評判コストに対して頑健な社会規範をシミュレーションにより解明

学術誌Scientific Reportsに掲載。大規模な社会が安定を維持する仕組みの解明に大きく貢献。

立正大学学園

  立正大学経営学部(所在地:東京都品川区)の山本仁志教授を中心とする、創価大学、郡山女子大学、倫理研究所との研究チームが、人間社会における協力維持の鍵となる間接互恵性の分野で重要な進展を遂げました。研究チームは間接互恵の基盤となる社会規範の中で、特に評判コストや非協力者の存在に対して強固な2つの規範が存在することを明らかにしました。これにより、人間社会におけるより強靭な協力構造の構築に新しい知見をもたらしました。研究の成果はオンライン学術誌Scientific Reportsに掲載されました。

 

研究の概要と背景

 人間社会において、協力的な行動が直接の受益者ではなく、第三者によって返される仕組みを間接互恵性といい、直接互恵性とは異なる特徴を持っています。間接互恵性に関するこれまでの研究は、主に協力のコストを対象としていましたが、本研究では、これまであまり研究されてこなかった分野、協力ダイナミクスにおける重要な要素である「評判管理のコスト」に焦点を当てました。

 

研究の内容と成果

 本研究では、エージェントベースドシミュレーション(ABS)を用いて、間接互恵性における協力を安定させるための基盤となる「Leading Eight」と呼ばれる社会規範の頑健性を探求しました。Leading Eightの中の4つの規範は、評判の悪い人への非協力(正当化非協力)に対して中立的な立場をとることで、非協力者に対しても強い耐性を示しました。これらの規範は正当化非協力を罰しないことで、協力的な行動を非協力者の侵入から守ることができます。また、別の4つの規範は、評判の悪い人への協力を否定的に評価することで評判コストに対抗し、評判共有に貢献しない「フリーライダー」を排除することが可能であることも判明しました。これら二つの特徴を併せ持つ2つの規範によって、評判システムがコストを伴う状況かつ非協力者が多い状況でも、協力が安定して維持されることが保証されます。

 

図1.シミュレーション結果

 横軸が完全非協力者の初期比率、縦軸は評判コスト、色は青が協力を維持できていることを示しています。非協力者の存在や評判コストの増加が協力の維持を難しくしますが、Leading Eightという8つの社会規範の内、L8、L2の規範は非協力者の出現や評判コストの増加のどちらにも強い抵抗性を示します。

※論文( DOI:10.1038/s41598-024-76168-5 )中の図を引用しております。

 

今後の展開と展望

 この研究は、大規模な社会における評判共有の仕組みを理解することの重要性を強調し、これらのシステムのコストと利益に対するさらなる探求を促しています。非協力者の侵入や評判コストの両方に耐えることができる規範を特定したことで、人間社会において、より強靭な協力構造の構築への道が開かれました。

 

山本仁志教授 (立正大学経営学部 ) コメント

我々の研究は、協力の直接的なコストに焦点を当ててきた従来の視点に対し、評判コストが大規模な協力を維持する上で重要な役割を果たすことを示しました。この知見は、社会が協力的な行動をどのように促進し、維持できるかを探る新たな研究の道を提供します。

 

論文情報

・雑誌名:Scientific Reports

・論文名:Clarifying social norms which have robustness against reputation costs and defector invasion in indirect reciprocity

・著者:Hitoshi Yamamoto, Isamu Okada, Tatsuya Sasaki & Satoshi Uchida

・掲載日:2024年10月23日(現地時間)

・掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-76168-5

・DOI: 10.1038/s41598-024-76168-5

 

 

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プレスリリース添付画像

図1.シミュレーション結果

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