ガンマ波サウンドスピーカー「kikippa」の 認知症患者における効果検証にて中核症状・周辺症状の効果を確認
周辺症状「BPSD」では有意に改善 患者に笑顔が増え、スタッフの負担も軽減し介護現場の雰囲気が著しく改善
2025/9/18
国立あおやぎ会
【9月21日(日)は「世界アルツハイマーデー/認知症の日」】 介護老人保健施設 国立あおやぎ苑 ガンマ波サウンドスピーカー「kikippa」(40Hz変調音)の 認知症患者における効果検証にて、中核症状・周辺症状の効果を確認 ガンマ波サウンドを1年間(12カ月)聴いた認知症患者における 中核症状(記憶障害や遂行機能障害など)の改善で有意傾向が認められ 周辺症状「BPSD」(暴言・暴力・介護拒否など)では有意に改善 患者に笑顔が増え、スタッフの負担も軽減し、介護現場の雰囲気が著しく改善
今週の9月21日(日)に「世界アルツハイマーデー/認知症の日」を迎えます。これに先駆け、医療法人社団 国立あおやぎ会(理事長 大冨眞吾)は、認知症患者に対するケアの新たなアプローチである「ガンマ波サウンド」について、検証の結果を発表いたします。
「ガンマ波サウンド」の検証結果について
介護老人保健施設 国立あおやぎ苑 施設長 医師 武田 行広
横浜市立大学医学部を卒業後、脳神経外科に入局。大学病院や国立病院で医療に従事し、2019年より介護医療施設での勤務を開始。2022年には介護老人施設「国立あおやぎ苑」に着任し、現在に至る。脳神経外科、老年医学、リハビリテーション、認知症ケア、緩和医療を専門とし、質の高い医療と介護の提供に尽力。2024年からは東京都老人保健施設協会の理事に就任し、介護老人保健施設の発展と地域の医療・介護の連携に貢献。
認知症に対する国民の意識が向上、キーワードは「ヘルスリテラシー」と「認知機能レジリエンス」 一方、検査・治療を受ける人の割合が低く、改善の機会喪失が懸念
2040年の日本における認知症患者数の予測値が802万人から584万人へと大幅下方修正されました。医療・医薬の進歩によるところが大きいと思われますが、それ以上に国民の間に認知症に対する意識が広まったことが重要な原動力だと感じます。この原動力には2つのキーワードがあります。
一つ目のキーワードは、「リテラシー」で、直訳すれば、読み書きの能力のことです。「ヘルスリテラシー」とは、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解し、活用する能力のことです。さまざまな疾患において「ヘルスリテラシー」を高めることの重要性が盛んに言われ始めています。認知症に関する「ヘルスリテラシー」を高めることにより、認知症を必要以上に過剰に怖がらない、適切な加療を早期に受けられる、認知症の患者さんに対して正しい接遇が出来る、などその恩恵は計り知れないものがあります。
二つ目のキーワードは「レジリエンス」(復元力、回復力)です。「認知機能レジリエンス」とは、日頃から脳の予備能・余力を蓄えておくことで、認知機能が少々低下しても日常ADL(日常生活動作・Activities of Daily Livingの略)を損なわず、維持継続することができます。「認知機能レジリエンス」を高める手段としては、運動、食事、禁煙、適度な飲酒、文化的・教養的生活習慣などがあります。これらのよい習慣を複合的に、できれば全部実行すると脳の余力が向上するというエビデンスも出始めています。これら2つのキーワードが原動力となって予測認知症患者数が大きく下振れしたのは喜ばしいことです。
しかし、一方で別の報告もあります。健診や外来あるいは日常で認知機能の低下を指摘されても、その後、実際に精密検査や治療を受ける人の割合はわずか7%に過ぎず、その理由の上位3位として、「健康に自信があり、必要ない」(42.2%)、「面倒くさい」(11.8%)、「忘れていた」(6.8%)があげられています。「ヘルスリテラシー」や「レジリエンス」は広まりつつありますが、結局は腰が重く、面倒くさくて、精査も加療・介入も後手に回っているのが現状だと思います。
認知症患者の生活を変えることなく「認知機能レジリエンス」を高める方法として、「音」に注目 脳内のガンマ波を惹起する、ガンマ波サウンドスピーカー(40Hz変調音)でアプローチ
精密検査や治療に積極的でない上に、年を取るにつれて、今の日常を変えたくないと思う方の割合も増えてくると思います。大きく生活を変えずに、なおかつ「認知機能レジリエンス」を高める方法として、音を使うのがよいのではと思い、これを提案するに際し、40Hzの音と光による刺激は脳内にガンマ波と呼ばれる40Hzの脳波を惹起することや、認知症、特にアルツハイマー型認知症では脳内のガンマ波が減少しているという近年の研究に着目*しました。そして、40Hzの音を変調して情報伝達機能を持たせ、日常生活で接するテレビやラジオなどのメディア音と融合させることに成功したスピーカーが登場したことから、この技術に注目し、当病棟の患者さんにおいてどのような効果があるのかを検証しました。
*MIT(マサチューセッツ工科大学)による論文で、「40Hzの音と光による刺激でアルツハイマー型認知症モデルのマウスにおいて学習能力と記憶能力の向上と神経組織上、アミロイドβおよびリン酸化タウの減少・脳萎縮の改善を認め、Phase2の人間を対象とし検証でも、画像上脳萎縮の改善を認めた」と発表しています。
*米国・マサチューセッツ工科大学の研究チームによるマウス試験により、40Hz周期の音刺激で、聴覚野と海馬でガンマ波の発生・血管新生・アミロイドβタンパク質減少・記憶障害の改善が確認された(Cell,2019)
https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(19)30163-1.pdf
ガンマ波サウンドスピーカー(40Hz変調音)が、認知症の中核症状と周辺症状に与える影響を検証
認知症の中核症状はHDS-R(長谷川式認知症スケール)、認知症の周辺症状はDBD-13を用いました。
中核症状は認知症の根幹で診断基準でもあり、主な障害として「記憶障害」(物忘れがひどく、記憶を保持することが困難となる)、「遂行機能障害」(情報処理能力が低下し複雑な作業が出来なくなる)、「集中障害」(一つのことに集中できず極めて散漫になる)、「視空間認知障害」(よく知った通いなれた道でも迷ってしまう)があげられます。
周辺症状は、中核症状によって自信を失い、フラストレーションとコンプレックスに苛まれている患者さんに対して不適切な接遇がなされた際に爆発あるいは湧出するもので、暴言・暴力・介護拒否などの陽性周辺症状と呼ばれるものと、無関心・無気力などの陰性周辺症状と呼ばれるものがあります。
中核症状の進行に抗う(緩徐にする)治療法は、研究され投与も始まっていますが、残念ながら未だ根本的な治療法は見つかっていません。そして、中核症状が進行して、認知症が中度から重度になると、本人はもちろんのこと介護する立場の人を苦しめるのはむしろ周辺症状で、これに対する決定的な治療法もありません。
検証の概要
■検証期間:スピーカー設置前の2023年12月と設置後6カ月の2024年6月、1年後の2024年12月で比較
■対象者:介護老人保健施設 国立あおやぎ苑に入所している認知症患者15名*
(男性4名・女性11名、平均年齢87.7歳、本人または家族の同意を得た上で実施)
*アルツハイマー型認知症の診断を受けている人、および、アルツハイマー型認知症が強く疑われる人
■検証方法:
①認知症患者群が入所する認知症フロアのテレビの音声出力に「40Hz変調音声スピーカー」(シオノギヘルスケア社「kikippa」)を接続。テレビの音声をリアルタイムに40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を、1日9時間(9時~18時)にわたり流し、実質5~6時間程度聴いてもらいました。本検証では音声のみで刺激を行っており、光刺激は行っていません。
②検証期間の前後に、認知症患者群の中核症状とBPSD(周辺症状)を評価しました。中核症状の評価にはHDS-R、BPSD(周辺症状)の評価にはDBD-13を用いました。
<ご参考>前回の検証で40Hz変調音声スピーカーを導入しない場合の評価(実施導入時と半年後の比較)も実施しています。その評価ではHDS-RもDBD-13も有意な変化を認めませんでした。
前回発表:介護老人保健施設国立あおやぎ苑 ガンマ波サウンドスピーカーの認知症患者における効果検証を日本初の実施(2024年11月28日)https://kyodonewsprwire.jp/release/202411280730
■検証結果:
認知症中核症状の指標であるHDS-Rの点数は導入時9.0点→半年後9.3点→1年後10.1点と上昇を認めました(有意差なし、有意傾向あり、p<0.025、p=0.0359)。
周辺症状の指標であるDBD-13の点数は導入時17.5点→半年後14.8点→1年後13.9点とこちらも改善を認めました(有意差あり、p<0.025、p=0.0093)。
「ガンマ波サウンド」の検証についての考察
HDS-Rでは中核症状が徐々に改善されていく有意傾向が得られ、DBD-13では有意に改善。BPSD(周辺症状)の改善はスタッフの介護量を減少させ、介護現場の雰囲気の改善をもたらす
検証の結果、HDS-Rは導入時の9.0点から、6カ月後には9.3点、12カ月後に10.1点と変化し、有意差は認められないものの、徐々に改善されていく有意傾向が得られました。DBD-13は、17.5点から14.8点、13.9点と改善され、有意差が認められました。
数値的な改善は、中核症状・周辺症状共に認められていますが、現場での肌で感じる改善が果たしてあるのか否かが重要です。現場の看護師からは「患者さんも職員も笑顔が増えた。危険を伴う不穏行動が明らかに減った。仕事が楽しく、楽になった」などの感想が聞かれています。私も同様の印象を受けており、診察の際に患者さんに拒否されることが明らかに減っています。また、夜勤帯のスタッフから「夜間不眠やせん妄で落ち着かない患者さんがほとんどいなくなった。」という感想も耳にしました。
MIT(マサチューセッツ工科大学)が発表した論文によると、ガンマ波がマウスの認知機能を改善するまでには3週間を要し、マウスの3週間は人間の約2年に相当することから、まだ検証半ばだと思いますが、周辺症状に関しては既に有意差の明らかな改善効果を示しています。中核症状に関しては現時点では有意差は明らかではありませんが、今後2年を目指して検証を続けていくつもりです。さらに、HDS-RやDBD-13だけではなく、介護老人保健施設でも定期的に簡易的に施行可能なバイオマーカーがあれば検証のツールとして検討したいと考えています。
国立あおやぎ苑について
医療法人社団国立あおやぎ会が運営する「あおやぎ苑」は、介護老人保健施設やケアハウス、デイサービスなど多岐にわたる介護・医療サービスを提供しています。国立の地で平成10年に開設して「利用者様を大切に」「地域を大切に」「職員を大切に」と開設当時から思い続けています。
現在では、国立市、立川市、八王子市において17カ所(八王子健康管理センターを含め)で多岐にわたる介護関連事業所を展開し、多様な高齢者のご要望に最大限応えられる体制づくりを進めています。
国立あおやぎ苑 ホームページ
https://aoyagien.or.jp/facility/aoyagi/
ガンマ波サウンド™スピーカー「kikippa」について
「kikippa」は、テレビなどの音声をリアルタイムに40Hzに変調した「ガンマ波サウンド™」を、毎日の暮らしの中で自然と聴くことができるテレビスピーカーです。 「ガンマ波」と呼ばれる40Hz前後の脳波は、記憶や集中力に関係しており、加齢などにより弱まることが報告されています*1。kikippaのガンマ波サウンド™も、この40Hzに注目し、40Hzのリズムに合わせて音圧(音の大きさ)が1秒間に40回変動するよう設計されています。
また、「kikippa」は、工事や複雑な設定は一切不要で、誰でも簡単に操作できるよう、イヤホンジャックをつないでガンマ波サウンドボタンをONにするだけで、すぐに自然な40Hz 変調音*2「ガンマ波サウンド™」を聞くことができます。
*1 Herrmann, C. S. & Demiralp, T. Human EEG gamma oscillations in neuropsychiatric disorders. Clinical Neurophysiology 116, 2719–2733 (2005)
*2「40Hz 変調音」とは、40Hz の正弦波のような周期関数を用いた振幅変調により加工した音を言います。
※kikippa及び関連するロゴは、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社(PxDT)の商標又は登録商標です。
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このプレスリリースを配信した企業・団体

- 名称 医療法人社団 国立あおやぎ会
- 所在地 東京都
- 業種 各種団体
- URL https://aoyagien.or.jp/