日本で初めて日本人母乳中ヒトミルクオリゴ糖の濃度と 子の頭囲の成長や精神神経発達との関連を評価

2024年12月10日 国際学術誌Journal of Food Scienceへ掲載

meiji

株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、明治ホールディングス株式会社(代表取締役社長:川村 和夫)、国立大学法人東北大学東北メディカル・メガバンク機構※1(機構長:山本 雅之)および国立大学法人大阪大学生物工学国際交流センター(教授:藤山 和仁)と共同で、8種の母乳中ヒトミルクオリゴ糖(以下、HMOs)※2濃度の測定法を開発し、母乳中HMOs含量を評価しました。さらに、母乳中HMOs濃度と子の頭囲の成長や精神神経発達指数※3との関連を日本で初めて評価しました。本研究成果は、2024年12月10日に国際学術誌Journal of Food Scienceに掲載されました。

(Journal of Food Science doi: 10.1111/1750-3841.17597)

 

研究成果の概要

母乳中のHMOs(8種)を測定する手法を開発しました。

東北メディカル・メガバンク機構にて保管されている150名の母乳に含まれる8種のHMOs濃度分布を明らかにしました。

8種のうちの3種のHMOsで子の頭囲の成長や精神神経発達指数との正の相関関係が認められました。

 

研究成果の活用

今回の研究成果は、乳幼児の健全な成長と発達における母乳中成分の役割を解明する重要な知見となり、本研究で得られた知見の活用によって乳幼児の健やかな成長への貢献が期待されます。

 

研究の目的

HMOsは、母乳に多く含まれる難消化性オリゴ糖※4であり、子の腸内環境を整える栄養素であることが知られています。海外における複数の研究では、子の精神神経発達にも関連する成分であることが示されておりましたが、これまでに日本人を対象とした研究はありませんでした。また、HMOsにはさまざまな種類がありますが、評価対象とするHMOsにあわせて測定法を確立する必要があります。本研究では、8種の母乳中HMOsの測定法を開発し、日本人母乳中のHMOs濃度と子の頭囲の成長、および精神神経発達指数との関連を評価しました。

 

研究概要

東北メディカル・メガバンク機構の三世代コホート調査※5に参加された母乳栄養児※6とその母親から無作為に抽出された150組を解析対象としました。8種の母乳中HMOsの測定法を確立し、解析対象者の母親から産後1カ月に採取された母乳中の濃度を測定しました。これら成分について、母乳栄養児の出生から生後1カ月、5カ月、9カ月までの頭囲の成長と、生後6カ月、1歳、2歳の各時点での精神神経発達指数との関連を多変量解析※7により評価しました。その結果、8種のHMOsについて日本人母乳における濃度分布の実態が明らかにされるとともに、一部のHMOsでは子の頭囲の成長や精神神経発達指数との間に正の相関が観察されました。

 

※1 東北メディカル・メガバンク機構は、未来型医療を築いて震災復興に取り組むために設置され、東日本大震災の被災地の地域医療再建と健 康支援に取り組みながら、医療情報とゲノム情報を複合させたバイオバンクを構築している機構です。

※2 ヒトミルクオリゴ糖は母乳中に3番目に多く含まれている多糖類です。乳には多糖類が含まれていますが、母乳には量および種類ともに多く含まれており、その機能性が注目されております。

※3 今回はAges & Stages Questionnaires®, Third Edition(ASQ-3、乳幼児発達検査スクリーニング質問紙)という評価指標を用いました。ASQ-3には5つの発達領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)について親が回答することで子どもの発達を評価します。

※4 難消化性オリゴ糖とは、胃や小腸で消化されにくい多糖類のことです。難消化性オリゴ糖はそのまま大腸まで届き、腸内細菌の栄養源となります。

※5 三世代コホート調査とは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が実施している長期健康調査の一つで、主に宮城県の7万人以上の方にご協力いただいております。この調査は、世界初の三世代の家系情報付きの出生コホート調査であり、世界最大規模の三世代のコホート調査でもあります。この調査は、一人一人の体質と生活習慣や環境がどのように病気と関連するかを調べ、病気の原因を明らかにし、体質を考慮した最適な病気の予防法や治療法を開発する基盤を作るために行われています。

※6 ここでは、出生から6カ月以上の間、母乳のみで育てられた乳児を母乳栄養児としております。

※7 多変量解析とは、複数のデータの関連性を同時に解析する手法で、データを要約・予測するための統計解析手法の総称です。

 

論文内容

【タイトル】

母乳中濃度分布と子の脳発達指標との関連性評価のための母乳中ヒトミルクオリゴ糖8種の定量

(Absolute quantification of eight human milk oligosaccharides in breast milk to evaluate their concentration profiles and associations with infants’ neurodevelopmental outcomes)

 

【著者名】

Keigo Sato, Yoshitaka Nakamura, Kazuhito Fujiyama, Kinuko Ohneda, Takahiro Nobukuni, Soichi Ogishima, Satoshi Mizuno, Seizo Koshiba, Shinichi Kuriyama, Shinji Jinno

 

【方法】

東北メディカル・メガバンク機構の三世代コホート調査に参加された母乳栄養児とその母親150組を無作為に抽出しました。母乳栄養児は出生から6カ月以上の間、母乳のみで育てられた乳児を指します。母乳中のHMOs8種(2’-フコシルラクトース[2’-FL]、3’-フコシルラクトース、3’-シアリルラクトース[3’-SL]、6’-シアリルラクトース、ラクトシアリルテトラサッカライドa、ラクトシアリルテトラサッカライドb、ラクトシアリルテトラサッカライドc、ジシアリルラクトNテトラオース[DSLNT])を高速液体クロマトグラフィー/質量分析※8により定量する測定法を開発しました。そして、母乳栄養児の母親から産後1カ月に採取された母乳中の各HMOsの濃度を測定しました。これら成分について、母乳栄養児の生後1カ月、5カ月、9カ月までの頭囲の成長と、生後6カ月、1歳、2歳の各時点での精神神経発達指数との関連を多変量解析により評価しました。

 

【結果】

評価した8種のHMOsについて、日本人母乳における濃度分布の実態が示されました。そのうち、解析対象者全体の解析では、2’-FLに子の頭囲の成長(出生から生後5カ月)、ならびに精神神経発達指数(24カ月微細運動)との正の相関が観察されました。また、2’-FL分泌型※9の解析対象者での解析では、3’-SLとDSLNTに子の精神神経発達指数(12カ月粗大運動[3’-SL]、12カ月微細運動[DSLNT])と正の相関が観察されました。

 

【考察】

本研究により、日本人母乳中の各種HMOsの濃度分布が明らかになりました。また、一部のHMOsに頭囲の成長や精神神経発達指数といった子の脳発達指標との正の関連が観察されました。今回得られた結果は、乳幼児のより良い成長・発達に役立つ知見となることが期待されます。

 

※8 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と質量分析(MS)を組み合わせた分析手法です。HPLCは、物質を分離するための技術です。MSは、物質の分子量を測定する技術です。これらを組み合わせて分析することで、物質の同定や定量ができるようになります。

※9 遺伝的な背景によって、母乳中2’-FL濃度は大きく変動します。今回は母乳中2’-FLが一定濃度以上である解析対象者を2’-FL分泌型としました。

 

 

 

 

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