『食育健康サミット2017』に医師・栄養士等約650名が参加

公益社団法人 日本医師会と公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、2017 年11 月9 日(木)、日本医師会館大講堂(東京・駒込)において、ごはんを主食とした日本型食生活の生活習慣病予防・治療における有用性等について考える「食育健康サミット2017」を開催、約650 人の医師・栄養士等が参加しました。

2017 年11月24日

公益社団法人 日本医師会

公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構

「ライフステージにおける食生活と健康

~健やかな高齢社会の実現に向けた日本型食生活と運動~」

米を中心とした日本型食生活の意義を再認識

『食育健康サミット2017』

公益社団法人 日本医師会公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、2017 年11 月9 日(木)、日本医師会館大講堂(東京・駒込)において、ごはんを主食とした日本型食生活の生活習慣病予防・治療における有用性等について考える「食育健康サミット2017」を開催、約650 人の医師・栄養士等が参加しました。

 本サミットにおいては、ライフステージや性別により、発症する疾病が違うことから、一律的な生活習慣の改善ではなく、それぞれの世代に合わせた改善・対策が必要であり、米を中心とした日本型食生活の必要性が示唆されました。

基調講演等要旨

●健康寿命の延伸には、伝統的な日本食(The Japan Diet)”を再認識する必要

帝京大学臨床研究センター センター長/寺本内科・歯科クリニック 内科院長 寺本 民生 先生

肥満が急増しているが、1975年当時は米類・脂肪摂取量のバランスが均衡しており、生活習慣病の心配がなかった。これは米を中心とした日本型食生活の果たす役割が大きかった。

●若い女性の低栄養は次世代の健康リスクにつながる

早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員/千葉大学客員教授 福岡 秀興 先生

女性のバランスのとれた必要十分な栄養摂取は、本人の一生の健康及び次世代の健康に不可欠である。炭水化物は遺伝子の働きを調節しており、妊娠初期に摂取量が少ないと児は小児期に体脂肪量がより増加し、肥満や糖尿病など将来の生活習慣病につながる可能性がある

●日本食の食事パターンは高齢者の認知機能の改善や要介護リスクを減少

東京都健康長寿医療センター 内科総括部長  荒木 厚 先生

高齢者の低栄養は認知機能低下、サルコペニア、フレイルと関係する。その予防には、米を主食として魚や肉などのたんぱく質や野菜、海藻を十分に摂取することが大切である。

●健康寿命延伸には、栄養と運動両面からのアプローチが重要

京都大学名誉教授/京都産業大学・中京大学客員教授  森谷 敏夫 先生

筋肉は最もエネルギーを多量に使う臓器であり、運動により筋肉は生成され、脳・心循環器機能を改善する。炭水化物はエネルギーの消費効率が高い。低炭水化物ダイエットは、心理面の悪化、血糖コントロール不良などの弊害も大きい。

【開催概要】

■日 時: 2017年11月9日(木) 13:30~17:00 

■主 催: 公益社団法人日本医師会  公益社団法人米穀安定供給確保支援機構

■会 場: 日本医師会館 大講堂 東京都文京区本駒込2-28-16

基調講演Ⅰ

テーマ:日本人のライフステージから見る疾病構造と食育の重要性

-“伝統的な日本食(The Japan Diet)”研究を踏まえて-

座長・講師:帝京大学臨床研究センター センター長/寺本内科・歯科クリニック 内科院長

寺本 民生 先生

内容:わが国の平均寿命は世界で有数であるものの、平均寿命と健康寿命の差である“不健康な期間”の問題が生じている。この問題の解決には、例えば若い女性や更年期女性の骨粗鬆症、妊婦の低栄養に伴う胎児期の生活習慣病発症の兆し、壮年男性のメタボリックシンドローム(メタボ)、高齢者のサルコペニアといった、年齢・性別も含めたライフステージに着目した疾病構造の理解が必要で、一律な生活習慣改善ではなく、ライフステージに合わせた対策が必要である。

 わが国では肥満が急増しているが、かつては肥満や骨粗鬆症などの疾患はきわめて少なかった。健康寿命の延伸には、かつての生活習慣に解決の糸口がある。特に食生活では、1975年当時は米類・脂肪摂取量のバランスが均衡していたものの、米類摂取量の減少と反比例して脂肪摂取量が増加、それに伴い肥満が急増している。つまり、米を中心とした日本型食生活が大きな役割を果たしていたのである。

 われわれが行った30~49歳男性に対し動物性脂肪や菓子類の多い食事から米、魚、大豆、野菜、海藻、きのこ等を組み合わせた日本食に変更した研究*では、日本食のほうが体重やコレステロール値などの改善がみられ、壮年期男性の肥満・メタボの改善に日本食が期待できる結果であった。このことから、米を中心とした“伝統的な日本食(The Japan Diet)”を再認識する必要がある。

*「日本食」摂取を目指す6週間の栄養教育介入が体格、糖・脂質代謝指標に及ぼす影響:A pilot study. J Atheroscler Thromb 2017; 24: 393-401.

基調講演Ⅱ

テーマ:若い女性の低栄養と次世代の健康リスク-炭水化物の役割-

講師:早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員/千葉大学客員教授  福岡 秀興 先生

内容:若い女性の低栄養が経年的に進展している。低栄養は女性本人の健康だけでなく、次世代の健康にも悪影響をもたらす。

 わが国では「小さく産んで大きく育てる」ことがよいという社会的な風潮が今なお一部ではある。あまり知られていないが、やせて妊娠したり、妊娠中の体重増加を抑制したりすると、児は小さく産まれる傾向があり、将来的には肥満や糖尿病など多くの生活習慣病を発症するリスクが高くなり、この体質は世代を超えて伝達されやすい。現在若い女性及び妊婦の栄養状態は必ずしもよくなく、必要で十分な栄養を摂取する必要がある。中でも炭水化物は遺伝子機能の調節に働く重要な栄養素であり、妊娠初期に炭水化物摂取が少ないと児の肥満や糖尿病につながる。多様な栄養素をバランスよく摂取できるのが「米を中心とした日本型食生活」であり、次世代の健康を確保するうえでも有用である。

基調講演Ⅲ

テーマ:高齢者のフレイル・サルコペニアや認知機能低下を防ぐための低栄養対策

講師:東京都健康長寿医療センター 内科総括部長  荒木 厚 先生

内容:高齢者の低栄養は、認知機能低下、近年注目されているサルコペニア*、フレイル**とも関係している。高齢者の食事療法は高血圧や糖尿病等の合併症の予防、生活の質の維持・向上、認知症、うつ、サルコペニアなどの老年症候群の予防の観点から、きわめて重要である。

 認知機能を改善する可能性のある食事として、地中海食や米を主食とした日本食が報告されている。また、サルコペニアやフレイルは、タンパク質やビタミンなどの不足が発症や症状が進展することに関係しており、適切な筋肉の機能を保つためのタンパク質摂取や運動が必要である。日本食の食事パターンは魚や肉などから適正なたんぱく質を、野菜、海藻などからビタミンを摂取することができるので、要介護および後期高齢者の死亡リスクを減少させているのであろう。

*サルコペニア:筋肉量の低下と筋力の進行性の消失があり、身体機能の低下、QOL低下や死亡などの健康被害のリスクを伴う状態

**フレイル:ストレスによって要介護や死亡に陥りやすい状態

基調講演Ⅳ

テーマ:性・年齢を考慮した栄養と運動の役割 -高齢社会を視野に入れて-

講師:京都大学名誉教授/京都産業大学・中京大学客員教授  森谷 敏夫 先生

内容:高齢社会を視野に入れた健康管理には、栄養と運動両面からのアプローチが重要である。筋トレ直後のたんぱく質(必須アミノ酸)摂取により、高齢者でも筋タンパク合成が大幅に増加する。また、運動による筋肉の生成は、脳機能や心循環器機能も改善する。筋肉はわれわれの体の約5割を占め、エネルギーを最も多量に使う臓器である。

 低炭水化物ダイエットは短期的には体重が減るが、その実態は体内の水分が減っているだけである。それだけでなく、抑うつ・落ち込み・怒り・敵意など感情プロフィールの悪化をもたらす。さらに糖尿病の患者さんでは、朝食抜きにより昼食後の血糖コントロールが不良になるなど、弊害のほうが大きい。一方、米を中心としたバランスのよい食事は、エネルギーの消費効率にすぐれることなどから、メタボリックシンドロームの改善や自律神経活動の亢進に有効である。

パネルディスカッション

「ライフステージにおける食生活と健康~健やかな高齢社会の実現に向けた日本型食生活と運動~」をテーマに、特に参加者からの質問が多かった「高齢者」「女性」「糖質制限ダイエット」について、4 人の先生にそれぞれの知見に基づいたコメントをいただきました。

<高齢者の健康>

■荒木先生は、一律な減量はサルコペニアをもたらす危険性があるので、身体活動量の増加や食事療法の見直しを提案しました。また、中年期の肥満が認知症リスクとなることを紹介し、中年期の肥満対策が高齢期の健康維持に寄与すると話されました。

■森谷先生は、血流を増すことが骨と筋肉にとって重要であること、運動直後に牛乳やヨーグルトをとると筋肉量増強に効果的であることを紹介しました。また運動も大事だが、日常生活での身体活動も意識することが重要であると説明されました。

<女性の健康>

■福岡先生は、妊娠期に栄養を制限し過ぎると生まれてくる児は出生体重が低下することや、小さく産まれた子どもは生活習慣病を発症するリスクが高く、この傾向は世代を超えて受け継がれる懸念があるという新しい考え方を紹介しました。小さく産まれた妊婦さんは妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群になる可能性があるとのことです。それゆえ女性の一生及び次世代の健康を考える上で栄養がきわめて重要であることを何度も強調されました。

■荒木先生は、飢餓の年に生まれた子どもは将来の生活習慣病発症率が高いというオランダの疫学調査を紹介し、妊娠中の栄養状態の重要性を語りました。

■森谷先生は、運動は自律神経の機能改善、体重調整にも寄与するので、女性は更年期の前から運動習慣を持つことを提案しました。また、膝に痛みがある人のため、座ったままできる運動も紹介されました。

<糖質制限ダイエット>

■荒木先生は、糖質制限食の効果は一過性であり、過度の糖質制限が死亡リスクを上昇させることを話されました。特に高齢者については、タンパク質・脂質の摂取が多くなることによる腎機能への影響を懸念しました。

■福岡先生は、グルコース(ブドウ糖)が遺伝子の働きを調節する重要な物質であることを示し、妊娠中に炭水化物を制限した食事をとると児の疾病リスクが高くなると強調されました。

■森谷先生は、ダイエットはそもそも「正しい栄養」という意味であり、体重減少を目的とするのではなく、食事を見直して運動をすることにより、体脂肪を減らしていくべきだと語りました。

<ごはんを中心とした日本型食生活について>

■福岡先生は、胎児の健全な発育には、多様な栄養素をバランスよく必要十分量とることが大事であることを改めて強調しました。ごはんを中心とした日本食はその意味で理想的な食であると紹介しました。

■荒木先生は、高齢者の栄養管理にはタンパク質だけでなく他の栄養成分もきちんと補う必要性に触れ、食品の多様性を保つことのできる、米を主食とした日本食の有用性を語りました。

■森谷先生は、タンパク質の供給源として、朝食にごはんを中心とした和食を推奨しました。また、筋肉が糖質を燃焼させる臓器であることに触れ、燃焼効率の高いごはん食の有用性を強調しました。

■座長の寺本先生は、乳児期の重湯、おかゆ、ごはん、そして、高齢期になっておかゆのように、世代を超えて形状をかえて食べ続けられること、ごはんは粒のまま食べるので、咀嚼力が鍛えられることなどを挙げ、ごはん食の有用性について話されました。

■最後に、座長の寺本先生から、生活の基礎をつくっているのはごはんに、魚、野菜などを組み合わせて食べる日本食と日々の身体活動であることを認識し、平均寿命・健康寿命ともに世界有数であるこの日本の伝統を引き継いでいくことが重要であるとまとめられました。

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パネルディスカッション風景

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