最先端材料科学研究:高強度材料に適用可能な力学特性の簡易評価手法を開発
ハイスループット数値シミュレーションにより構築したデータベースを活用
2022/11/08
Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌 プレスリリース
配信元:国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS) 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Date: 8 November 2022
最先端材料科学研究:高強度材料に適用可能な力学特性の簡易評価手法を開発
(Tsukuba 8 November) ハイスループット数値シミュレーションにより構築したデータベースを活用
物質・材料研究機構のTa-Te Chenポスドク研究員,渡邊育夢 主幹研究員は押し込み試験を用いた新しい力学特性の簡易評価手法を提案しました。提案手法を用いることで,高強度材料に対する評価精度が高まり,力学特性データベース構築への活用が可能となります。
この研究成果は、Science and Technology of Advanced Materials: Methods, Vol. 2 (2022) p. 416に掲載されました。
剛性や強度などの力学特性は製品や部品の構造設計,土木構造物や自動車などの安全性の検討に必須の情報です。力学特性は一般に引張試験や圧縮試験で評価されますが,これらの試験は一つの試料から一つのデータしか得られず,試験片加工などを考えるとデータ収集に時間と労力がかかってしまうため,効率的なデータベース構築が困難でした。そこで,代わりに簡易に評価できる硬さ試験が併せて利用されています。硬さ試験では,単一試料から多数の評価データを得ることができ,バルク試料から単結晶粒の微視スケール力学特性を評価するという使い方もできます。
押し込み試験は硬さ試験を拡張して,荷重‐深さ関係を制御・計測しながら評価する試験方法で,数値シミュレーションと組み合わせることで,引張試験や圧縮試験に対応する応力‐ひずみ関係を推定できます。ただし,既存の推定モデルでは,応力‐ひずみ関係を線形則やべき乗則といった単純な関数で表現するため,鉄鋼のような高強度材料の応力‐ひずみ関係を表現できないことが知られていました。推定モデルに項を追加して表現性能を高めることは可能ですが,その場合,追加の実験データが必要となってしまうことが課題でした。
そこで,本研究では,推定したい応力‐ひずみ関係が既存の2つの推定モデル~線形則とべき乗則~の間に位置する性質を利用して,追加の実験なしに表現性能を高めた関数の材料定数を同定できる方法を提案しました。また,これまでの手法では,各実験データに対して,それぞれ数値シミュレーションで対応する応力‐ひずみ関係を推定する必要がありましたが,本研究ではハイスループット数値シミュレーションによって事前にデータベースを作成しておき,読み取る方法を採用しました。これによって,実験評価とほぼ同時に推定結果を得ることができます。
近年,押し込み試験は高温力学特性の評価へも活用されはじめており,提案手法の拡張を進めています。手法の開発が進めば,耐熱合金開発の材料データベースの効率的な構築などへ寄与できると期待されます。
図1:数値シミュレーションを用いて材料定数のデータベースを事前に作成
図2:圧痕形状の情報を用いて引張/圧縮試験相当の応力‐ひずみ関係を推定
論文情報
タイトル:Data-driven estimation of plastic properties in work-hardening model combining power-law and linear hardening using instrumented indentation test
著者:Ta-Te Chen & Ikumu Watanabe*
*Research Center for Structural Materials, National Institute for Materials Science, Tsukuba, Ibaraki, Japan (E-mail: WATANABE.Ikumu@nims.go.jp)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 2 (2022) p. 416
最終版公開日:2022年10月17日
本誌リンク https://doi.org/10.1080/27660400.2022.2129508(オープンアクセス)
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- 業種 各種団体
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