デジタルトランスフォーメーションに向けた競争と経済の見通しに対する信頼度向上がM&A増加に拍車をかける
2017/12/12
EY Japan
デジタルトランスフォーメーションに向けた競争と経済の見通しに対する信頼度向上がM&A増加に拍車をかける
• 50%の日本企業が今後12か月間に買収を検討
• 買収競争の激化を予想している経営層の45%はプライベートエクイティを最も強力な競争相手と想定
• 地政学上あるいは各国の規制環境にかかるリスクにかかわらずクロスボーダーM&Aは今後も増加
2017年10月にEYが発表した「第17回EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査」によると、欧州の堅調な経済活動および中国やアメリカの経済成長を背景に日本企業は強気の見通しを持っており、グローバルベースでも2017年後半向けM&A取引への意欲が高まっています。
グローバル経済を牽引している様々な要因は、いずれもポジティブな軌跡を描きつつある中、日本企業の99%は、グローバル経済が安定している、またはさらに改善していると回答しています。日本を含む43カ国、約3,000人の経営層を対象とした本調査では、グローバル全体の56%の経営層、日本企業の経営層の50%が今後12か月以内にM&Aに取り組むと回答しています。
グローバルの経営層の60%は、今後、M&Aを通じた資産取得競争が激しくなると予想しており、そのように回答した日本企業の経営層の内45%は、M&Aにおいて、プライベートエクイティ(以下、PE)が最も強力な競合相手になると回答しています。さらにグローバル全体の経営層の19%は、来年にかけてM&Aにおける敵対的なアプローチが増えてくると予想しています。調査開始以来で最高の割合(98%)の日本企業の経営層が、今後1年間でM&A市場は現在と同程度かあるいはさらに拡大すると見込んでおり、M&A市場が縮小するという回答はわずか2%でした。
EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社 代表取締役会長のヴィンセント・スミスは以下のように述べています。「日本企業については、経営層の経済への見通しやM&A市場に対する信頼度は過去6か月でさらに向上しました。再び台頭してきたPEは、日本のみならず海外のM&A市場においても最も大きなトピックになり、PEと何らかの取引を行う企業も過去5年間で最多になる可能性があります。2018年度のM&A取引レビューを行う際もPEの復活ということが当年度の大きなテーマだったということで着目されるかもしれません。」
グローバル化がナショナリズムを払拭
国外企業による自国市場へのアクセスを制限するような各国の政策・規制に対する懸念が高まったものの、グローバル全体の経営層の約4分の3(73%)、日本企業の経営層の72%は国外でのM&Aに目を向けていると回答しています。
本調査によると、国内経済が大きく成長することが見込みにくい中、成長機会を海外に求める企業が多くなっており、景気が上向いている米国や引き続き堅調な中国が日本からの投資を多く集めています。また、EU離脱による貿易協定への悪影響を懸念する向きはあるものの、英国についても引き続き日本からの投資先として上位を維持しています。
この点についてスミスは、「米国やEUにおける独占禁止や保護貿易主義的な動きによりクロスボーダー案件が悪影響を受けることも考えられますが、一方で、相互の市場へのアクセスを互いに確保し合おうという動きもあり、懸念は限定的でしょう。日本企業の経営層は、高い成長目標を達成していくために引き続き海外への投資機会を追求していくでしょうし、その過程で、地理的リスクや政策リスクに翻弄されるのではなく、むしろ積極的にこれらをコントロールしようと試みていると思います。」と述べています。
テクノロジーを軸として、セクターの壁が消えつつある
あらゆるセクター間で、特にテクノロジーセクターにおいて、融合が進んでいます。本調査によると、自社が属するセクターにかかわらず多くの企業がデジタル トランスフォーメーションへの対応策としてテクノロジー分野への投資を検討しています。日本企業からの回答を見ると、33%の経営層はデジタルトランスフォーメーションに必要な能力を社内開発により蓄積していくと回答しましたが、30%の経営層は買収、ジョイントベンチャーや企業提携によってデジタル トランスフォーメーションを進めることを検討すると回答しています。
日本企業が今後投資先として想定しているセクターのトップ5は、自動車(64%)、ライフサイエンス(57%)、消費財/小売(50%)、金融(50%)、テクノロジー (35%)でした。
コーポレート・ベンチャー・キャピタル(以下、CVC)は、全セクターを通じて重要な投資形態として認知されつつあり、日本企業でも全回答者の3分の2に当たる66%の経営層が、将来の投資機会を得るためにCVCを活用している、あるいは活用することを検討していると回答しています。
「これまでは、テクノロジー系の企業がCVCを積極的に取り入れていましたが、最近ではライフサイエンスセクターや鉱業・金属、消費財といったセクターもCVCのノウハウを蓄積しつつあります。これらの企業は、今後、破壊的変革をもたらすような技術への投資機会をCVCの専門家達に発掘させることで、業界における最先端技術やスタートアップ企業をより効率的に把握することができるようになりました。」とスミスは述べています。
日本企業からの回答によれば、日本企業が想定する投資先としては、1位は日本で、以下、中国、韓国、米国、英国と続いています。
様々なステークホルダーが満足するような成長が求められる中、アクティビズム活発化の傾向が続く
良好な経済環境の中では投資家はより高いリターンを求めるものですが、アクティビスト(もの言う株主)による介入は増加傾向を続けています。十分な事業規模を有しない企業、現金がショート気味の企業、あるいは業界再編が進む中で困難な状況に直面しているような企業はより大きなプレッシャーにさらされています。日本企業の圧倒的多数(80%)の経営層は、アクティビストから何らかのインパクトを受ける企業の数は現在と同程度に多いかあるいはさらに増加すると見込んでいます。今後アクティビストの活動が増えると考えられる地域については、グローバル全体の経営層の48%がアジアと回答しており、以下、北米(38%)、欧州(14%)と続いています。
スミスは、「アクティビストを株主に抱える企業の経営層にとって、様々な株主グループと折衝していくことは非常に複雑で頭が痛い問題になりつつあります。何より興味深いのは、本調査で回答したほぼ半数(53%)の日本企業の経営層が、M&Aを行う際、皆が満足できるような成長を目指すというコンセプトの下で、様々な株主グループに対して、案件を実行する意味や根拠をはっきりと説明する必要性が高まりつつあると感じていることです。案件について株主から最大限の支持を得たいと思えば、この説明は出来るだけ早いタイミングから行うことが望ましいと考えられます。ステークホルダーが多様化する中、単に売上を増やすためというだけで案件実行を正当化することはもはや出来ないのです。」と述べています。
M&Aで複雑なビジネス環境を切り開く
グローバル金融危機以降、かつてないほど経済成長への信頼度が高まっていますが、ビジネスにとっては大きなチャレンジが待ち構えていることを今回の調査は明らかにしています。複雑化していくビジネス環境の中で、投資家への要求に応えるためには、オーガニックやインオーガニック成長、コスト効率化といったことに、これまで以上にフォーカスする必要があります。
「最近M&Aの記事がトップページを飾ることは必ずしも多くはありませんが、経営層は明らかにM&Aを通じて経営戦略の実行スピードを上げようとしています。各国の規制や独占禁止法などへの懸念から、記事になるような大型M&A案件はひと頃に比べてやや減少したといっても、投資家は戦略的に重要な投資を着実に実行しています。64%の日本企業の経営層は今後1年間でM&A市場は、さらに拡大すると見込んでいます。大型案件が再び増加してくる可能性もありますし、企業が破壊的変革に対応するため事業ポートフォリオを見直していく中で、小型の案件もまた増えてくることでしょう。こういった傾向やデジタル トランスフォーメーションへの競争あるいは経済見通しへの信頼感の結果、M&A市場は今後も長期間にわたり活発に推移していくと考えています。」とスミスは述べています。
※本リリースの原文は英語であり、その内容および解釈については英語が優先します。
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- URL https://www.eyjapan.jp/index.html
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