腸アルカリ性ホスファターゼはIIAEKの受容体であり、マウスのコレステロール恒常性を制御する

腸アルカリ性ホスファターゼは酵素の機能だけではなく、受容体として機能する

岐阜大学

岐阜大学

配布先:文部科学記者会、科学記者会、岐阜県政記者クラブ

 

2025年7月2日

報道機関 各位

 

腸アルカリ性ホスファターゼはコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体であり、マウスのコレステロール恒常性を制御する。 腸アルカリ性ホスファターゼは酵素の機能だけではなく、受容体として機能するー

【本研究のポイント】

・我々が世界で最初に発見したコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体が腸アルカリ性ホスファターゼ1)(Akp3)であることを世界で最初に特定した。

・腸アルカリ性ホスファターゼ(Akp3)は、脱リン酸化反応を触媒する酵素であるばかりではなく、オリゴペプチド2)受容体として機能することを世界で最初に発見した。

・生体内で機能するオリゴペプチド受容体に関する報告は、本論文が世界最初である。

 

 

【研究概要】

岐阜大学高等研究院先制食未来研究センターの長岡利 特任教授(岐阜大学応用生物科学部名誉教授)、博士研究員の竹内朝陽さん、修士2年の小田夏暉さん、研究室修了生の高田敬梧さん、森崚輔さん、會田拓巳さん、坂野新太さんで構成される研究グループは、岐阜大学応用生物科学部の海老原章郎教授との共同研究で、腸アルカリ性ホスファターゼはコレステロール低減化ペンタペプチド(IIAEK)の受容体であり、マウスにおいてコレステロール恒常性を制御することを発見しました。 

本研究成果は、日本時間2025年7月1日18時に英国の国際誌「Scientific Reports」オンライン版で発表されました。

 

食物タンパク質は、腸でアミノ酸またはペプチドとして吸収される。ジペプチドまたはトリペプチドは、腸ペプチドトランスポーター1(PepT1)を介して吸収される。しかし、テトラペプチドよりも大きなオリゴペプチドの腸管における吸収担体あるいは分子標的3)は未だ不明であり、現在のタンパク質ペプチド栄養学における大きな謎となっている。本研究は、オリゴペプチドIIAEKを用いて、腸アルカリ性ホスファターゼ(IAP)のコレステロール代謝制御における未解明の機能を探ることを目的とした。通常の野生型マウスでは、IIAEK摂取によるコレステロール代謝改善作用が観察された。しかし、IAP欠損マウス(Akp3-/-)マウスでは、IIAEK摂取によるコレステロール代謝改善作用(血清や肝臓のコレステロール低下作用)は認められなかった。また、IIAEKはマウスIAP(Akp3)およびヒトIAPの基質認識部位と特異的に相互作用することを明らかにした。IIAEK-ヒトIAP複合体は、腸に存在する膜貫通糖タンパク質カドヘリン17と相互作用する。結論として、IAPはペンタペプチドIIAEKによるコレステロール代謝改善作用に必須であり、脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)として機能するだけでなく、IIAEKのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型特異的受容体としても機能することを実証した。同時に、ヒトカドヘリン17がIIAEK-ヒトIAP複合体におけるシグナル伝達に重要な役割を果たすことを発見した。

 

【研究成果図】

 

【今後の展開】

本研究成果は、謎の多い腸管におけるオリゴペプチドの受容認識機構やセンシング(検知機構)の詳細な分子メカニズムの解明、そして脂質異常症などの生活習慣病治療や健康寿命延長に向けた腸アルカリ性ホスファターゼを分子標的とした革新的機能性食品・医薬品の開発に貢献するものである。

【用語解説】

1)腸アルカリ性ホスファターゼ:小腸に存在するアルカリホスファターゼ (リン酸化合物を分解する酵素)の一種である。食事性因子との関わりが大きく、生理機能は不明な点が多い酵素である。IAPの活性化や活性型IAPの摂取が、生活習慣病の予防・改善や健康寿命延長に役立つ可能性が示唆されている。

 

2)オリゴペプチド:タンパク質を構成するアミノ酸は、主に20種類が知られている。アミノ酸とアミノ酸がペプチド結合することでペプチドになる。アミノ酸が2個から10個程度連なったペプチドをオリゴペプチドという。

 

3)分子標的:機能性食品や医薬品の有効成分(活性成分)は、ヒトや動物の体にある特定のタンパク質や酵素など(分子)に結合し、そのタンパク質の活動(活性)を調節(増加や減少)することで、健康効果や医薬品の効果を発揮する。このような機能性食品や医薬品の有効成分の効果と深く関係する分子を分子標的と呼ぶ。従って、機能性食品や医薬品の効率的な発見のために、分子標的は極めて重要である。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports

論文タイトル:Intestinal alkaline phosphatase is a receptor for cholesterol lowering pentapeptide IIAEK and regulates cholesterol homeostasis in mice.

著者:Asahi Takeuchi, Natsuki Oda, Keigo Takada, Ryosuke Mori,

Takumi Aida, Arata Banno, Akio Ebihara & Satoshi Nagaoka*

*Corresponding author

DOI: 10.1038/s41598-025-04722-w

論文公開URL:https://www.nature.com/articles/s41598-025-04722-w?utm_source=rct_congratemailt&utm_medium=email&utm_campaign=oa_20250701&utm_content=10.1038/s41598-025-04722-w

 

【研究支援】

本研究は科学研究費助成事業(科研費)の基盤研究 (A) 20H00570及び基盤研究(A)24H00676の支援を受けました。

 

【問い合わせ先】

<研究に関すること>

岐阜大学高等研究院先制食未来研究センター特任教授

岐阜大学応用生物科学部名誉教授 長岡 利

電話:058-293-2931

 

<報道に関すること>

岐阜大学 総務部広報課広報グループ

電話:058-293-2009

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