EY分析、EVが自動車販売の覇権を握る時代へ 従来予想より5年早まる見通し

EY Japan

・世界の自動車販売に占める米国、中国、欧州3市場全体の電気自動車(EV)の比率は、2033年までにエンジン式自動車のそれを上回る見通し

・EV以外の自動車販売の世界自動車市場に占める割合は、2045年までに1%未満にまで落ち込む見通し

・EVの販売台数は、2031年までは欧州がリードし、2032年から2050年にかけては中国が首位となる見通し

 

世界の自動車販売に占める米国、中国、欧州3市場全体の電気自動車(EV)の比率がエンジン式自動車のそれを上回る時代は、従来予想より5年早く到来する可能性があることが、EYの最新調査・分析によって明らかになりました。5年という具体的な数字は、人工知能(AI)を搭載したEY独自の予測モデリングツール、「EY Mobility Lens Forecaster(EYモビリティ・レンズ・フォーキャスター)」で試算したものです。EYでは、本ツールを用い2050年までのモビリティ製品やサービスの需要と供給を予測しています。

 

最新の予測データによると、欧州市場ではEV販売の比率が2028年までに他のパワートレインのそれを上回る見通しです。同様に、2033年までには中国で、2036年までには米国でもEV販売が覇権を握る時代が到来するでしょう。一方、EV以外の自動車販売の世界自動車市場に占める割合は、2045年までに1%未満にまで縮小する見通しです。EVの販売台数では、欧州が2031年までリードし、2032年から2050年にかけては中国が首位を占めると予想されます。

 

EY Global Advanced Manufacturing & MobilityリーダーであるRandall Millerは、次のように述べています。

「消費者動向の変化、気候問題に焦点を当てた厳格な規制、テクノロジーの進化などが相まって、自動車購入の在り方は恒久的に変わりつつあります。自動車業界も自動車の電動化にこれまで以上に本腰を入れ始めています。そうした中、画期的なEV時代の到来は、社会で広く予想されているよりも早くなる見通しです。この新たな見通しは、インフラ、発電、電力貯蔵などに対する政府やエネルギー業界の対応にも影響を及ぼします。先を見据えた企業ではすでにEY Mobility Lens Forecasterが提供する分析データを活用して、EVが覇権を握る市場の到来が予想よりもはるかに早まる可能性があることを認識し、こうした新たな市場環境にスムースに適応できるよう取り組んでいます」

 

新たな市場

 

世界の自動車業界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大がもたらした様々な課題の対処に向けて取り組んでいますが、その傍らで新たな消費者グループが生まれつつあります。EYの分析によると、そのグループの消費者はこれまでライドシェアリングや公共交通機関の利用を好み、マイカー所有を敬遠していましたが、コロナ禍によりマイカー所有に前向きな考えを持ち始めています。

 

EYが2020年11月に公表した指標「EY Mobility Consumer Index」によると、非マイカー所有者のほぼ3分の1が今後6カ月以内にマイカーを購入することを検討しています(19%が新車を、12%が中古車を検討)が、その内のほぼ半数はミレニアル世代です。また、既存のマイカー保有者とマイカー非保有者の30%が今後は内燃機関(ICE)以外の車を購入したいと回答しています。

 

EVに対する国レベルの支援策を見てみると、米国では新政権の下でEV購入者へのインセンティブの継続と充電インフラの整備を掲げています。欧州では、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オーストリアがコロナ関連の救済措置の一環でEV購入時の消費者へのインセンティブの付与を振興策として盛り込んでいます。英政府は、ICEの販売を2030年に禁止すると発表しました。中国政府もさまざまな規制措置を講じるとともに、製品ラインアップの充実化やEVの需要拡大に向けた支援を続けています。供給側である自動車メーカーもEV化に向けてガソリン車やディーゼル車の販売停止時期をそれぞれに示し始めており、こうした動きは世界的に進んでいます。

 

より信頼性の高い予測手法

 

EYの自動車セクター担当アナリストとデータサイエンティストは、AIを使ってモビリティの需要と供給に影響を与える変数データの分析を行うニューラルネットワークモデルを活用したEY Mobility Lens Forecasterを開発しました。分析の対象となる変数データは、消費者動向、規制状況、テクノロジーの進化(自動車およびエコシステムに関連するテクノロジー)、自動車メーカーが発表した戦略などが含まれます。EYでは定期的に新しい市場データを追加してこのニューラルネットワークモデルを更新しているため、ディスラプション(破壊的変化)や利用可能なテクノロジーなどを含む、変化し続ける実世界の状況に基づいた予測が可能です。同モデルはその予測を実際の結果と照合して計算の調整を行い、誤差を学習することにより、徐々に賢くなり、予測性能を高めます。

 

EY Mobility Lens Forecasterはこうした適応能力を活かして、将来起こり得るシナリオを予測し生成することもできます。生成されたシナリオは、企業や政府が将来に向けて何らかの決定を計画する際の一助になります。EYでは、セクター横断的に提供しているeMobilityに関するサービスの中心に本ツールを位置づけています。また、本ツールは、EY UtilityWaveなどのソリューションと連携しているため、将来像に関する意思決定のより良い根拠として、既存のエネルギーネットワーク全体のデータを活用することができます。

 

今後想定されるシナリオとしては、例えば、自動運転テクノロジーが飛躍的に進歩すると、フリート事業者の自動車業界への参入機会が生まれ、個人所有車の売上が減少するなど、同業界の在り方が大きく塗り替えられる可能性があります。同様に、各国政府が政策的な介入を行えば、EVに有利になるパワートレインの組み合わせへの転換に拍車がかかるでしょう。モビリティの利用者もこれからは公共交通機関と自家用車をほとんど、あるいは全く区別しない統合型の都市モビリティモデルを好むようになるかもしれません。その場合、個人所有車よりも複数の所有者を巻き込んだシェアリング車両が増加するでしょう。こうしたEVの普及を促進するファクターは上記に留まりません。それ故に、EY Mobility Lens Forecasterを活用する意義は大きいと言えるでしょう。

 

EYでは、すでに企業や政府に対してEY Mobility Lens Forecasterで得られたデータを活用した支援サービスを提供しています。例えば、EYプロフェッショナルチームは、EY Mobility Lens Forecasterを使って試算したEV普及率をもとに某大手エネルギー企業の充電インフラ整備計画の策定をサポートしました。さらに、EYでは英国の主要市議会と連携を図り、EVが普及する先進的な街づくりやEV用充電インフラの展開に関する戦略の策定をサポートしています。

 

Millerはまた、次のように述べています。

「EY Mobility Lens Forecasterはまさにゲームチェンジャーです。本ツールは、変化し続けるモビリティ業界の市場データをAIを使って分析し、パワートレイン、自動運転テクノロジー、オーナーシップなどの未来像を明確に示すことができます。こうした高い予測性能を持つEY Mobility Lens Forecasterは、パブリックセクターとプライベートセクター問わず、EYがクライアントに対してモビリティ市場の潜在的な未来シナリオのシミュレーションやモビリティの未来に関する戦略的な視点の強化を行う際に無くてはならないツールとなるでしょう」

 

EY Japan自動車・モビリティ・運輸・航空宇宙・製造・化学セクターコンサルティングリーダーである早瀬慶は、次のように述べています。

「メガトレンドの影響を受け、モビリティ市場の脱ICE化は加速しますが、使われ方、パワートレイン特性、国・地域事情等により、またエネルギー、トランスポーテーション等の関連業界との組み合わせにより、まだら模様に進展していきます。

先進プレーヤーの焦点は、いつから電動化が本格化するか?ではなく、“その世界を誰とどのように実現するか?”にシフトしており、不確実な将来シナリオを常に把握しながら、経営・事業判断することが求められます」

 

※本プレスリリースは、2021年6月23日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

 

英語版プレスリリース:

https://www.ey.com/en_gl/news/2021/06/electric-vehicles-to-dominate-sales-five-years-sooner-than-expected-ey-analysis

 

EY Japanのウェブサイト:

https://www.ey.com/ja_jp/news/2021/07/ey-japan-news-release-2021-07-13 

 

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本ニュースリリースは、EYのグローバルネットワークのメンバーファームであるEYGM Limitedが発行したものです。同社は、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。

 

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