OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取で、歯周病などの病原菌に反応する唾液中IgA抗体量の増加を確認

第66回春季日本歯周病学会学術大会で発表

meiji

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)と神奈川歯科大学 病理・組織形態学講座 環境病理学分野 槻木 恵一教授は、高齢者施設の入居者を対象とした観察研究において、乳酸菌Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1(以下、OLL1073R-1株)で発酵したヨーグルトの摂取により、口腔の病原菌に反応する唾液中のIgA※1抗体量が増加することを確認し、IgA抗体を介して口腔細菌叢が改善する可能性が示唆されました。当研究成果は2023年5月26日に第66回春季日本歯周病学会学術大会にて発表しました。

 

研究結果概要

高齢者施設の入居者を対象とした観察研究において、

①OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、口腔に常在する主な病原菌(Porphyromonas gingivalis (以下P.g.) ※2、Fusobacterium nucleatum (以下F.n.) ※3 )に反応する唾液中のIgA抗体量が増加することを確認しました。

②F.n.の舌苔※4細菌中の存在比率とF.n.に反応する唾液中のIgA抗体量が負に相関することを確認しました。

③ベイジアンネットワーク※5を用いた解析によって、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取は、P.g.、F.n.に反応する唾液中IgA抗体量に、また、F.n.に反応する唾液中IgA抗体量は、舌苔細菌中のF.n.の存在比率に影響を与えていることが示唆されました。

 

以上の結果から、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、口腔の病原菌に反応する唾液中のIgA抗体量が増加することを確認し、IgA抗体を介して口腔細菌叢が改善する可能性が示唆されました。

 

OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの可能性 

 当社は、これまでにOLL1073R-1株で発酵したヨーグルトについて、風邪罹患リスク低減効果※6、インフルエンザウイルスやヒトコロナウイルスに反応する唾液中のIgA抗体量の増強効果※7. ※8などを確認してきましたが、口腔細菌に反応する唾液中のIgA抗体については初めての研究成果となります。口腔細菌は口腔のみならず、全身疾患に影響することが知られています。口腔常在菌であるP.g.、F.n.は歯周病の病原菌であり、歯周病は糖尿病や心疾患に関連します。また、口腔由来のF.n.と大腸がんとの関連が報告されています※9。今回の研究で、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取によりP.g.、F.n.に反応する唾液中のIgA抗体量が増加することを確認しました。IgA抗体は病原菌に結合して排除する機能を持ちます。これらのことから、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取は口腔環境を改善し、全身のさまざまな疾患リスクを低減することが考えられます。本作用については今後詳細に検証し明らかにする予定です。当社は、今後も健康課題と向き合った研究を続け、人々が笑顔で健康な毎日を過ごせる未来の実現を目指してまいります。

 

※1 IgA:抗体の一種であり、病原体に結合することで体内への侵入を防ぐ働きがある。

※2 ポルフィロモナス・ジンジバリス:歯周病の原因菌

※3 フソバクテリウム・ヌクレアタム:歯周病関連菌、大腸がんにも関連しているといわれている。

※4 舌苔:舌の上に付着した苔状のもので、食べ物のカス、剥がれ落ちた上皮細胞、細菌などから構成される。

※5 ベイジアンネットワーク:対象の事象間の因果関係(依存関係)を確率を用いて表記する手法。

※6 出典:Makino S, et al. Br J Nutr, 104(7):998-1006, 2010.

※7 出典:Yamamoto Y, et al. Acta Odontol Scand, 77(7):517-524, 2019.

※8 2022 年 11 月 11 日リリース:「高齢者施設の入居者を対象とした観察研究において、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、風邪の原因となるヒトコロナウイルスに反応する唾液中のIgA抗体量が増加し、風邪罹患リスクが低減することを確認」

※9 出典:Komiya Y, et al. Gut, 68(7):1335-1337, 2019.

 

発表内容

【タイトル】

ヨーグルト摂取が口腔内常在菌に交叉する唾液中IgAレベルに与える影響

 

【発表者】

山本 裕子1), 猿田 樹理2), 坂口 和歌子2), 東 雅啓2), 清水 智子2), 両角 俊哉3), 田村 宗明4), 高橋 徹5), 根岸 紘生6), 土橋 英恵6), 市川 愛弓6), 下仲 敦6), 横尾 岳大6), 唐 舒宜6), 牧野 聖也6), 狩野 宏6), 北條 研一6),

槻木 恵一2)

1)神奈川歯科大学短期大学部, 2)神奈川歯科大学, 3)日本歯科大学新潟生命歯学部, 4)日本大学歯学部, 5)金沢学院大学, 6)株式会社 明治

 

【方法と結果】

 特別養護老人ホームAには、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトを2015年4月から提供しており、入居者は毎日1個(112 g)を摂取しています。この施設の入居者47名(うち4名は本ヨーグルト未摂取)と、本ヨーグルトを提供していない介護老人保健施設Bの入居者52名を対象者とし、観察研究を行いました。本対象者をヨーグルト摂取群43名と非摂取群56名に分け、2019年12月に唾液と舌苔を採取しました。P.g.、F.n.に反応する唾液中のIgA抗体量や舌苔中のP.g.、F.n.の存在比率等を測定し、解析することによって、以下の結果を得ました。

 

(1)ヨーグルト摂取群は非摂取群と比べて、P.g.、F.n.に反応する唾液中のIgA抗体量が有意に高値でした(図1、ウィルコクソンの順位和検定、p<0.05)。

(2)F.n.の舌苔細菌中の存在比率とF.n.に反応する唾液中のIgA抗体量は有意な負の相関を示しました(図2、スピアマンの順位相関係数、p < 0.05)。

(3)被験者の背景情報と合わせてベイジアンネットワークを用いた解析を行った結果、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取は、P.g.、F.n.に反応する唾液中IgA抗体量に、また、F.n.に反応する唾液中IgA抗体量は、舌苔細菌中のF.n.の存在比率に影響を与えていることが示唆されました(図3)。

 

以上の結果から、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取により、口腔の病原菌に反応する唾液中のIgA抗体量が増加することを確認し、IgA抗体を介して口腔細菌叢が改善する可能性が示唆されました。

 

 ※10 arbitrary units:任意単位。P.g.、F.n.に反応するIgA抗体量は、ELISA法で取得した吸光度に唾液分泌速度を乗じた値(arbitrary units,

  AU)とした。AUが高いほど、IgA抗体量が高い。非摂取群の平均値を1AUとし、その相対値で示した。

 

2F.n.に反応する唾液中のIgA抗体量(横軸)とF.n.の舌苔細菌中の存在比率(縦軸)との関係
3:ベイジアンネットワークによる被験者背景情報と唾液中IgA抗体量ならびに舌苔細菌との関係図 (灰色で塗りつぶした項目は解析起点を意味する)

※11 ユニット:各施設における小グループ

※12 唾液分泌速度:単位時間当たりに分泌された唾液の量

※13 唾液中IgA抗体量:唾液中に分泌された総IgA抗体量

 

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