日射量レポート2024 「気象衛星データでみる2024年の年間日射量」

~日射量は多くの地域で「例年並」、前年に比べ広い範囲で「少ない~並」傾向~

日本気象協会

2025年2月3日(月)11:00

一般財団法人 日本気象協会

20252月3

一般財団法人 日本気象協会

 

 日射量レポート2024  「気象衛星データでみる2024年の年間日射量」 ~日射量は多くの地域で「例年並」、前年に比べ広い範囲で「少ない~並」傾向~

日本気象協会では、2015年から毎年、日本全国の年間日射量を地域別にまとめた「日射量レポート」を発表し、太陽光発電や農業分野などの事業者の皆さまに参考情報として活用いただいています。10回目の今年は、日本気象協会が独自で作成している「気象衛星データを用いた日射量推定値(SOLASAT 9-Now:ソラサットナインナウ)」に基づき分析、レポートを作成しました。「日射量」という視点から、2024年がどのような1年だったかを早速振り返ってみましょう。

 

1.2024年は、どのような年だったのか

日本気象協会は、2024年12月に日本気象協会所属の気象予報士のうち105名の調査をもとに決定した「2024年 お天気トレンド大賞」を発表しています(図1)。

 


図1 日本気象協会「2024年 お天気トレンド大賞」 https://www.jwa.or.jp/news/2024/12/24848/

 

2024年は元日の能登半島地震や、4月の豊後水道を震源とする地震、8月の日向灘地震に関連する南海トラフ地震臨時情報の発表など、地震に関するニュースが目立つ年でした。また、夏の暑さが厳しく、2023年と並び、統計開始以来歴代1位タイの記録的な暑さの夏となりました。日本への台風の上陸数は2つで、そのうちの1つである台風10号は、日本付近で移動速度が遅く、太平洋側を中心に記録的な大雨となりました。この台風の接近に伴い奄美地方を除く鹿児島県には暴風、波浪、高潮の特別警報が発表されました。

 

 

2.2024年の日射量 例年との比較

 図2は、気象衛星データを用いた日射量の推定値(SOLASAT 9-Now)から分析した「2024年の日射量」を例年と比較した図です。例年よりも日射量が多かった地点を暖色系(赤~黄)、少なかった地点を寒色系(水色~濃青)の色で示しています。

 2024年の日射量は、例年と比較して、北海道、東北太平洋側、関東の一部、奄美で「例年並」~「やや多い」傾向がみられました。その一方で、東北日本海側、北陸、甲信では「やや少ない」~「例年並」の傾向となりました。その他の多くの地域では、「例年並」の傾向となりました。

 

図2 2024年の日射量(例年比)

3.2024年の日射量 前年(2023年)との比較

図3は、2024年の日射量を前年(2023年)と比較した図です。前年よりも日射量が多かった地点を暖色系(赤~黄)、少なかった地点を寒色系(水色~濃青)の色で示しています。

2024年の日射量は、前年(2023年)と比較して、北海道などの一部地域で、「前年並~やや多い」傾向となり、全国的には「少ない」~「前年並」の傾向となりました。特に東北、関東甲信、北陸、東海の一部地域などでは「少ない」傾向となった地域も見られました。

 

図3 2024年の日射量(前年比)

 

4.2024年の日射量まとめ

表1に「2024年の日射量」の地域別の傾向をまとめました。表1は日照時間を観測しているアメダス約840地点※1での日射量の推定値を基に分析した結果となります。オレンジ色の部分は例年※2または前年(2023年)の日射量と比べて「やや多い」地域、青色の部分は「やや少ない」「少ない」地域、白色の部分は例年並(または前年並)を表します。

 

※1 日照時間の推定値の地点を含む。

※2 例年の日射量:過去8年(2016~2023年)の年間日射量の平均値。

 

表1 2024年の日射量

 

2024年の日射量は、例年と比較して、北海道、東北太平洋側、奄美で「例年並」~「やや多い」傾向がみられました。その一方で、東北日本海側や、北陸では「やや少ない」~「例年並」の傾向となりました。その他の多くの地域では、「例年並」の傾向となりました。

また、前年と比較すると、2023年は全国的に日射量が多い傾向がみられた年であった影響もあり、北海道などの一部地域を除いて、全国的に「少ない」~「前年並」の傾向となりました。

 

 

5.2024年の日射量 月変化

全国の主要都市10地点を対象とした日射量の月変化(2024年、前年、例年)を図4に示します。例年と比べて特徴があった4月、9月、10月について、気象状況や日射量の特徴を振り返ります。

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日本付近は短い周期で天気が変わり、暖かい空気に覆われることが多かったため、全国的に気温が高くなりました。特に、北日本、東日本、沖縄・奄美では、4月としては1946年の統計開始以来1位の高温となりました。一方、前線や湿った空気の影響を受けやすかったことから、東日本太平洋側や西日本を中心に寡照傾向となり、例年と比較して東京では0.88倍、広島では0.83倍、福岡では0.78倍の月平均日射量となりました。2024年4月のように、暖かく湿った空気が流れ込みやすいような場合には、寡照傾向であっても気温が高くなる場合があります。

 

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日本列島は高気圧に覆われることが多く、気温の高い日が多くなりました。東日本、西日本、沖縄・奄美では、9月としては1946年の統計開始以来1位(沖縄・奄美は1位タイ)の記録的高温となり、残暑の厳しい9月となりました。一方、9月中旬~下旬にかけては秋雨前線の影響で記録的な大雨となった地域もあり、9月20日には秋田県で線状降水帯が発生、21日には石川県能登地方に大雨特別警報が発表され、豪雨災害が発生しました。月平均日射量は北海道や西日本で例年より多い傾向がみられ、例年と比較して札幌では1.13倍、大阪では1.21倍、広島では1.38倍、高松では1.27倍、福岡では1.38倍の月平均日射量となりました。一方、仙台では0.88倍、那覇では0.90倍と、例年よりも少ない日射量となりました。

 

10月

偏西風が例年よりも北寄りに流れていたことにより、全国的に暖かい空気に覆われやすく、記録的な高温となりました。特に北日本、東日本、西日本では、10月としては1946年の統計開始以来1位の高温を記録しました。また、10月19日には東京都心で、統計開始以来最も遅い真夏日(最高気温が30℃以上の日)が観測されました。一方、上旬・下旬に低気圧や秋雨前線に伴う雲が東日本、西日本にかかりやすかったことも影響して、月平均日射量は例年と比較して、広島では0.87倍、高松では0.92倍、福岡では0.83倍となりました。

 

 

(a) 札幌                  (b) 仙台

 

(c) 東京                  (d) 富山

(e) 名古屋                 (f) 大阪

 

(g) 広島                  (h) 高松

 

(i) 福岡                  (j) 那覇

 

図4 主要都市における日射量の月変化(2024年・前年・例年)

 

 

.日本気象協会の太陽光発電事業者向けサービスについて

 本レポートでは、日本気象協会が独自で作成している「ひまわり8・9号による水平解像度0.5kmメッシュの日射量推定サービス(SOLASAT 9-Now)」に基づき、2024年の日射量の分析を行いました。太陽光発電事業者向けサービスとして、ひまわり8・9号データによる日射量予測サービス(SOLASAT 9-Nowcast)、日照時間から推定した日射量データの提供サービス(アメダス推定日射量)、独自気象モデルによる日射量・太陽光発電出力予測サービス(SYNFOS-solar)、なども展開しています。これらの推定・予測情報は、日射量・太陽光発電出力の実況監視や発電計画の作成に加え、自家消費型太陽光発電設備へのPPAモデル導入検討や蓄電池の効率的な運用計画策定など、太陽光発電事業に関わる幅広い分野で活用いただいています。

 今回ご紹介した「2024年の日射量」レポートを太陽光発電や農業分野などの事業者の皆さまに参考情報としてご提供することで、ビジネス活動の活性化を支援いたします。

 

ひまわり8・9号による日射量推定サービスSOLASAT 9-Now

https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-13/

ひまわり8・9号による日射量予測サービスSOLASAT 9-Nowcast

https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-12/

アメダス推定日射量

https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-02/

日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar

https://www.jwa.or.jp/service/energy-management/solar-power-05/

 

 

本レポートの年間日射量の比較に関する用語

 かなり多い :例年(前年)の+10%以上

 多い    :例年(前年)の+6~+10%

 やや多い  :例年(前年)の+2~+6%

 並     :例年(前年)の-2~+2%

 やや少ない :例年(前年)の-2~-6%

 少ない   :例年(前年)の-6~-10%

 かなり少ない:例年(前年)の-10%未満

 

<過去発表した「年間日射量」の傾向資料について>

2015年 ( 2016.2.29 https://www.jwa.or.jp/news/2016/02/4564/ )

2016年  ( 2017.1.19 https://www.jwa.or.jp/news/2017/01/4421/ )

2017年 ( 2018.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2018/01/4298/ )

2018年 ( 2019.1.31 https://www.jwa.or.jp/news/2019/01/4202/ )

2019年 ( 2020.3.11 https://www.jwa.or.jp/news/2020/03/9493/ )

2020年 ( 2021.4.14 https://www.jwa.or.jp/news/2021/04/12959/ )

2021年 ( 2022.4.07 https://www.jwa.or.jp/news/2022/04/16357/ )

2022年 ( 2023.4.14 https://www.jwa.or.jp/news/2023/04/20095/ )

2023年 ( 2024.4.23 https://www.jwa.or.jp/news/2024/04/22888/ 

 

一般財団法人 日本気象協会

環境・エネルギー事業部 エネルギー事業課 グループリーダー 
気象予報士

宇都宮 健志(うつのみや けんじ)

 

名古屋大学大学院工学研究科(社会基盤工学専攻)
修士課程修了

日射や太陽光関連のデータ解析、技術開発、コンサルタント業務に従事している。

◆◆◆お問い合わせ先◆◆◆

一般企業・自治体の方

日本気象協会 環境・エネルギー事業部

MAIL: ke-eigyo_kankyo@jwa.or.jp 

 

 

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