コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響を実証

〜岐阜大学新入生のデータを3年間比較検討〜

岐阜大学

2022/1/13 04:00

令和4年1月13日

国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学

コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響を実証
〜岐阜大学新入生のデータを3年間比較検討〜

 

 新型コロナウイルス感染症の拡大は未だ終息に至らず、大学生のメンタルヘルスへの影響は大きな社会問題となっています。岐阜大学保健管理センターの堀田亮助教は、岐阜大学の新入生を対象にアンケート調査を実施し、コロナ禍における大学生のメンタルヘルスの実態を明らかにしました。本研究は、感染拡大前(2019年)、感染拡大直後(2020年)、感染拡大1年後(2021年)の3年間の結果を比較検討したもので、コロナ禍の長期的影響を実証しており、当該分野に新たな視点と多大なインパクトを与えることが期待されます。

 その研究成果と意義が高く評価され、2022年1月13日(木)4時(日本時間)にPublic Library of Science社発行のPLOSONE誌のオンライン版で発表されました。

 

【発表のポイント】

・これまでの先行研究では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大後(2020年以降)に学生のメンタルヘルスを調査したものが多いですが、本研究では、感染拡大前(2019年)、拡大直後(2020年)、拡大1年後(2021年)の3年間の結果を比較することで、より長期的な影響について検討しました。

・本研究は、入学期(4−5月)の新入生に焦点を当て調査を実施しました。

・感染拡大直後の新入生の抑うつ、不安症状は、拡大前より低い結果となりました。拡大1年後の新入生の抑うつ、不安症状は、拡大直後より高くなりましたが、拡大前の水準に戻りました。しかしながら、死にたい気持ち(希死念慮)を強く抱える学生の割合は年々増加傾向にあることが明らかになりました。

・学業に関するストレスは、感染拡大直後の新入生が最も高く、拡大1年後は拡大前の水準に戻りました。

 

【研究背景】

 コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響に関しては、これまで国内外で多くの研究結果が公表されてきました。しかしながら、それらは感染拡大後に一時点だけ調査を行った研究が多く、コロナ禍の影響が反映されているのか、もしくはコロナ禍に関わらず元来の大学生の精神的健康度が反映されたに過ぎないのか、判別のつかない研究も散見されています。

 そこで、本研究では感染拡大前(2019年)と感染拡大直後(2020年)のデータを比較することにより、コロナ禍の影響を実証しようと試みました。加えて、感染拡大1年後(2021年)のデータとも比較することにより、感染拡大の長期的影響の検討も試みました。

 

【研究方法および成果】

 本研究では、2019年4−5月、2020年4−5月、2021年4−5月の期間に、各年度の岐阜大学の新入生を対象にアンケート調査を実施しました。調査にはCounseling Center Assessment of Psychological Symptoms(CCAPS:大学生のための心理・精神症状評価尺度)という国際標準の指標の日本語版を用いました。なお、CCAPSの日本語翻訳作業も堀田助教が手掛け、別の研究成果として発表しています。(Ryo Horita,Aki Kawamoto,Akihiro Nishio,Tadahiro Sado,Ben Locke,Mayumi Yamamoto. Clinical Psychology & Psychotherapy 2020)

 調査の結果、感染拡大直後(2020年)は他の年度と比べて、むしろ抑うつや不安をあまり感じていないことが明らかとなりました(図1)。感染拡大直後の学生はこうした精神症状よりも、現実感のなさを他の年度よりも強く感じていたことが示されており、急激な環境の変化によって「何が起きたかわからない」まま時間が過ぎ去っていると感じていたのかもしれません。感染拡大1年後(2021年)は、感染拡大直後に比べて高い抑うつや不安を感じていることが示されましたが、平均値上では感染拡大前(2019年)の水準に戻ったという結果が得られました。しかし、死にたい気持ち(希死念慮)を強く抱える学生の割合は年々増加傾向にあり、こうした学生を早期に発見し、支援する体制の拡充が求められる結果も得られました。一方で、希死念慮を全く感じない学生の割合も増加しており、コロナ禍によって適応を回復した(コロナ禍に適応した)学生が一定数いることも窺われました(表1)。こうした結果は、コロナ禍によるメンタルヘルスの二極化の漸進を示唆しています。

 一方で、学業に関するストレスは感染拡大直後が最も高く、これはオンライン授業への適応の難しさを示していると考えられます(図2)。しかしながら、感染拡大1年後は感染拡大前と同じ水準に戻ったという結果が得られました。2021年度の新入生は、高校時(2020年度)にオンライン授業を経験している学生も多く、2020年度の新入生に比べれば、大学に入ってからもそれほど抵抗なく、準備、適応できていると思われます。

(※図1、2:どちらも得点が高いほど、ストレスが大きいことを示す)

 

 

【今後の展望】

 新入生のストレス状況は、2021年になり新型コロナウイルス感染症の感染拡大前(2019年)の水準に平均値上では戻ったことが示されました。しかしながら、重篤な精神的不調が示唆される学生の数は増加しており、こうした学生を早期に発見し、支援できる体制を整備することは高等教育機関の喫緊の課題と考えられます。今後は調査時期や対象学年を広げながら、継続的に調査を実施していくことで、いつ、誰に、どのような支援が必要となるかが、より明確になることが期待されます。

 

【論文情報】

雑誌名:PLOS ONE誌

タイトル:Lingering effects of COVID-19 on the mental health of first-year university students in Japan(COVID-19が日本の大学1年生の精神的健康に及ぼす長期的影響)

著者:Ryo Horita, Akihiro Nishio, Mayumi Yamamoto

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