酵母発酵ニンニクが細胞の健康を守る仕組みを解明

オートファジーを活性化する新たなメカニズムとポリミアンバランスの重要性

早稲田大学

酵母発酵ニンニクが細胞の健康を守る仕組みを解明 — オートファジーを活性化する新たなメカニズムとポリミアンバランスの重要性 —

 

詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。

 

発表のポイント

◆ ニンニクの酵母発酵処理により、細胞保護システムであるオートファジー活性化作用が増強されることを発見しました。

◆ 発酵により「スペルミン」と「スペルミジン」という2種類のポリアミンの比率が最適化され、これが転写因子EGR1を介してオートファジーを活性化することを明らかにしました。

◆ 酵母発酵ニンニクによるオートファジーの分解亢進作用と関連した転写応答がマウスの個体においても生じていることを確認しました。酵母発酵ニンニクに含まれるポリアミンバランスは、細胞内のダメージを軽減し、健康寿命の延伸や加齢関連疾患の予防に繋がることが期待されます。

 早稲田大学人間科学学術院 JSPS特別研究員の謝 堃(しゃ くん)氏と矢野 敏史(やの さとし)講師、原 太一(はら たいち)教授らによる研究グループは、長崎国際大学の宇都 拓洋(うと たくひろ)教授らとの共同研究により、加熱ニンニクを酵母で発酵させることで、細胞内成分を分解・再利用するシステムであるオートファジーを活性化することを明らかにしました。オートファジーは細胞をリノベーションすることで細胞の健康を維持にし、老化や病気の予防、健康寿命の延伸に関わることが知られています。この機能は年齢とともに低下するため、オートファジーを活性化する食品成分の発見は健康長寿社会の実現に大きく貢献することが期待されます。

 

 

 ニンニクは、多くの健康効果が報告されている健康食品素材であり、デザイナーズフードピラミッド(アメリカ国立がん研究所によって作成された、がん予防のために効果があるとされる食品を、効果が期待できる順に並べたもの)の最上位に位置づけられています。今回研究チームは、酵母発酵ニンニクは通常のニンニクよりもオートファジー活性化作用が大幅に高まることを突き止めました。

 さらに研究チームは、その効果の鍵が「ポリアミンバランス」にあることを発見し、オートファジー活性化成分としてポリアミンを見出し、酵母発酵にんにくに含まれる「スペルミン」と「スペルミジン」という2種類のポリアミンの比率が最適化されることで、オートファジーが活性化されるということを見出しました。また、ニュートリゲノミクスの手法を用いて、転写因子EGR1がオートファジーの活性化に関与することを明らかにしました。酵母発酵ニンニクはオートファジーを介した細胞内への異常タンパク質の蓄積によって惹起される細胞ストレスや酸化障害への保護効果も示されており、アルツハイマー病などの神経変性疾患やがん、生活習慣病の予防などに役立つ機能性食品素材として期待されます。この発見は、単に食品の機能性成分の「量」だけでなく「成分バランス」が重要であることを示す画期的な研究成果になると考えられます。

 本研究成果は『Molecular Nutrition & Food Research』(論文名:The Yeast-Fermented Garlic and a Spermine/Spermidine Activates Autophagy via EGR1 Transcriptional Factor)にて、2025年2月13日(木)にオンラインで公開されました。

 

■研究の波及効果や社会的影響

 本研究では、食品がもたらすオートファジー活性化の有用性を明らかにしました。食品によるオートファジーの活性化は、加齢に伴って増加する異常タンパク質の除去などに機能すると考えられ、様々な疾患の予防に寄与することが期待されます。また、転写因子EGR1を介した新しいオートファジー活性化メカニズムも見出しました。食事制限など、栄養センサーを介したオートファジーには健康リスクが懸念されます。今回発見した食品成分によるオートファジーの活性化は、普段の食事に機能性成分を加えるだけで実現できる可能性があり、安全性の高い健康増進が期待されます。

本研究の対象としたニンニクは、古くから滋養強壮の食品として親しまれています。そこに、加熱や発酵などの加工を加えることで、健康効果をさらに高められることを新たに発見しました。さらに、発酵によってニンニク中の「ポリアミン」のバランスが変化し、それが健康効果を高めた一因であることを見出しました。このポリアミンは私たちの体内のあらゆる組織に存在する重要な成分ですが、加齢とともに減少することが知られており、寿命との関連も報告されています。今回開発した酵母発酵ニンニクに含まれる最適なポリアミンバランスの摂取は、オートファジーを活性化するだけでなく、体内のポリアミン不足を効果的に補う健康素材になることが期待できます。本研究成果は、超高齢社会の健康問題やウェルビーイングの向上に貢献する社会的意義の高い研究になると考えています。

 

■研究者のコメント

 本研究では発酵食品の新たな健康価値を科学的に証明しました。特に、ポリアミン比という成分バランスが機能性に及ぼす影響を明らかにした点が重要だと考えています。これまでの食品の機能性研究は個々の成分に着目して研究されてきましたが、食品成分のペアリングやバランスという、食品本来の複数成分の相互作用による機能性を研究することが今後は重要になってくると考えられます。また、オートファジーの活性化メカニズムに関しても、従来の栄養飢餓とは異なる経路でオートファジーが活性化することを示せたのは、学術的にも重要な意義があります。日常的な食生活における栄養変化と食品因子がどのように関連してオートファジーを制御していくのかを理解することは、オートファジーの社会実装において大きな役割を果たすと思われます。そのために、富栄養下で生じるオートファジーの仕組みを明らかにしていくことが重要であると考えています。また、極端な食事制限はなしに、日常の食事でオートファジーを活性化するという健康への新しい戦略が可能になることは、予防医学的にも社会的意義が大きいと考えています。

 

■論文情報

雑誌名:Molecular Nutrition & Food Research

論文名:The Yeast-Fermented Garlic and a Spermine/Spermidine Activates Autophagy via EGR1 Transcriptional Factor

執筆者名(所属機関名):謝 堃1、4、*、矢野 敏史1、*、ワン ジンユン1、山越 正汰1、太田 智絵2、
宇都 拓洋2、坂井 麻衣子3、Xi He4、吉崎 嘉一5、久保田 拓海6、
大西 康太3、原 太一1、※ *筆頭著者 ※責任著者

1: 早稲田大学 人間科学学術院

2: 長崎国際大学 薬学部

3: 徳島大学 医学部

4: 湖南農業大学 動物科学技術学部

5: 愛知県医療療育総合センター 発達障害研究所

6: 天真堂株式会社

掲載日時:2025年2月13日(木)

掲載URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mnfr.202400606

DOI:https://doi.org/10.1002/mnfr.202400606

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