地域のお産を守りたい!新しい命をつなぐ「ファミール産院ありだ」

積水ハウス

2024年5月31日

積水ハウス株式会社

有田のお産環境が存続の危機に

 

日本各地で産院や産科医の不足が深刻化し、お産の継続が危ぶまれています。和歌山県の有田地域もその例外ではありません。地元ではお産の場が次々と失われ、「地元で子供が産めない」という状況が広がっています。そこで、有田市役所と地方創生に取り組む積水ハウスグループが連携し、有田でお産を続けるための新たなクリニック「ファミール産院ありだ」を整備・開院するプロジェクトに挑みました。

 

クリニック全景

 

 

不足する産科医

 

有田地域では、医師の退職により有田市立病院が2019年末、分娩の受け入れをストップ。この危機に対処するため、島根県浜田市出身の平野開士医師が有田市立病院に着任し、2022年2月から分娩を再開しました。

 

平野医師は、「全国で進む産科医不足に貢献したい」という想いを抱き続けてきました。ある時、有田市の現状を知り、同市の望月良男市長からの熱烈なオファーも受け、縁もゆかりもない有田への着任を決意します。

 

平野医師

 

 

「お母様と赤ちゃんのふるさとを守りたい、住み慣れた地で産めない『お産難民』を出してはならない、という強い思いがありました。」と、平野医師。

 

一度は分娩が再開されたものの、2年後の2024年4月には医師の働き方改革の施行により、勤務医の時間外労働が制限されます。これにより、産科医1人の有田市立病院では分娩が継続できなくなる恐れがありました。そこで、有田市は、「10年間は有田市で分娩を継続させる」という平野医師の強い意志を確認したうえで、事業主となる開業医による民間クリニックの誘致を検討し始めました。

 

官民一体で民間クリニックの誘致に奔走


有田市役所 経営企画の山本芳規課長は、市役所職員らと共に様々な方法を模索していたところ、別の事業を進めていた積水ハウスに相談し、連携することになりました。

 

左:有田市役所 経営企画 山本課長

右:座談会

 

 

こうして有田市役所と積水ハウスによる民間クリニックの誘致プロジェトがスタートしました。有田に進出を検討するクリニックや新しい産院のための敷地を探し、資金計画を進めてくなど、一つひとつ乗り越えていきました。

 

積水ハウスは、プロジェクトを実現に導くためのスキーム(計画、仕組み)づくりを担いました。初期投資と運営資金を支援する補助金が必要であることを有田市に伝えたところ、有田市の望月良男市長はすぐに近隣の湯浅町、広川町、有田川町に連絡を取り、市長自らが率先して動き、内諾を得ました。

 

積水ハウス 地方創生戦略部の吉崎賢博はこの動きに感心し、「異例のスピードで1市3町が補助を決めて下さったことに、有田地域の本気を感じました。私も覚悟を新たにした瞬間でした。」と話します。

 

積水ハウス 地方創生戦略部 吉崎賢博

 

 

一方、民間クリニックの誘致活動は難航していました。有田近隣・関西の医療関係者へのアプローチも、一向に手ごたえが得られません。その様な中、積水ハウスの医療・介護戦略室のネットワークにより出会ったのが、千葉県に本拠を置く「ファミール産院グループ」です。

 

有田の救世主「ファミール産院グループ」、旧保育所を新たな産院

 

背水の陣で臨んだ「ファミール産院グループ」の杉本雅樹代表との面談。このプロジェクトへかける熱量が伝わったのか、杉本代表は有田市の視察を承諾しました。望月市長との面談では同い年ということもあり、意気投合。共に「有田で産声を絶やしてはならない」という志が響き合い、開業の道が開けました。

 

ファミール産院グループ 看護部門リーダー 押本弘美

 

 

同産院グループ看護部門のリーダー、押本弘美さんは、この展開を受けて次のように話します。

 

「当産院グループでは、『妊婦の方が自分の住む街でお産ができるよう、地域のお産環境を維持する』という理念があります。杉本代表は、ここで断るのは理念に背くこと、リスクがあってもやらねばならないと考えたのではないでしょうか。」(押本さん)

 

積水ハウス 阪和支店 中屋善幸

 

 

並行して、積水ハウス 阪和支店の中屋善幸は、敷地探しに奔走していました。不動産事業社の情報も無いなか、市内の土地をくまなく歩きまわり、候補地を絞りました。

 

「私自身が有田出身でもあり、絶対に成就させると全力を注ぎました。」(中屋)

 

しかし、候補地を見た杉本代表は一言、「交通の便はよいが、普通過ぎて面白みがない」と。

 

振り出しに戻った敷地探し。たまたま半年後に閉所される市立糸我保育所の敷地が浮上し、視察することに。まず目に入ったのが、園舎のゾウとキリンの壁画です。杉本代表は「コレだ!」とひらめき、この場所が有田のお産環境を維持する最良のかたちになると確信しました。

 

園舎のゾウとキリンの壁画

 

 

視察に同行していた有田市役所の山本課長は、偶然にも当保育所の入所1期生。「地元で慣れ親しんだ園が産院になるという構想に熱いものを感じました。」と言います。

 

候補地が旧保育所跡地に決定されると、今回、産院に参加しているチームは契約から、設計・施工の調整まで、一丸となって準備に取り組みました。有田、大阪、千葉をリモートでつなぎミーティングするも、コミュニケーションの壁に直面しました。撤退も辞さない雰囲気の時、有田市から望月市長が千葉の「ファミール産院グループ」に直接出向き、空気がガラリと変わったのです。一緒に取り組んでいた積水ハウスの吉崎は、「やはり、最後は人です。チームワークを再確認し、前進できました」と振り返ります。

 

地域の記憶をつなぎ、幸せの花束に満ちた産院へ

 

新しい病棟を設計・施工するにあたり、外来棟のリノベーションは鴻池ビルテクノが、分娩・入院棟の新築工事は積水ハウスが担当することになりました。

 

鴻池ビルテクノ 大阪支店の久保田広法は、園舎のゾウとキリンの壁画に感銘を受け、地域の記憶を大切にしながら改築を進めることを決意。1976年の壁画を残すため、コンクリートの強度やアスベストの調査を行い、安全性を確保した上で工事を進めました。

 

鴻池ビルテクノ 大阪支店 久保田広法

 

 

千葉から有田に着任が決まったファミール産院の押本看護部門リーダーは、「妊婦様の気持ちが『ふわっ』と高揚し、幸せに包まれるような病棟に」との希望がありました。その想いから、デザインコンセプトは「花束をママになるあなたに」に決定。フラワーボックスをイメージしたモチーフが施設中に散りばめられました。

 

左:入院・分娩棟 受付

右:フラワーボックスのモチーフ

 

 

入院棟の個室は、壁紙や家具が部屋ごとに異なるカラーコーディネートが施され、患者さんは好きな色の部屋を選ぶことができます。押本さんは「お気に入りの花束がそばにあるような、華やぐ気持ちになっていただける」と仕上がりに大満足です。

 

左:ピンクを基調とした部屋

右:ブルーを基調とした部屋

 

 

待望の開院、赤ちゃんが誕生!さらなる発展を目指して

 

2024年4月1日、「ファミール産院ありだ」は、数々の壁を乗り越えて開院を果たしました。そして翌日、待望の赤ちゃんが誕生。新しいママは、かつて平野医師が市立病院で担当していた妊婦さんでした。

 

「安心してお産に臨んでいただけ、分娩環境が途切れず続けられたことに、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。スタッフたちも、慣れない環境の中、尽力してくれました。ご主人は『私たちが第一号ですか』と感激され、ご夫妻から『2人目も必ずここで』との言葉を頂き、感動しました。」と院長に就任した平野医師は話します。

 

押本さんもまた、「開院に向けてミーティングを重ね、色んな壁を乗り越えて、ようやくこの地で赤ちゃんを抱かせて頂けた時は、幸せのあまり『うるっ』と来てしまいました」

 

地域の旧保育所が新たな産院として生まれ変わったことに、有田市役所の山本課長は、赤ちゃんが生まれたらしいねと。「住民の方は自分ごとのように喜び、地域全体が活気づいています。このプロジェクトは、官民一体で社会課題の解決を実現する成功例です。」と、誇らしげに語ります。

 

プロジェクトメンバー

 

 

1人目の誕生に続き、4月6日、7日にも「ファミール産院ありだ」で赤ちゃんが生まれました。

「『ファミールで産めるよ』『ここで産んでよかったよ』という声が、有田でさらに広まると嬉しいです。3人4人5人と産みたくなるご家族が増えるためにも、妊婦様やお母様とコミュニケーションを深めながら、精一杯努力を重ねていくつもりです。」と、平野医師と押本さんは意気込みます。

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