電通PRコンサルティングの企業広報戦略研究所が『第3回インターナルブランディング®調査』を発表

社員エンゲージメント向上に向けたマネジメントがより重要に

2023年11月13日

企業広報戦略研究所(C.S.I.)

(株式会社電通PRコンサルティング内)

 

ビジネスパーソン対象 『第3回インターナルブランディング®調査』

社員エンゲージメント向上に向けたマネジメントがより重要に

~人的資本経営におけるモチベーションマネジメント~

 

企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、「人への投資」の重要性がさらに高まる近年において、「人的資本経営」の実践に向けて企業と社員のエンゲージメントを深めるにはどのような要素が重要かを測定することを目的に、従業員100人以上の上場企業に勤めるビジネスパーソン1,000人を対象とした『第3回インターナルブランディング®調査』を、本年6月に実施しました。

 

「第3回インターナルブランディング®調査」 結果ポイント

1. 上場企業で、パーパスや企業理念を設定している企業は半数以上

2. 業績が好調な企業ほど、パーパスや企業理念の浸透や仕組みづくりに余念なし

・自社が「業績好調」と回答した層は、パーパスや理念浸透に向けた自社の多様な取り組みを認識。

3. 業界によって、パーパスや企業理念の浸透や仕組みづくりにギャップ

・パーパスや企業理念の浸透や仕組みづくりが進む「情報通信・コミュニケーション」「医薬品」業界

4. 社員のエンゲージメントの高低差と、パーパス・企業理念の浸透に相関性あり

・高エンゲージメント層が勤める企業の約8割がパーパスや企業理念を設定。低エンゲージメント層は2割以下に。

・高エンゲージメント層では、企業理念に対する理解・共感・意識的行動が、約9割で得られている。

5. パーパス浸透を軸としたモチベーションマネジメントの重要性がより鮮明に

・パーパス浸透がモチベーションに、モチベーションがパフォーマンスにそれぞれ正の影響を与えていることが明らかとなった。

6. 高エンゲージメント層は、自社の社会的価値を理解し、チームで成長することを志向

・高エンゲージメント層は、自社の企業理念を通じて「社会に提供する価値」や「次世代に向けたビジョン」を理解。

7. 半数以上が社内報で企業理念を目にするも、低エンゲージメント層は無関心の傾向

・高エンゲージメント層は、トップの発信するメッセージに耳を傾ける傾向が強く、低エンゲージメント層は自社の理念を目にしても、その内容に無関心である可能性がある。

 

インターナルブランディング®モデル

「第3回インターナルブランディング®調査」は、下図のインターナルブランディング®モデルに基づいて設計されています。「インターナルブランディング®」は、株式会社電通PRコンサルティングの登録商標です。※詳細は後述。

調査結果

当社は、パーパスや企業理念の下に組織が同じ意識を共有し、一枚岩となって行動することで、組織そのものの価値を高めコーポレートブランド力の強化を図ることを「インターナルブランディング®」と定義しています。組織が一枚岩となるためには社員一人ひとりのエンゲージメント向上が欠かせません。

さらに、2023年3月期より有価証券報告書に人的資本に関する記載が義務付けられ、人材を企業成長の源泉として捉える人的資本経営がより求められるようになりました。「人的資本経営」に取り組むにあたり、経営者にはパーパスを軸としたモチベーションマネジメント、広報にはエンゲージメント創出のコミュニケーション施策立案と実践が、今後一層求められることでしょう。社員のエンゲージメントを高める「インターナルブランディング®」は、企業にとってますます重要な戦略になると言えます。

 

1. 上場企業で、パーパスや企業理念を設定している企業は半数以上

上場企業に勤めるビジネスパーソン1,000人に、自身が勤める会社(以下、自社)でパーパスや企業理念が設定されているかを尋ねたところ、52.5%が「設定されている(されている・まあされている計)」と回答しました。[図表①]

 

こうした自社の姿勢や取り組みを社員はどのように捉えているのでしょうか。本調査では、自社に対して「貢献したい」 「愛着を感じている」 「信頼している」 「誇りを感じている」の全項目において、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した人(TOP2)を、自社との「高エンゲージメント層」、全て「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答した人(BOTTOM2)を「低エンゲージメント層」と設定し、分析を行いました。[図表②③]

2. 業績が好調な企業ほど、パーパスや企業理念の浸透や仕組みづくりに余念なし

回答者全員に、勤務先企業の景況感を尋ねたところ、5割が「好調」と回答し、3割が「横ばい」、約2割の人が「不調」と回答しました。[図表④]

企業の景況感とパーパスや企業理念に関する取り組みについて分析をしたところ、「好調」と回答した層は、100点満点スコア*で50点台後半以上となる項目も多く、取り組みが進んでいることが明らかになりました。特に「パーパスや企業理念について、企業トップが積極的に社内外に発信している」の項目では、「不調」と回答した層と19.5点の差がつきました。[図表⑤~⑦]

 

 

 

3. 業界によって、パーパスや企業理念の浸透や仕組みづくりにギャップ

回答者が勤める企業の業界別で分類してみると、「情報通信・コミュニケーション」業界でパーパスや企業理念の設定・浸透が進んでいることがわかりました。また、「医薬品」業界は、社内の浸透が最も高い結果となりました。一方、「不動産・建設」業界は、設定の割合が低く、「精密機械・部品」業界は浸透度が顕著に低い結果となりました。[図表⑧]

さらに具体的な取り組み内容について尋ねた結果から、スコアの高い業界では経営戦略策定と浸透に向けたコミュニケーション、人事戦略への反映などが実践されていることが明らかになりました。[図表⑨]

 


 

4. 社員のエンゲージメントの高低差と、パーパス・企業理念の浸透に相関性あり

パーパスや企業理念は、経営や社員の行動指針として機能することから、その設定と浸透は、企業にとって重要な取り組み課題です。回答者に自社におけるパーパスや企業理念の設定状況を尋ねたところ、 高エンゲージメント層は約8割(あてはまる・まあまああてはまる計77.2%)が設定されていると回答し、社内の浸透においても約7割(同68.3%)が浸透していると回答しました。一方、低エンゲージメント層では、設定が18.5%、浸透も11.6%と、両者には大きな差が生じていました。[図表⑩]

100点満点スコア*でみると、両者の差は、設定状況で35.9点、浸透で35.3点の差がつく結果となりました。

さらに、回答者が自社の理念をどのように捉えているかを調べると、エンゲージメントの高い層と低い層で大きなギャップが生じていました。高エンゲージメント層の約9割(あてはまる・まああてはまる計)で、理念に対する理解や共感(良いものだと思う)、意識的な行動がみられています。一方、低エンゲージメント層は、約半数が自社の企業理念を理解しているものの、共感や行動では大きく減少し、高エンゲージメント層と比較すると60pt以上の差でした。[図表⑪]

5. パーパス浸透を軸としたモチベーションマネジメントの重要性がより鮮明に

当社が開発した「インターナルブランディング®モデル」(後述)では、社員のエンゲージメントを強化するキードライバーとなる「理念」を下支えする要素を「Working Condition」「Motivation」「Relation」と設定しています。回答者に上記3要素に関連した項目で、自社に対する評価を聞いたところ、全ての項目において、エンゲージメントが高い層と低い層で大幅な差がみられました。

「Relation」に関する項目では、「上司が自分のことを見ていてくれている」(66.5pt差)、 「経営関連の情報がきちんと伝達される環境が整っている」(66.2pt差)で、特に差が目立ちました。また、 「Motivation」に該当する「仕事を通じてやりたいことや好きなことができている」(66.9pt差)は、全項目の中で最も差が大きい結果となりました。[図表⑫]

これらから、「働き方改革」の浸透や、コロナ禍での就業環境改善の取り組みにより、制度などの整備はある程度進んでいるとみられるものの、理念に則した行動を生み出すモチベーションマネジメントや心理的安全性を高める取り組みなどが、今後さらに重要になっていくことが示唆されました。

Working Condition  社員の待遇・働きやすさ

Motivation      企業と社員自身のパーパスの合致

Relation       社員が思いやりを実感できるコミュニケーション環境

 

パーパス浸透がモチベーションに、モチベーションがパフォーマンスに正の影響を与えている

 

当社が開発した「インターナルブランディング®モデル」のモチベーション因子が、従業員のパフォーマンスにどのような影響を与えているか、相関分析、因子分析、重回帰分析を用いて分析を行い、以下の事項が判明しました。

・パーパスの設定、社内浸透ならびに社内教育、社内外発信が、「インターナルブランディング®モデル」で抽出されたモチベーション因子に正の影響を与えている。

・上記のモチベーション因子は、パフォーマンスに正の影響を与えていることが明らかとなった。 [図表⑬]

以上のことから、モチベーションマネジメントの重要性が浮き彫りとなりました。

 

企業のSDGsやESG、サステナビリティや社会貢献に関する取り組み状況について

 

自社のSDGsやESG、サステナビリティや社会貢献に関する取り組みについても、6割以上が「取り組んでいる(積極的に取り組んでいる・まあ取り組んでいる計)」と回答しました。[図表⑭]

多様性や人権をはじめとする社会問題から気候変動などの環境問題まで、企業が対応すべき課題は多様化・複雑化する中、企業が「パーパス経営」を重視していることが表れた結果となりました。

 

6. 高エンゲージメント層は、自社の社会的価値を理解し、チームで成長することを志向

働きがいを感じ、会社や社会に貢献していることを社員が実感するには、会社の組織力も重要な要素になってきます。

企業文化や価値観は、日々のコミュニケーションを通じて社員に浸透していきます。回答者に自社の企業文化(価値観)について尋ねたところ、高エンゲージメント層は、「チームワーク重視」「革新的・イノベーション」「成長志向」がTOP3となりました。一方、低エンゲージメント層では、「保守的」「利益重視」「規律・秩序重視」といったキーワードがTOP3となっています。[図表⑮]

回答者に自社の企業理念について尋ねたところ、高エンゲージメント層は「社会に提供する価値が明確になっている」や「次世代に向けたビジョンが明確になっている」など、企業の社会性や未来志向を理解していることがわかりました。一方、低エンゲージメント層は「自社の業務内容が明確になっている」が最も多く、自社の「ビジョン」や「強み」において高エンゲージメント層と約25ptの差が開く結果となりました。また、低エンゲージメント層は、「わからない」と回答した割合も高くなっています。[図表⑯]

 

 ※両グラフとも、各カテゴリーごとに「高エンゲージメント」の降順

 

7. 半数以上が社内報で企業理念を目にするも、低エンゲージメント層は無関心の傾向

「インターナルブランディング®」において、企業の理念やパーパスを言語化や可視化し発信することは、重要な施策です。「自社の理念を知っている」と回答した人を対象に、自社の理念等を「目にする機会」を尋ねたところ、高エンゲージメント層も低エンゲージメント層も「社内報」の割合が半数以上と最も高い結果となりました。[図表⑰]

一方、「特に印象に残ったもの」を尋ねると、低エンゲージメント層のトップスコアは「わからない/特にない」(36.0%)で、高エンゲージメント層で2番目に多い「社長プレゼンテーション、社長メッセージ」は、1割程度(10.4%)と低い割合にとどまりました。[図表⑱]この結果から、高エンゲージメント層は、トップの発信するメッセージに耳を傾ける傾向が強く、低エンゲージメント層は、理念を目にすることはあっても、その内容に無関心である可能性があります。

 

その他の結果

[勤務先に対する考え]

慢性的な人手不足が深刻化する中、人材流出による人的資本の損失は、経営を大きく左右しかねません。

回答者に、勤め先への勤務継続意向を尋ねると、「経営者(雇用主)が変わろうとも、この会社で働きたい」と回答した割合は、高エンゲージメント層では、半数以上(55.5%)に及びました。低エンゲージメント層とは、45.2ptと大きく差が開いています。[図表⑲]

この結果から、エンゲージメントが高い層が勤める企業では、意識統一がなされた組織的な経営が推進され、「理念」を下支えする三つの要素「Working Condition」「Motivation」「Relation」が機能していると考えられます。

 

[現在の勤務形態]

コロナ禍で、在宅勤務を中心とするリモートワークが普及したことで、社員のエンゲージメントの低下を指摘する声も少なくありません。本調査では、回答者の現在の勤務形態とエンゲージメントの差を分析しました。

結果は、エンゲージメントの高低にかかわらず、「勤務日は出社しており、リモートワークはしていない」が最も多いものの、低エンゲージメント層は全体平均よりも高く、「8割ほど出社、リモートワークは少ない」と回答した人と合わせると、約8割が、出社が中心であることがわかりました。

一方、高エンゲージメント層をみると、リモートワーク中心の割合が、2割以上を占めています。[図表⑳]

 

インターナルブランディング®モデル

 

モデル図

「インターナルブランディング® 」は、2003年に当社が商標登録をした商標です。「組織内部で課題を共有化し、一つのビジョン(理念)に向かって、同じ意識で一体となって行動していくことにより、人々をひきつけるパワーを生み出し、組織の価値を高めること」でブランディングする、という考え方です。

 

「インターナルブランディング®モデル」は、この考え方とこれまでの実績、そして「インターナルブランディング®調査」の結果をベースにしています。このモデルは、エンゲージメント※を強化するキードライバーが「理念」であり、それを下支えする要素として、「Working Condition」「Motivation」「Relation」の三つがある、という考え方に基づいています。

 

※本リリースでの「エンゲージメント」とは、企業と社員の絆を表し、本調査では、「信頼」「愛着」「誇り」「貢献」で定義しています。(【図表③】参照)

 

調査概要

■調査対象 従業員100人以上の上場企業に勤める全国の20~69歳のビジネスパーソン

 男女それぞれ500人ずつ 計1,000人

 

■調査方法/期間 インターネット調査/2023年6月13日~2023年6月15日

 

■調査内容 自分の勤める会社に対する意識と企業理念に対する状態を調査

・勤める会社への意識と企業理念の浸透度との関係

・勤める会社の企業理念に関する認識や考えおよび企業文化

・企業理念に関する広報ツールの認知と理解

・自社のSDGsへの取り組み・現在の勤務形態 など

※リリース内のデータは小数以下第2位を四捨五入しています。数値の差分を計算した場合などは、記載している数値とズレが生じる場合があります。

 

企業広報戦略研究所とは
(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)

企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う、株式会社電通PRコンサルティング内の研究組織です。
2013年12月設立。所長 阪井完二。企業広報戦略研究所サイト https://www.dentsuprc.co.jp/csi/

 

<お願い>本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。


インターナルブランディング®調査メンバープロフィール ※五十音順

■中 憲仁(あたり のりひと)  企業広報戦略研究所 上席研究員
■垂水 幸子(たるみ さちこ) 企業広報戦略研究所 主任研究員
■野城 慎太郎(のしろ しんたろう) 企業広報戦略研究所 主任研究員
■前田 基樹(まえだ もとき) 企業広報戦略研究所 主任研究員
■森 碧(もり みどり) 企業広報戦略研究所 主任研究員

本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。

プレスリリース添付画像

モデル図

図表⑲

図表②

図表⑳

図表③

図表⑬

図表⑪

図表⑩

図表⑫

図表⑨

図表⑧

図表⑦

図表⑨つづき

+図表④

+図表①

+図表⑭

+図表⑤⑥

+図表⑯

+図表⑮

+図表⑰⑱

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