レジスタンス運動の休息時間の違いは脂質代謝に影響するのか?
~レジスタンス運動の休息時間の違いは食後中性脂肪に影響を及ぼさない~
2026年10月13日
早稲田大学
レジスタンス運動の休息時間の違いは脂質代謝に影響するのか?
~レジスタンス運動の休息時間の違いは食後中性脂肪に影響を及ぼさない~
発表のポイント
●レジスタンス運動では、運動間の休息時間によって乳酸や生理学的反応が異なることが示されていますが、食後中性脂肪を始めとした脂質代謝への影響は明らかではありませんでした。
●健康な若年男性15名を対象に、運動間の休息時間を30秒あるいは180秒とした運動と、運動を行わない安静状態の3条件を比較しました。
●その結果、休息時間の違いによって翌日の食後中性脂肪に有意な差はみられませんでした。
●以上より、運動間の休息時間は翌日の食後中性脂肪には影響を与えない可能性が示されました。
ウエイトトレーニングなどのレジスタンス運動※1では、運動の間の休息時間の長さによって乳酸や生理学的反応が異なることが報告されています。しかし、休息時間の長さが翌日の食後中性脂肪※2を始めとした脂質代謝に与える影響についてはこれまで検討されていませんでした。早稲田大学スポーツ科学学術院の宮下 政司(みやした まさし)教授、同大学大学院スポーツ科学研究科(当時)のペレイラ エイジ氏、山田 善貴(やまだ よしき)氏らの研究グループは、レジスタンス運動習慣のある健康な若年男性15名を対象に、休息時間を30秒あるいは180秒とした運動と、運動を行わない条件を比較しました。その結果、休息時間の違いによって、翌日の食後の中性脂肪に差はみられませんでした(図1)。
本研究成果は2026年9月14日(月)に『European Journal of Clinical Nutrition』に掲載(Ahead of printがオンライン)されました。

図1:今回の研究内容の概要図
キーワード:
レジスタンス運動、休息時間、食後中性脂肪、グルコース、インスリン
(1)これまでの研究で分かっていたこと
食後中性脂肪濃度の上昇は、動脈硬化の進展に関係するほか、血管の働きの低下や酸化ストレス、炎症などとも関連すると考えられています。
これまでの先行研究において、一過性の運動が翌日の食後中性脂肪濃度に影響を及ぼすことが示されています。特に有酸素性運動によって、翌日の食後中性脂肪濃度が低下することが報告されており、その有用性には運動によるエネルギー消費量が関係すると考えられています。一方、レジスタンス運動においては、エネルギー消費量が比較的に小さいにもかかわらず、食後中性脂肪濃度を低下させることも一部、報告されています。
これまで、レジスタンス運動においては、運動の量や負荷の違い(運動のセット数や反復回数なども含め)による影響について検討されてきましたが、レジスタンス運動の重要な因子の一つである運動間の休息時間については検討されていませんでした。レジスタンス運動の休息時間を短くすると、同じ運動量や負荷でも、血中乳酸濃度や主観的な運動強度が高くなるなど、運動中の身体的な負担が大きくなることが知られています。
そこで本研究では、レジスタンス運動における休息時間の違いに着目し、食後の中性脂肪への影響を検討しました。
(2)今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、そのために新しく開発した⼿法
これまで運動量や負荷をそろえたうえで、セット間の休息時間だけを変えた場合に、翌日の食後の中性脂肪がどのように変化するのかは明らかになっていませんでした。そこで本研究では、セット間の休息時間に着目し、休息時間の違いが翌日の食後中性脂肪濃度に及ぼす影響を検討しました。
日頃からレジスタンス運動を行っている健康な若年男性15名を対象に、①セット間を30秒休む「短い休息時間」、②180秒休む「長い休息時間」、③運動を行わない「安静」の3条件を、無作為な順番で実施しました。2つの運動条件では、種目、セット数、反復回数、外部負荷を同じにしたレジスタンス運動を行いました。運動を行った翌日は、10時間の絶食後に採血を行い、その後、全員が同じ朝食を摂取しました。朝食後6時間にわたって血液を採取し、中性脂肪濃度を始めとした脂質代謝の他、グルコース※3、インスリン※4濃度を始めとした糖代謝マーカーを測定しました。
その結果、セット間の休息時間が30秒の短い休息時間と180秒の長い休息時間を含め、3条件間における翌日の食後中性脂肪濃度に差は認められませんでした(図2)。また、中性脂肪の実験全体の数値を示す総曲線下面積※5、空腹値からの上昇分を示す上昇曲線下面積においても差は認められませんでした(図3)。したがって休息時間の違いが食後中性脂肪濃度に影響を及ぼさないことを明らかとしました。一方、糖代謝マーカーであるグルコースおよびインスリン濃度において、長い休息時間では、安静条件と比べて翌朝(2日目)の空腹時グルコースとインスリン濃度が低くなりました。また、短い休息時間では、食後1時間のインスリン濃度が安静状態より低くなりました(図4)。
図2:2日目の中性脂肪濃度(経時変化)

図3:2日目の中性脂肪濃度(総曲線下・上昇曲線下面積)
図4:2日目の脂質・糖質代謝マーカー
長い休息時間の条件では、運動強度は低かったものの運動時間が長くなったことから、短い休息時間よりもエネルギー消費量が大きくなり、翌日のグルコースやインスリン濃度に影響した可能性が示唆されました。
これらの結果から、セット間の休息時間は翌日の食後中性脂肪濃度には影響を及ぼさない一方、糖代謝マーカーであるグルコースやインスリンに影響する可能性が示されました。
(3)研究の波及効果や社会的影響
レジスタンス運動は、筋力や筋量の維持・向上だけでなく、健康維持のための身体活動として広く行われています。そのため、運動のどのような条件が食後の代謝に影響するのかを明らかにすることは、運動方法を考えるうえで重要です。
本研究では、運動間の休息時間を短くして運動中の身体的負荷を高めても、翌日の食後中性脂肪濃度に影響を与えないことを明らかにしました。この結果は、レジスタンス運動による食後中性脂肪濃度への影響を考える際に、休息時間だけでなく、運動量や負荷など複数の条件を考慮する必要があることを示しています。また、本研究では、長い休息時間をとったレジスタンス運動の翌日に、空腹時のグルコースとインスリン濃度が低下しました。このことから、レジスタンス運動の休息時間よりもエネルギー消費量が食後の糖代謝に影響を及ぼす可能性があります。
(4)課題、今後の展望
本研究の対象者は健康な東アジア人の若年男性15名で、日頃からレジスタンス運動をしている人に限られていました。そのため、異なる民族や集団でも同じ結果が得られるかは分かっていません。特にインスリン感受性はアジア人内でも民族グループによっても異なることが知られているため、今後は、対象者の年齢や運動習慣の違いを広げるとともに、異なる民族グループを対象に運動量や負荷、休息時間などの条件を組み合わせて検討する必要があります。また、本研究では、休息時間の違いによって生じる運動時間の違いからエネルギー消費量に差が生じました。今後は、休憩中のエネルギー消費量と運動によるエネルギー消費量との違いが翌日の食後中性脂肪にどのように関係するのかをより正確に評価する必要があります。これにより、休息時間そのものの影響と、運動によるエネルギー消費量の影響をより明確にできると考えられます。
(5)研究者のコメント
レジスタンス運動では、休息時間を短くすることで運動中の身体的な負担を高めることができます。しかし、運動中の負担が大きくなっても、それが翌日の食後中性脂肪の低下に影響を及ぼすわけではないことが今回の研究で明らかになりました。つまり、レジスタンス運動による中性脂肪への影響を理解するためには、運動による総負荷量が同じ場合、休憩時間を長くすることで運動後に生じるエネルギー消費量の増加が食後の中性脂肪に影響を与えないことを考慮すると、どのような要因で低下させるか否かに目を向けて、さらに検討することが重要だと考えています。
(6)用語解説
※1 レジスタンス運動:
筋肉に抵抗(負荷)をかけて行う運動。筋力トレーニングやウエイトトレーニングなどが含まれます。本研究では、複数の種目を用いた全身のレジスタンス運動を実施しました。
※2 中性脂肪:
血液中に存在する脂質の一種。食事に含まれる脂質などを材料として体内で作られ、エネルギー源として利用・貯蔵されます。食後には一時的に血中濃度が上昇します。
※3 グルコース:
体内で主要なエネルギー源として利用される糖の一種。食事によって血液中のグルコース濃度が上昇し、インスリンなどの働きによって筋肉などの組織に取り込まれます。
※4 インスリン:
血糖値(血液中のグルコース濃度)を下げる働きを持つホルモン。食事によって血糖値が上昇すると膵臓から分泌され、血液中の糖(ブドウ糖)を筋肉などの組織に取り込む働きを促します。
※5 曲線下面積:
時間経過に伴う血液中の物質の濃度変化を、一定時間にわたって面積として表した指標です。本研究では、食後6時間にわたる中性脂肪濃度の変化を評価するために用いました。
(7)論文情報
雑誌名:European Journal of Clinical Nutrition
論文名:Effect of rest interval time during resistance exercise on postprandial triglyceride concentrations in resistance-trained young men
執筆者名(所属機関名)︓Eiji Pereira(早稲田大学スポーツ科学研究科)、Yoshiki Yamada(早稲田大学スポーツ科学研究科)、Miki Sakazaki(早稲田大学スポーツ科学研究科)、Stephen F. Burns(Nanyang Technological University)、Masashi Miyashita※(早稲田大学スポーツ科学学術院、Loughborough University、The Chinese University of Hong Kong)
掲載日時:2026年9月14日(月)
掲載URL: https://www.nature.com/articles/s41430-026-01819-x
DOI:10.1038/s41430-026-01819-x
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