乳がん患者さんにとって、重要で新たな治療選択肢に

 

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ、ナスダック:GILD、以下「ギリアド」)は、画期的新薬の抗Trop-2抗体薬物複合体であるsacituzumab govitecanについて、2種類以上の全身療法歴を有する(少なくとも1種類は進行した病変に対して)切除不能、または転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の成人患者さんを対象とした単剤療法として、欧州委員会(EC)の販売承認を得たことを発表しました。

 

フランス・レンヌのユージーン・マルケスセンター、メディカル・オンコロジー部門、乳がんグループ長でシニア・オンコロジストであるベロニク・ディエラス医師 (Véronique Diéras, PhD, MD)は、「転移性TNBCは、特に治療が困難な疾患で、この疾患を抱える欧州の患者さんには、これまでにない新たな治療オプションが緊急に必要とされてきました。転移性TNBCのセカンドラインを含む本承認は、この疾患を持つ女性が長く生きられるための重要な第一歩となり、地域にとって意義深いものです」と述べています。

 

TNBCは最も侵攻性の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約15%を占めます。若年層や閉経前の女性において発症が多く、黒人やヒスパニック系の女性に多くみられます。このサブタイプの乳がんの5年生存率は12%で、他の乳がんの28%に比べて低く、特に再発・難治性では、生活の質が著しく低下します。

 

ギリアド・サイエンシズのチーフ・メディカル・オフィサーであるマダッド・パーセイ (Merdad Parsey, MD, PhD)は、「ギリアドでは、緊急性の高い医療ニーズに応え、変革的な科学の力により新しい治療オプションを提供するため、これまでの治療限界を広げる挑戦をしています。」「私たちは、転移性TNBCの治療がいかに困難であるかを理解しており、侵攻性疾患を抱える人々に長い生存期間をもたらす可能性のあるセカンドライン治療オプションとして、sacituzumab govitecanを提供できることを誇りに思います」と述べています。

 

欧州委員会の決定は、第III相ASCENT試験においてsacituzumab govitecanが死亡リスクを49%低減し、医師が選択した化学療法の全生存期間の中央値が6.9カ月であったのに対し、sacituzumab govitecanは11.8カ月に延長したことを示す結果(HR:0.51、95%CI:0.41-0.62、p<0.0001)に基づいています。また、脳転移の有無にかかわらず、無作為化された全ての患者さんにおいて、死亡または病状悪化のリスクが57%低下し、統計学的、臨床的に有意でありました。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、医師が選択した単剤化学療法が1.7カ月であったのに対し、sacituzumab govitecanは4.8カ月に延長しました(HR: 0.43; 95% CI: 0.35-0.54; p<0.0001)。グレード3以上の主な副作用は、好中球減少症(49.5%)、白血球減少症(12.0%)、下痢(10.7%)、貧血(10.1%)、発熱性好中球減少症(6.6%)、疲労(5.2%)、低リン血症(5.2%)、悪心(4.1%)、嘔吐(3.0%)でした。sacituzumab govitecanの米国添付文書には、重度または生命を脅かす好中球減少症および重度の下痢に関するBOXED WARNINGが記載されています。下記の「重要な安全性情報」を参照してください。

今回の承認に加え、sacituzumab govitecanは転移性TNBCの治療薬としてオーストラリア、カナダ、英国、スイス、米国において承認されています。シンガポールと中国では、エベレスト・メディシン社(Everest Medicines)が承認申請し、規制当局による審査が行われています。またsacituzumab govitecanは、転移性TNBCに対するタキサン系抗がん剤投与後の望ましい治療選択肢として、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)の最新の臨床試験ガイドラインにも含まれています。

 

ASCENT試験について

ASCENT試験は、230の試験施設で500例を超える患者さんを登録したグローバルな非盲検、無作為化、第III相試験です。ASCENT試験は、切除不能で局所進行性または転移性のTNBCで、少なくとも2種類の全身療法歴を有する患者さんを対象に、sacituzumab govitecanの有効性と安全性を、医師が選択した単剤化学療法と比較して評価しました。患者さんは、無作為にsacituzumab govitecanまたは担当医師が選択した化学療法のいずれかに割り当てられました。主要評価項目は、脳転移のない患者さんの無増悪生存期間(PFS、盲検化された独立中央審査による判定)でした。副次的評価項目は、全試験集団またはITT(intention-to-treat)集団のPFS、ITT集団および脳転移のないサブグループの全生存期間、独立して決定された客観的奏効率、奏効期間、RECISTガイドライン 1.1(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)に基づく奏効開始までの期間、生活の質、および安全性です。ASCENTに関する詳しい情報は、http://clinicaltrials.gov/show/NCT02574455をご参照ください。

 

TNBCについて

TNBCは、最も侵攻性の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約15%を占めます。若い閉経前の女性がこの診断を受けることが多く、黒人やヒスパニック系の女性に多くみられます。TNBCの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体を持たず、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)も限られています。TNBCはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法が極めて限られており、再発や転移の可能性が高いと言われています。他の乳がんにおける転移再発までの平均期間が5年であるのに対し、TNBCは約2.6年で、相対的な5年生存率ははるかに低くなっています。転移性TNBCの女性における5年生存率が12%であるのに対し、他のタイプの転移性乳がんの女性では28%となっています。

 

sacituzumab govitecanについて

sacituzumab govitecanは、転移性TNBCや転移性尿路上皮がん(UC)を含む複数のタイプの上皮性腫瘍で過剰に発現するタンパク質であるTrop-2受容体に対するファースト・イン・クラスの抗体とトポイソメラーゼ阻害剤の複合体です。高いTrop-2の発現率は、不良な生存率や再発率に関連します。sacituzumab govitecanは、オーストラリア、カナダ、英国、欧州連合、スイス、米国を含む複数の国で、転移性TNBCのセカンドラインとして承認されています。またsacituzumab govitecanは、米国では転移性UCへの使用も承認されており、ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+/HER2-)の転移性乳がんおよび転移性非小細胞肺がんの治験薬としても開発が進められています。複数の固形がんに対する追加評価も進行中です。

 

Sacituzumab govitecanの米国添付文書に記載されている重要な安全性情報

EUにおけるsacituzumab govitecanの使用に関する推奨事項(処方者向けの最終的な安全性情報を含む)は、販売承認申請の一環として評価され、EU SmPCに詳細が記載されています。

 

米国以外の国でのsacituzumab govitecanの使用に関する推奨事項は、承認/販売プロセスの一環として、現地の関連規制当局による評価を受けます。承認された場合、推奨事項は現地の添付文書に詳述されます。

 

警告:好中球減少症および下痢

●重度または生命を脅かす好中球減少症が生じる可能性があります。好中球絶対数が1500/mm3以下の場合や発熱性好中球減少の場合はsacituzumab govitecanの投与を中止してください。治療中は定期的に血球数を測定してください。二次予防のためにG-CSFを検討してください。発熱性好中球減少症の患者さんには、遅滞なく感染症治療を開始してください。

●重度の下痢が生じる可能性があります。下痢が生じた場合には、患者さんの様子を観察し、必要に応じて水分と電解質を投与してください。重症度を問わず初期の下痢に対しては、禁忌でなければアトロピンを投与し、遅発性の下痢の発現時には、感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかにロペラミドの投与を開始してください。重度の下痢が発生した場合は、グレード1以下になるまでsacituzumab govitecanの投与を中断し、その後の投与は投与量を減らしてください。

 

禁忌

●sacituzumab govitecanに対する重度の過敏症反応

 

警告・注意事項

好中球減少症: 重度、生命を脅かす、または致命的な好中球減少症が発生する可能性があり、投与量の変更が必要になる場合があります。sacituzumab govitecanで治療を受けた患者さんの61%に好中球減少症、47%の患者さんにグレード3~4の好中球減少症、7%の患者さんに発熱性好中球減少症が認められました。いずれかのサイクルの第1日目に好中球絶対数が1500/mm3以下の場合、またはいずれかのサイクルの第8日目に好中球数が1000/mm3以下の場合、sacituzumab govitecanの投与を中止してください。発熱性好中球減少が発生した場合は、sacituzumab govitecanの投与を中止してください。

 

下痢: 下痢はsacituzumab govitecanの投与を受けた全患者さんの65%、グレード3~4の下痢は12%の患者さんに認められました。1名の患者さんに下痢の後の腸管穿孔がみられ、好中球減少性大腸炎は患者さんの0.5%に認められました。グレード3~4の下痢が認められた場合はsacituzumab govitecanの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で投与を再開してください。発現時には感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかにロペラミドを開始してください(最初は4mg、その後は下痢のたびに2mgずつ、最大で1日16mgまで投与)。下痢が治まってから12時間後にロペラミドを中止してください。臨床的に必要であれば、追加の支持療法(例:水分と電解質の補給)を受けることもできます。治療に対して過剰なコリン作動性反応を示した患者さんは、その後の治療において適切な前投薬(例:アトロピン)を受けることができます。

 

過敏症および注入に伴う反応:sacituzumab govitecanでは、生命を脅かすアナフィラキシー反応を含む重篤な過敏症反応が発現しています。重篤な徴候・症状には、心停止、低血圧、喘鳴、血管浮腫、腫脹、肺臓炎、皮膚反応などがあります。投与後24時間以内の過敏症反応は37%の患者さんに発現しました。グレード3~4の過敏症は患者さんの2%に発現しました。sacituzumab govitecan投与の永続的な中止に至った過敏症反応の発現率は0.3%でした。アナフィラキシー反応の発現率は0.3%でした。前投薬が推奨されます。投与中および投与終了後少なくとも30分間は、過敏症および注入に伴う反応について患者さんを注意深く観察してください。このような反応を治療するための薬や緊急用の器具をすぐに使用できるようにしてください。グレード4の注入を伴う反応が見られた場合は、sacituzumab govitecanの投与を永続的に中止してください。

 

悪心および嘔吐:sacituzumab govitecanの投与を受けた全患者さんの66%に悪心が発現し、このうち4%にグレード3の悪心がみられました。嘔吐は39%の患者さんに認められ、このうち3%の患者さんにグレード3~4の嘔吐がみられました。化学療法誘発性の悪心・嘔吐(CINV)の予防のために、2剤または3剤の併用療法(例えば、デキサメタゾンと5-HT3受容体拮抗薬またはNK1受容体拮抗薬のいずれか、および適応となる他の薬剤)で前もって治療してください。グレード3の悪心またはグレード3~4の嘔吐に対してはsacituzumab govitecanの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で追加の支持手段を用いて再開してください。

臨床的に必要な場合には、追加の制吐剤やその他の支持手段を用いることもできます。全ての患者さんに、悪心と嘔吐の予防および治療のために明確な指示を受けた薬は持ち帰るよう依頼してください。

 

UGT1A1活性の低下した患者さんにおける副作用リスクの上昇:

ウリジン二リン酸-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)*28アレルがホモ接合体の患者さんは、好中球減少症、発熱性好中球減少症、貧血のリスクが高く、sacituzumab govitecanによるその他の副作用のリスクも高くなる可能性があります。グレード3~4の好中球減少症の発現率は、UGT1A1*28アレルがホモ接合体の患者さんで67%、UGT1A1*28アレルがヘテロ接合体の患者さんで46%、野生型アレルがホモ接合体の患者さんで46%でした。グレード3~4の貧血の発現率は、UGT1A1*28アレルがホモ接合体の患者さんで25%、UGT1A1*28アレルがヘテロ接合体の患者さんで10%、野生型アレルがホモ接合体の患者さんで11%でした。UGT1A1の活性が低下していることが認められた患者さんについては、副作用を注意深く観察してください。UGT1A1の機能低下を示す可能性のある、急性の早期発症または異常に重度の副作用が認められた患者さんにおいては、観察された副作用の発現、持続時間および重症度の臨床的評価に基づいて、sacituzumab govitecanの投与を中断するか、または永続的に中止してください。

 

胚・胎児への毒性: sacituzumab govitecanは、その作用機序から、妊娠中の女性に投与した場合、催奇形性および/または胚・胎児致死を引き起こす可能性があります。sacituzumab govitecanには遺伝毒性成分であるSN-38が含まれており、急速に分裂する細胞を標的としています。妊婦や妊娠可能な女性には、胎児への潜在的なリスクについて説明してください。妊娠可能な女性には、sacituzumab govitecanの投与中および最終投与後6カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。妊娠可能な女性パートナーを持つ男性患者には、sacituzumab govitecanの投与中および最終投与後3カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。

 

副作用

ASCENT試験(IMMU-132-05において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、疲労、好中球減少症、下痢、悪心、脱毛症、貧血、便秘、嘔吐、腹痛、食欲減退でした。1%以上の頻度で認められた重篤な副作用は、好中球減少症(7%)、下痢(4%)、肺炎(3%)でした。重篤な副作用は27%の患者さんに報告され、5%の患者さんが副作用により治療を中止しました。ASCENT試験で最も多く認められたグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。

 

TROPHY試験(IMMU-132-06において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、下痢、疲労、好中球減少症、悪心、感染症、脱毛、貧血、食欲減退、便秘、嘔吐、腹痛、発疹でした。5%以上の頻度で認められた重篤な副作用は、感染症(18%)、好中球減少症(12%、うち発熱性好中球減少症は10%)、急性腎障害(6%)、尿路感染(6%)、敗血症または菌血症(5%)でした。重篤な副作用は44%の患者さんで報告され、10%が副作用のために中止しました。TROPHY試験で最も多かったグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。

 

薬物相互作用

 

UGT1A1阻害剤:UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecanを併用すると、SN-38の全身曝露量が増加する可能性があるため、副作用の発現率が高まる可能性があります。UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecanの併用は避けてください。

 

UGT1A1誘導剤:UGT1A1誘導剤を併用している患者さんでは、SN-38への曝露量が大幅に減少する可能性があります。UGT1A1誘導剤とsacituzumab govitecanの併用は避けてください。

 

ギリアド・サイエンシズについて

ギリアド・サイエンシズは、すべての人々にとって、より健康な世界の実現を目指し、30年以上にわたり医療の革新を追求し、飛躍的な進歩を遂げてきたバイオ医薬品企業です。当社はHIV、ウイルス性肝炎、がんなどの生命を脅かす疾患の予防と治療のため、革新的な医薬品の開発に取り組んでいます。カリフォルニア州フォスターシティに本社を置き、世界35カ国以上で事業を行っています。

 

ギリアドの将来予想に関する記述

このプレスリリースには、1995年米国私募証券訴訟改革法に規定される将来の見通しに関する記述が含まれており、これにはリスク、不確実性、およびその他の要因が含まれます。これらの要因には、sacituzumab govitecanを含む臨床試験を、現在想定されているスケジュールで、または全く行わずに開始、進行、完了するギリアドの能力をはじめ、sacituzumab govitecanを含む進行中または追加の臨床試験から好ましくない結果が得られる可能性などがあります。転移性TNBC、転移性乳がん、転移性UC、転移性非小細胞肺がん、その他の固形がんの治療に対するsacituzumab govitecanの追加承認を含み、規制当局からの承認をギリアドが適時または全く得られない可能性、そのような承認に重大な使用制限が課されるリスク、医師がsacituzumab govitecanを処方することの利点を認めないリスク、および前述のいずれかの基礎となる仮定などがあります。これらおよびその他のリスク、不確実性、その他の要因は、ギリアドが米国証券取引委員会に提出した2021年9月30日に終了した四半期に関するForm 10-Qの四半期報告書に詳細に記載されています。これらのリスク、不確実性およびその他の要因により、実際の結果が将来の見通しに関する記述で言及されている内容と大きく異なる可能性があります。歴史的事実以外のすべての記述は、将来予想に関する記述とみなされる可能性があります。このような将来の見通しに関する記述は、将来の業績を保証するものではなく、リスクと不確実性を内包するものであり、このような将来の見通しに関する記述に過度に依存しないように注意してください。すべての将来の見通しに関する記述は、ギリアドが現在入手可能な情報に基づいており、ギリアドはそのような将来の見通しに関する記述を更新する義務を負わず、またその意図も放棄します。

 

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