3Dプリンティング×CO2吸収コンクリート 環境負荷低減に貢献する建設物の製造実験を開始

炭酸化養生装置を「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」に設置

金沢工業大学

2023年7月12日

学校法人金沢工業大学

鹿島建設株式会社

学校法人金沢工業大学(理事長:泉屋 吉郎、以下 金沢工大)と鹿島建設株式会社(社長:天野 裕正、以下 鹿島)は、両者の知見を活かしながら、建設分野向けのセメント系3Dプリンティングに使用する材料に、環境配慮型のCO2吸収コンクリート「CO2-SUICOM®※」の技術を取り入れる、「カーボンネガティブ3Dプリンティング」に関する研究開発を進めています。

今般、金沢工大のやつかほリサーチキャンパス内の「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」(以下Lab)に、3Dプリンティングで造形した部材にCO2を強制的に吸収させるための「炭酸化養生装置」を設置し、環境負荷低減に貢献する建設物の製造実験を本格的に開始しました。

 

 

 炭酸化養生装置

 

3Dプリンティングで造形したベンチの炭酸化養生を開始する様子

 

【共同研究の目的と現在の状況】

 建設業界は、国土交通省が推進する「i-Construction」に代表されるように、ICTの全面的な活用により省人化及び生産性向上を図る取組みが強く求められている一方で、環境負荷低減という新たな側面からの技術開発も喫緊の課題となっています。金沢工大と鹿島の共同研究では、セメント系3Dプリンティングの建設工事への採用による生産性向上に加えて、3DプリンティングとCO2-SUICOMの組み合わせによるカーボンニュートラル社会の実現に資する画期的な施工技術の社会実装を目指しています。

 2022年4月に、金沢工大のLabにロボットアーム式3Dプリンターを設置して、3Dプリンティングに適したCO2-SUICOMの配合や、3Dプリンターの制御方法等について研究を重ねてきました。その結果、これまでに複雑な形状をもった最大長さ5mの部材を造形しました。

 

 

ロボットアーム式3Dプリンター

 

 造形状況

 

 試作した部材の例

 

【炭酸化養生装置の概要】

 CO2-SUICOMは、製造時に配合した特殊混和材とCO2が反応し、部材内にCO2を吸収・固定化する特長を持つコンクリートです。このたび設置した炭酸化養生装置は、コンクリート打設後に所定の品質が得られるように、コンクリートを一定期間保護する「養生」の過程において、強制的にCO2を吸収させる「炭酸化養生」を行うためのものです。本装置は、長さ6m×高さ2.5m×幅2.4mの密閉式の「炭酸化養生槽」ならびに、温度・湿度・CO2濃度を調整した空気を吹出し口から養生槽内に吹き込み、吸込み口から回収して循環させる「養生環境制御装置」で構成されます。養生槽内部の環境を適切に管理することで、部材内にCO2を効率的に吸収させることができます。また、養生槽内にはスライドレールを備え、長尺の部材をそのまま収めることが可能です。

 

カーボンネガティブ3Dプリンティング部材の製造手順は以下のとおりです。

① ロボットアーム式3Dプリンターで部材を造形

② 部材が一定の強度に達するまでLab内で前養生

③ 部材を炭酸化養生槽に入れて、所定の期間CO2を供給し部材に吸収させる

④ 炭酸化養生後、部材を取り出して完成

 

養生を終えた部材は、製造過程で排出したCO2量を上回るCO2を吸収しており、これによりカーボンネガティブ3Dプリンティングが実現します。

 

養生環境制御装置

 

 

養生槽内部

 

【今後の予定】

 金沢工大と鹿島は今後、最適な養生条件や養生日数等について検討を行い、2023年度中に、カーボンネガティブ3Dプリンティングによる製作物を、北陸地方の自治体の公共の場に設置する予定です。

 

※CO2-SUICOM®

CO2-Storage and Utilization for Infrastructure by COncrete Materials

CO2-SUICOMは、製造過程において大量のCO2を強制的に吸収・固定化させることにより、コンクリート製造におけるトータルのCO2排出量をゼロ以下にできる世界で唯一のコンクリートです。

CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)は、 中国電力、鹿島、デンカの登録商標です。

 

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