高周波でも安定:新規スピントルクダイオード効果の発見

Beyond 5G超高速磁気デバイスへ新たな展望

産総研

発表のポイント

◆ 高周波電流を直流電圧に変換する「スピントルクダイオード効果」を反強磁性体で初めて実証しました。

◆ 新材料「カイラル反強磁性体」を用いることで、従来の強磁性体を用いたデバイスに比べ、高周波でも10-100倍以上安定して電圧を維持できるダイオード動作を実現しました。

◆ 本研究の成果は、フォトニックスピンレジスタにおける書込とシフトの高速動作に資するもので、次世代スピントロニクス技術およびBeyond 5Gに代表される超高速情報技術への貢献が期待されます。

 

 

 

概要

東京大学物性研究所の坂本祥哉 助教と三輪真嗣 准教授は、同大学大学院理学系研究科、同大学先端科学技術研究センター、産業技術総合研究所新原理コンピューティング研究センター、高輝度光科学研究センターと共同で、新材料「カイラル反強磁性体」において従来材料である強磁性体よりも高い周波数で安定動作可能なスピントルクダイオード効果を発見しました。

 

カイラル反強磁性体と呼ばれる特殊な磁気構造を持つマンガン化合物(Mn3Sn)を10ナノメートル以下の極限まで薄くし、マイクロ波電流(高周波電流)を印加すると直流電圧が出現することを発見しました(図1)。交流電流が直流電圧を生む効果はダイオード効果として広く知られており、半導体を使ったものが整流ダイオードとして一般社会に普及しています。スピントルクダイオード効果では、電子の自転に対応するスピンの首振り運動が整流効果を生み出し、半導体における整流ダイオードと同様の効果をもたらします。これまでに強磁性体を用いたスピントルクダイオードにおいて、半導体ダイオードでのマイクロ波電流の検出感度を超える報告がありましたが、周波数が高くなるとそれに反比例して信号(電圧)の強さが急激に減少するという問題がありました。本研究では、交換相互作用という高いエネルギーが顕在化する反強磁性体の特性を活かし、周波数が高くなっても、強磁性体と比べ10-100倍ほどの安定性で信号の強度を維持できるダイオード効果を実現しました。この新しいスピントルクダイオードの実現により、次世代のスピントロニクスおよび高速通信の発展につながると期待されます。

 

本成果は、英国科学誌の「Nature Nanotechnology」に、2024 年 12 月 3 日オンライン掲載されます。

 

 

 

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プレスリリースURL

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  • エリア
    東京都
  • キーワード
    研究開発、マンガン化合物、反強磁性体、スピントルクダイオード効果
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