介護老人保健施設国立あおやぎ苑 ガンマ波サウンドスピーカーの認知症患者における効果検証を日本初の実施

ガンマ波サウンドを6カ月間聴いた認知症患者の 周辺症状「BPSD」を有意に改善、介護現場の雰囲気にも好影響

国立あおやぎ会

 

介護老人保健施設 国立あおやぎ苑 ガンマ波サウンドスピーカー「kikippa」(40Hz変調音)の 認知症患者における効果検証を日本で初めて実施 ガンマ波サウンドを6カ月間聴いた認知症患者における 周辺症状「BPSD」(暴言・暴力・介護拒否など)を有意に改善 スタッフの介護量を減少させ、介護現場の雰囲気にも好影響

 

医療法人社団 国立あおやぎ会(理事長 大冨眞吾)は、運営する介護老人保健施設 国立あおやぎ苑(東京都国立市)において、認知症患者に対するケアの新たなアプローチとして、2023年12月から、音声を40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を聴くことができるテレビスピーカー「kikippa」を導入しています。

導入に伴い、スピーカー設置前の2023年12月と設置後6か月の2024年6月で、認知症患者への効果や影響を検証するため、中核症状をHDS-R(長谷川式認知症スケール)、BPSD(周辺症状)をDBD-13(認知症行動障害尺度)で評価したところ、DBD-13が有意に改善することが認められました。また、BPSDの改善は、スタッフの介護量を減少させ、介護現場の雰囲気の改善につながりました。

 

*中核症状とは、脳の器質性変化によって生じる記憶障害や遂行機能障害などの症状

*BPSD(周辺症状)とは、認知症患者に対して不適切な接遇がなされると生じる暴言・暴力・介護拒否などの症状

 

「ガンマ波サウンド」を聴いた認知症患者のBPSDが有意に改善し、介護負担が減少

検証は、介護老人保健施設 国立あおやぎ苑に入所する2F(認知症フロア)の認知症患者25名と、3Fと4F(一般病床)の患者31名を対象に実施しました。

認知症患者が入所するフロアに設置したテレビに「kikippa」を接続し、音声を40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を毎日9時間、6カ月にわたって認知症患者の検証対象者に聴いてもらい、その前後で、中核症状とBPSDにおいて数値的あるいは臨床的に変化が生じるかを評価しました。同時に比較対象群として通常のテレビが設置された一般病床入所者の変化も評価しました。

「ガンマ波サウンド」を聴いた認知症患者の中核症状をHDS-Rを用いて評価したところ、その平均点数に有意な変化は認められませんでしたが、BPSDをDBD-13で評価した平均点数は17.96から14.96に3.00ポイント低下し、改善が認められました。一方、一般病床入所者では、中核症状とBPSDでの有意な変化は認められませんでした。 

 

 


出典:「40Hz変調音声刺激によるBPSDに対する効果の検証」(介護老人保健施設 国立あおやぎ苑 武田 行広)

 

認知症の中核症状に対しての効果は認められませんが、BPSDが改善したことによって、患者だけでなくスタッフにも明るい表情が生まれ、介護現場の雰囲気が著しく改善しました。40Hzの音声刺激は、前頭葉にガンマ波を生じる働きがあるため、BPSDの脱抑制症状に効果を示していることが推測できます。今回は6カ月間での検証でしたが、今後も期間を延長して検証を続ける予定です。

今回の検証は、当苑施設長・武田 行広により実施されました。その内容を、11月14日(木)に開催された「第35回全国介護老人保健施設大会 岐阜大会」で発表し、検証から得られた知見を医師や福祉に携わる皆様にお伝えしました。

 

検証実施の背景

認知症の診療において、中核症状に対しては様々な経口薬・注射薬の投与が行われていますが、周辺症状に対しては有効な治療のプロトコールが無く、対処的に薬物療法と非薬物療法を用いているのが現状です。そこで周辺症状への新しいアプローチとして注目したのが、MIT(マサチューセッツ工科大学)による論文で、「40Hzの音と光による刺激でアルツハイマー型認知症モデルのマウスにおいて学習能力と記憶能力の向上と神経組織上、アミロイドβおよびリン酸化タウの減少・脳萎縮の改善を認め、Phase2の人間を対象とし検証でも、画像上脳萎縮の改善を認めた」と発表しています。*

 

* 米国・マサチューセッツ工科大学の研究チームによるマウス試験により、40Hz周期の音刺激で、聴覚野と海馬でガンマ波の発生・血管新生・アミロイドβタンパク質減少・記憶障害の改善が確認された (Cell,2019)https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(19)30163-1.pdf

 

40Hzの脳波はガンマ波のひとつで、ガンマ波は集中力が高まった時に生じ、認知症、特にアルツハイマー型認知症の患者は健常な人に比べて少ないと言われています。そこで、40Hzの光・音刺激を受けることで認知症患者のガンマ波が惹起され、認知症の中核症状が改善されれば、その周辺症状であるBPSDも改善される可能性があると推測し、「kikippa」で40Hzに変調した音声を聴くことによる効果と影響の検証を行いました。

 

検証の概要

■検証期間:スピーカー設置前の2023年12月と設置後6か月の2024年6月で比較

■対象者:介護老人保健施設 国立あおやぎ苑の入所者(本人または家族の同意を得た上で実施)

• 認知症患者群:25名(男性4名・女性21名) 平均年齢88.56歳

• 一般病床入所者群:31名(男性6名・女性25名) 平均年齢89.26歳

 

■検証方法:

①認知症患者群が入所する認知症フロアのテレビの音声出力に「40Hz変調音声スピーカー」(シオノギヘルスケア社「kikippa」)を接続。テレビの音声をリアルタイムに40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を、1日9時間(9時~18時)にわたり流しました。比較対象である一般病床入所者群が入所する一般病床フロアには「40Hz変調音声スピーカー」を接続していないテレビの音声を流しました。本検証では、音声のみで刺激を行っており、光刺激は行っていません。

 

②検証期間の前後に、認知症患者群および一般病床入所者群の中核症状とBPSDを評価しました。中核症状の評価にはDBD-13、BPSD の評価にはHDS-Rを用いました。

 

■検証結果:

①40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を入所フロアに流した認知症患者群に、HDS-Rでは有意な変化は認められませんでしたが、DBD-13の評価では平均の点数が3.00点下がり有意な改善が認められました。

 

②40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」が入所フロアに流れていない一般病床入所者群に、HDS-RおよびDBD-13で有意な変化は認められませんでした。

 

③認知症患者群でDBD-13の有意な改善が見られた結果、患者だけでなくスタッフにも明るい表情が生まれ始め、介護現場の雰囲気が著しく改善しました。

 

あおやぎ苑について

 

 

医療法人社団国立あおやぎ会が運営する「あおやぎ苑」は、介護老人保健施設やケアハウス、デイサービスなど多岐にわたる介護・医療サービスを提供しています。国立の地で平成10年に開設して「利用者様を大切に」「地域を大切に」「職員を大切に」と開設当時から思い続けています。

 現在では、国立市、立川市、八王子市において17カ所(八王子健康管理センターを含め)で多岐にわたる介護関連事業所を展開し、多様な高齢者のご要望に最大限応えられる体制づくりを進めています。

 

kikippa」について

 

 

「kikippa」は、テレビなどの音声をリアルタイムに40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を、毎日の暮らしの中で自然と聴くことができるテレビスピーカーです。 「ガンマ波」と呼ばれる40Hz前後の脳波は、記憶や集中力に関係しており、加齢などにより弱まることが報告されています*1。kikippaのガンマ波サウンドも、この40Hzに注目し、40Hzのリズムに合わせて音圧(音の大きさ)が1秒間に40回変動するよう設計されています。

 また、「kikippa」は、工事や複雑な設定は一切不要で、誰でも簡単に操作できるよう、イヤホンジャックをつないでガンマ波サウンドボタンをONにするだけで、すぐに自然な40Hz 変調音*2「ガンマ波サウンド」を聞くことができます。

*1 Herrmann, C. S. & Demiralp, T. Human EEG gamma oscillations in neuropsychiatric disorders. Clinical Neurophysiology 116, 2719–2733 (2005)

*2「40Hz 変調音」とは、40Hz の正弦波のような周期関数を用いた振幅変調により加工した音を言います。

※kikippa及び関連するロゴは、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社(PxDT)の商標又は登録商標です。

 

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