“企業規模”と”社内コミュニケーション”の現実

~ストレスチェックのビッグデータから判明した驚きの関係~

2022年3月31日

株式会社ドクタートラスト

https://doctor-trust.co.jp/

 株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者103万人のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。今回は2020年度にストレスチェックの実施を受託した企業のデータから「企業規模と社内コミュニケーションの関係」を分析しました。

 

 調査結果のポイント

 

 従業員数50名未満の企業と、同1,000名以上の企業について、ストレスチェック項目のうち「社内のコミュニケーション状況」に関わる設問への回答状況を分析したところ、以下が判明いたしました。

 

【「規模の大きい企業」のほうが良好】

・ 同僚と気軽に話せる、相談できるか

・ 互いを認め合う人間関係が構築されているか

【 「規模の小さい企業」のほうが良好】

・ 職場で従業員の意見が聞かれるか

【 企業規模の影響がない】

・ 上司と気軽に話せる、相談できるか

・ 個々人の価値観を尊重しているか

・ 経営層からの情報は信頼できるか

 

はじめに

 

 ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促すこと、また、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられています。

 ドクタートラストでは、ストレスチェックの集団分析データをもとに、さまざまな企業で職場環境改善コンサルティングを行っています。その際、コミュニケーションについてお話をすると「うちは規模が大きいため、どうしても意思の疎通がしづらい」、「うちは小さい会社ですから。一人ひとりが自分で考えて動かないと仕事が回らないんです……! 大きい企業だとコミュニケーションをとる余裕があるかもしれないのですが」といったように、「企業規模がコミュニケーションを困難にしている」旨を企業担当者から伺います。

 では実際に「コミュニケーションの円滑さ」は企業規模によって異なるのでしょうか。ストレスチェックデータの分析調査を試みました。

 本分析ではストレスチェック受検対象者数に基づいて「従業員数50名以下」「従業員数1,000名以上」に企業を区分、当該企業で実際にストレスチェックを受検された方のデータを集計、分析しています。

また、「社内のコミュニケーション状況」に関わる設問として以下の9項目の回答傾向を分析しています。

 

<ストレスチェックの項目で「コミュニケーション」に関する設問>

※ストレスチェックは設問数57問版、80問版の2種類があります。⑤~⑨は80問版のみの設問です。

① 上司は気軽に話ができますか?

② 同僚は気軽に話ができますか?

③ 上司は、あなたの個人的な問題を相談したら、きいてくれますか?

④ 同僚は、あなたの個人的な問題を相談したら、きいてくれますか?

⑤ 努力して仕事をすれば褒めてもらえる

⑥ 一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ

⑦ 経営層からの情報は信頼できる

⑧ 職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている

⑨ 私たちの職場では、お互いに理解し認め合っている

 

 なお、ストレスチェックは、各設問に対して「そうだ」「まあそうだ」「ややちがう」「ちがう」の4択形式で回答します。本分析では「そうだ」「まあそうだ」を良好な回答群、「ややちがう」「ちがう」を不良な回答群としています。

 

調査結果

 

1.  規模の大きい企業のほうが、同僚とのコミュニケーションが円滑であり、互いを認め合う信頼関係が構築されている

 

図1

 

図2

 

図3

 

 分析の結果、従業員数1,000名以上で良好な回答群が多かったのは「② 同僚は気軽に話ができますか?」「④ 同僚は、あなたの個人的な問題を相談したら、きいてくれますか?」「⑨ 私たちの職場では、お互いに理解し認め合っている」の3問です。

 職場の心理的安全性を醸成する、または信頼関係を構築するうえでは、コミュニケーションの量が重要とされていますが、同僚とのコミュニケーションが円滑だからこそ、互いに認め合える信頼関係が醸成されるのだと考えられます。

 

2.  規模の小さい企業のほうが、従業員の意見がよく聞かれる

 

図4

 

 従業員数50名未満のほうが良好な回答群が大きかったのは「⑧ 職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている」です。人数が少なければ、それだけ自分の声が会社に直接届きやすいことがよくわかります。

 

3.  上司とのコミュニケーションは企業規模に影響されない

 

図5

 

図6

 

 同僚とのコミュニケーション状況は、企業規模の大きいほうが円滑な傾向にあるとわかりました。続いて「① 上司は気軽に話ができますか?」「③ 上司は、あなたの個人的な問題を相談したら、きいてくれますか?」、すなわち上司とのコミュニケーション状況を分析したところ、企業規模による有意な差はみられませんでした。上司とのコミュニケーションは仕事の報告や連絡、相談など「業務連絡」が想定されることから、企業規模との関連がなかったと推察されます。

 この領域で不良な回答群の多い企業は、あくまでその企業特有の課題を抱えている可能性があり、「うちは大企業だから」「小さな会社だから」とコミュニケーションを諦めるのは、本質から目を背けているだけかもしれません。

 

4.  個々人の価値観を尊重してくれるかは企業規模に影響されない

 

図7

 

図8

 

 さらに「⑤ 努力して仕事をすれば褒めてもらえる」「⑥ 一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ」においても企業規模による有意な差はみられていません。従業員を大切にし、個人の価値観を尊重する姿勢は企業規模に影響されないといえます。

 この結果を踏まえると、従業員一人ひとりの考えを尊重するのが難しい理由として規模の大小を挙げるのは適切ではありません。「上司とのコミュニケーション」同様、その会社特有の課題があると考えられます。「もっとアイディアがほしい」「新しい風を吹かせたい」という想いがあるのであれば、皆の価値観を知るにはどうやったらいいかを考えることが必要です。

 

5.  経営層からの情報の信頼性は企業規模によらない

 

図9

 

 最後に分析を行ったのは「⑦ 経営層からの情報は信頼できる」です。この設問で不良回答の多い企業は「人数が多いのでなかなかメッセージは届かないんですよ。一般従業員はほとんど経営層と顔を合わせることもありませんから」、「小さい会社なので常に変化していくのは当たり前。おそらくこのスピード感についてこられない人が悪い回答を付けているんですよ」と規模をその理由としがちです。しかし、企業規模で回答傾向に有意な差はみられませんでした。

 

おわりに

 

 社内のコミュニケーション状況と一口にいっても、その円滑さが企業規模と関連しているもの、していないものが存在していることがわかりました。もっとも、規模によって差があった設問でも課題を放置していいという理由にはなりません。職場改善においては、自社のおかれた状況下で「何ができるか」を模索していく姿勢が欠かせません。

調査対象

 

 2020年度にドクタートラストでストレスチェックを受検したうち、「従業員数50名未満」あるいは「従業員数1,000名以上」の企業に勤務されている方

 

従業員数50名未満の企業:1,564名(80問版のみの設問では1,287名)

従業員数1,000名以上の企業:139,603名(80問のみの設問では27,977名)

 

ドクタートラストについて

 

株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/

株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内第1位※)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、100万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、 衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。※帝国データバンク調べ

 

ストレスチェック研究所 https://stella-sc.jp/

ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。

 


ストレスチェックサービスに関するお問合せ https://www.stresscheck-dt.jp/

株式会社ドクタートラスト 健康経営推進本部

TEL:03-3464-4000(代表)

企業さま用お問合せフォーム: https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form/

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